スポーツ
広島を支える黒田博樹「自分は進化しつづけないと」の男気伝説
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2016.08.18 07:00 最終更新日:2016.08.19 17:29
「シーズン前、球団から投手コーチ兼任の打診があったが、『そんな器用なことはできない』と断わった。彼は優勝、200勝を花道に引退を考えている。引退後は家族のいるロスでゆっくりして、その後はメジャーでコーチ業を学びたいと思っている」(担当記者)
広島ファンは25年ぶりの優勝と同時に、黒田博樹(41)には1年でも長く投げてもらいたい。だがその願いは、いよいよ届きそうにない。
「5月に首と右肩の痛みで登録抹消となったが、深刻なのが首。いつ潰れてもいい覚悟で投げている」(前出記者)
思い描く投球ができない。だが、ただでは退(ひ)かないのが男気たる所以(ゆえん)。それは「コーチ」という肩書はないが、自分から若手に指導することだった。
「今年は積極的に声をかけている。6月26日に、マメのアクシデントで降板した戸田隆矢に対し、『手入れを怠たるな』と助言。すると戸田は、次の登板でプロ初完封。
黒田が次期エースと、目にかけているのが野村祐輔。ここ2年低迷していた野村は、黒田にブルペン投球を見せてほしいと直訴。捕手の真後ろという特等席で、変化球の極意を学んだ。黒田も『投手の原点は外角低め。それを生かす意味でも、内角を厳しくつけ』と助言した。その甲斐あって、野村は球宴前に自己最高の11勝を挙げている」(スポーツライター)
新井貴浩(39)は、この2年「まだ一緒にやりましょう!」と、粘り強く言いつづけている一人。そんな彼の思いに応えたかったのだろう。黒田はルーティンを崩してまで、ある行動に出た。
通常、黒田は登板機会のない遠征には帯同せず、残って調整する。だが、新井が2000本安打達成の可能性のあった4月中旬に遠征帯同を直訴。可愛がる弟分の偉業を直接見るためだ。
男気はグラウンド外でも健在。メジャー時代から顔見知りの記者と料理店で居合わせると、帰り際に記者のぶんの会計を黙って払うのはよくある光景。日本で10年来通う寿司店の店主が語る。
「周りにお客さんがいても、気軽にカウンターに座ることが多いです。ふだんは、Tシャツにジーンズというラフな格好。焼いたノドグロが好みで、ビールと芋焼酎の水割りを5、6杯飲んで、よく冗談を言って笑っている」
中学時代に通ったボーイズリーグのオール住之江には3年前、バッティングマシン1台、道具を運ぶためのハイエース1台、野球用具一式を寄付するだけでなく、練習場に来て直接指導も。
「一人ひとりに足の上げ方、腕の振り方を丁寧に指導してくれて、体のケアの重要性を強調してました。どんなにビッグになっても、まったく飾らない男ですね」(太田忠男監督)
そんな男気あふれる黒田だが、親しい記者に意外な心境を吐露していた。
「登板前はいつも不安なんだ。自分は進化しつづけていないと相手に研究されるし、実績があるからといって進化をやめちゃうと、打たれたときにどうしようもなくなってしまう」
己れに克つために努力するからこそ、登板すればスタジアムが赤く燃えるのだ。
(週刊FLASH2016年8月2日号)