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アメリカでは「医療用N95マスクのリサイクル」で新たな雇用が

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.04.14 15:45 最終更新日:2020.04.14 15:48

アメリカでは「医療用N95マスクのリサイクル」で新たな雇用が

マスク消毒の様子(バテル記念研究所のサイトより)

 

 医療用N95マスクの不足を受けて、厚生労働省は使い終わったマスクを滅菌して再利用するよう、医療機関に周知した。アメリカでは一足先に大規模なマスクの再利用が始まっている。

 

 N95マスクは、ウイルスなどの微粒子を95%以上捕集できる。鼻から口までの広い範囲を覆い、顔に密着させて使うため、装着の際は漏れがないかフィッティングテストを必要とする。本来は使い捨てだが、アメリカの医療現場で深刻な品不足が続き、再利用が始まった。

 

 

 CDC(米疾患予防センター)は3月末に、再利用のための汚染除去ガイドラインを作成している。除菌に関しては、あくまで危急的な処置としたうえで、アルコールやエチレンオキシド、漂白剤などいくつかの方法を紹介している。効果が高いのは、過酸化水素、紫外線照射、蒸気による3つの殺菌方法だという。

 

 ハーバードやスタンフォードなど、全米有名大学に在籍する科学者や臨床医など60名ほどが集まった研究組織「N95ディコン」は、3つの方法をリスクとともにわかりやすく説明している。

 

 過酸化水素は、滅菌後、水と酸素に分解される。耐性の強いバクテリアの胞子も除去するが、爆発の危険があり、専門的な知識を持った人間が必要である。
 紫外線のUV-Cは、マスクの陰になる場所に届かない可能性がある。

 水蒸気は温度が高すぎるとマスクの性能に悪影響を及ぼし、低すぎると生き残るウイルスがいるかもしれない。また、コロナウイルスに対する有効性が不明という。

 

 こうした点から、過酸化水素を用いることが多いようだが、実際の現場では、どのようにマスクの消毒がおこなわれているのだろうか。

 

 トランプ大統領の指示を受け、FDA(米食品医薬品局)は消毒業務をバテル記念研究所やステリス社、API社などに緊急時対応として許可した。世界最大の非営利研究機関・バテル記念研究所は、すでに1日8万枚のマスク消毒ができる施設をオハイオ州で稼働している。

 

 リサイクルは厳密に管理されたものだ。
 まず医療従事者は自分のマスクに油性ペンで指定された5桁のコードを書く。代書は不可で、本人が書かなくてはならない。

 

 病院に設置された専用スペースで廃棄用の二重バッグに入れ、外側の袋を消毒した後、密封した箱に入れ、テープで巻いてバイオハザードマークをつけ、さらに管理用のバーコードをつける。除菌施設に運ばれたマスクは、消毒前に破損や汚れがないかをチェック。血液や化粧品がついたものは廃棄される。

 

 数時間、過酸化水素の蒸気に浸された後、数時間かけて乾燥させ、品質検査がおこなわれる。それぞれのマスクに何度除菌されたかがわかるように印がつけられ、返却される。

 

 厚生労働省はマスクの再利用を2回までとしているが、バテル記念研究所では、同じマスクを、機能を損なわずに20回まで再利用できるとしている。

 

 政府から400ミリオンドル(およそ430億円)の予算が投入され、これだけの作業が無料でおこなわれている。すでにニューヨーク州やワシントン州で活動しているほか、今後はボストン、シカゴなどでも展開予定だ。この除菌システムは、人工呼吸器やサージカルマスクなどに対しても試験中で、この先、何千人もの雇用が見込まれている。

 
 こうした殺菌方法が家庭でも応用できないか、N95ディコンに問い合わせてみたが、あくまでN95マスクの再利用に特化した緊急措置なので、コメントはできないとのことだった。

 

 かつては使い捨てだったマスクが、命を守る物として病院で厳重に管理されている。アメリカでは品薄のトイレットペーパーを通貨にしようというジョークがささやかれたが、いま金庫で保管すべき物は、トイレットペーパーよりN95マスクなのだ。(取材・文/白戸京子)

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