スポーツ
野村監督の選手評に見る「打撃論」ホームランは少なくていい
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2020.05.15 16:00 最終更新日:2020.05.15 16:00
2020年2月11日に惜しまれつつ亡くなった、野村克也さん(享年84)。辛口の評論で人気だった野村さんだが、マネージャーの小島一貴さんは、「『野球界で長く過ごすうちに目が肥えてしまい、少々の良い選手でも驚かなくなった』とご本人がおっしゃっていた」という。
そんな野村さんが、一目置いていた選手たちがいる。彼らへの評価には、野村さんの「打撃論」が込められている。生前のエピソードを、小島さんが明かしてくれた。
【関連記事:亡くなった野村克也さんが、最後まで嫌った「8人の男たち」】
*
「まさに規格外」
そう野村監督が評されたのが、柳田悠岐選手。その理由について、こうおっしゃっていた。
「月に向かって打て、というのを体現しているようなフォーム。あれで打てるのは考えられない。俺の理解を超えている」
監督が指導をされていない選手で、ほかに打撃を褒めていたのが、森友哉選手だ。
「小さな体で、思い切ってフルスイングする。思い切りが良いじゃない。スイングも速い。ファンになっちゃう。これからが楽しみだよ。ただし、茶髪だけはダメ」
森選手は当初、キャッチャーをやっていなかったが、監督は期待を込めて、こう提言されていた。
「キャッチャーで使うべきだよ。バッテリー心理がわかるようになる。古田(敦也)もそうだったけど、俺も、キャッチャーとしての経験がバッティングに生きた。キャッチャーじゃなかったら、あんなにホームラン打ててない」
そして、もちろん教え子たちにも、認めている選手はいた。
「宮本(慎也)と稲葉(篤紀)は、試合前でも後でも毎日のように室内練習場にこもって練習していた」
稲葉氏について、監督は学生時代から注目されていた。
「(息子の)克則が大学生のとき、試合を見に行ったら、目の前でホームランを打ったのが稲葉。それも、2回見に行って2回とも。何かの縁だと感じた。
稲葉はものすごく練習していた。野球は生身の人間がプレーする。機械には頼れない。ということは、努力するしかないんだ。稲葉は、それがわかっていたと思う」
宮本氏は、ある意味、対照的だった。あるとき、「2000本安打を記録している打者の中で、宮本氏が本塁打数が最少、しかもダントツに少ない」という事実を聞いた監督は、嬉しそうに笑って、こうおっしゃった。
「教えを守ってくれていたのかな。ホームランって気持ちいいから、クセになる。ホームランバッターじゃない選手の場合、それで調子を崩すことがある。逆に言えば、そうやって自分を律していたから、大学、社会人出身で2000本も打てたんだろう」
ヤクルト時代に指導されたこの2人には、監督としての活躍も期待されていた。そして楽天時代にも、まじめさを評価されていた打者がいる。山崎武司氏だ。
「最初は、俺のことを苦手なタイプだと思っていたらしい。俺と同じで処世術がダメなタイプだと思ったから、言ってやったんだよ。『お前、俺と一緒で誤解されやすいタイプだろ』って。
そのせいか、アドバイスは素直に聞いていたな。人間が成長する上で素直さは大事。ちゃらんぽらんで、やんちゃなイメージがあったけど、意外にまじめだった。だからこそ晩年、あれだけ打てたんだろうな」
「エースと4番は育てられない」という持論があった監督。「楽天で、山崎が4番にいたのは大きかった」と話されていた。