12月7日、プロ野球12球団合同トライアウトがおこなわれ、56選手が参加した。いちばんの注目は、阪神や日本ハム、大リーグでプレーして、「記録よりも記憶」を残し、2006年に引退した新庄剛志(48)だった。
現役最後に所属した日本ハムの背番号1のユニホーム、赤いリストバンドで登場したシート打撃では、3打数1安打1打点1四球と、チャンスに強いバッティングでアピールした。
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2020年のトライアウトは、新型コロナウイルス感染防止のため無観客で実施されたが、新庄の姿をひと目見ようと、開始前からファン約100人が球場に詰めかけた。
阪神時代からファンだという40代の女性は、「中に入れなくても朝、球場に入る新庄さんの姿を見られました。もしかしたら最後の姿になるかもしれないので、なるべく近くで応援したくて……」と、大阪から駆けつけたという。
かつて “新庄劇場” と呼ばれるパフォーマンスでファンを沸かせたが、この日も無人のスタンドへボールを投げ入れるなど、リラックスした雰囲気でトライアウトに臨んでいた。また、若手とのコミュニケーションをみずから取り、ときには身振り手振りで、指導までおこなうほど。
ある球団関係者は、今回のトライアウトについてこう語る。
「今まで以上に、慎重に選手を選ぶと思います。2020年はコロナの影響で、大半の球団は赤字でしょうし、厳しい言い方をすると、今年はどの球団も “育成” するというよりも “即戦力” になる選手を選んでくると思います」
また新庄について、あるパ・リーグスカウトは、こう評価する。
「48歳で、これだけ動けるというのはすごい。今回の参加選手の中で、元気のよさは一番でしょう(笑)。凡打のように見えるけどしっかり芯に当てているし、ボールがしっかり見えている証拠です」
かつての日本ハムのチームメイトで、シカゴ・カブスに所属するダルビッシュ有(34)は12月7日、自身のツイッターで新庄について、「10年以上野球やってないのに143キロを芯に当ててるのがすごすぎる」と、驚嘆の声を挙げた。
高い評価がある一方で、あるセ・リーグスカウトは、「今回、新庄の守備を見ることができなかったし、年齢的にNPB復帰は正直厳しいでしょう」と、獲得の意思がないことを明かした。シート打撃中、新庄は内外野の守備についたが、残念ながら打球が1球も飛んで来ず、自慢の守備をアピールすることができなかったのだ。
しかし、引退してもその人気は衰え知らず。トライアウト後、新庄を乗せた車が姿を現わすと、朝から球場の外で出待ちしていた100人以上のファンから、『新庄さーん、お疲れ様でした!』『新庄劇場をまた見せてください!』などの声援が飛び交った。
なかには号泣し、『新庄さん、ありがとう!』と叫ぶ熱烈なファンの姿も。新庄も後部座席の窓を開けて、『ありがとう!』と笑顔で手を振り、球場を後にした。
15年ぶりの夢舞台を目指し、挑戦を終えた新庄は、こう宣言した。
「6日間でオファーが来なかったら、野球は終わる。きっぱり言います。6日間で来なかったら『1年間お疲れ様でした、新庄剛志』と。やり終えた感じが、ものすごくあります」
“新庄劇場” を再び球場で見ることができるかーー。