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待ってろ東京五輪/カヌー「羽根田卓也」茶道に学んだ哲学
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2020.08.15 20:00 最終更新日:2020.08.15 20:00
東京五輪開催を信じて……日の丸戦士たちの、ブレないメダルへの思いとは--。アスリートたちが、「1年後への金言」を寄せてくれた。今回は、カヌーの羽根田卓也(33)だ。
「延期は、やむを得ないと受け止めました。思うような練習ができず、今後の大会の見通しも立たない。海外では、すでに練習を再開した選手もいると聞くので、焦りがないわけではないです。
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ただ、東京五輪には、なにがなんでも全力で臨むと腹を決めていましたし、どんな状況でも本分をまっとうするだけです。準備しなければいけないことが増えましたが、そこに向けて最大限追求しながらやっていきます」
リオ五輪カヌー・スラロームのカナディアンシングル銅メダリストの羽根田は、延期になった東京五輪に向けた思いを、そう話す。
過去3度の五輪を経験し、東京では4大会連続での出場が内定している。延期はプラスでもマイナスでもなく、フラットにとらえているという。
「大変な状況なのは確かです。ただ、自分も30歳を過ぎて、競技だけじゃなく、人生でもこれまでいろいろな経験をしてきました。『こんなことで、競技人生を止めてたまるか』という気持ちは強いですね」
カヌーというマイナー競技の世界で、10代のうちから単身スロバキアに渡り「武者修行」をしてきた羽根田にしてみれば、コロナ禍での困難な状況も、カヌーを究めるうえで試練のひとつと考えているのかもしれない。
愛読書は、司馬遼太郎の『燃えよ剣』。新選組副長・土方歳三の美学を持った生き方に、自分自身の競技人生に重なる部分があるという。そんな羽根田が、外出自粛期間中に始めたのが「茶道」である。
「きちんと習ったわけではないですが、本から茶道の哲学を学び、マイ茶碗にマイ茶筅、マイ茶杓も用意しました。まずは床をきれいにして、それから静かにお茶をたてる。自分自身と向き合うことで、競技に繋がることもあると思っています」
1年延期のとらえ方は人それぞれ。「ハネタク」は邁進するのみと、前だけを向いている。
はねだたくや
1987年7月17日生まれ 愛知県出身 175cm70kg 父親と兄の影響で、9歳からカヌーを始める。高校卒業と同時に単身スロバキアに留学。北京五輪14位、ロンドン五輪7位、リオ五輪で銅メダル。ミキハウス所属
取材&文・栗原正夫
(増刊FLASH DIAMOND 2020年8月20日号)