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女子ゴルフ「イ・ボミ」白血病美少女との「命の交流」秘話
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2016.10.08 12:00 最終更新日:2016.10.08 12:00
鈴木邑実さん、19歳。2013年のサマーゴルフジュニアクラシック北海道大会、同年の北海道日刊アマチュアゴルフ選手権などで優勝、将来を有望視されていた。通信制高校に通いながらプロを目指して猛特訓。飛距離は250ヤードまで伸び、プロテスト受験を目指していた。
そんな彼女を病魔が襲ったのは、2014年8月のこと。吐き気、頭痛などでまともにプレーができなかった日本ジュニアゴルフ選手権競技(埼玉県)。
熱中症かと思ったが、地元の苫小牧市に戻っても体調はすぐれない。市内の病院に緊急入院。翌日、札幌の病院で言い渡されたのが「白血病」だった。抗ガン剤治療が始まる。
「もうプロにはなれない」――。人前では気丈でも、心の中で邑実さんは泣いていた。そんな邑実さんを古くから支援する苫小牧市の焼き肉店「南大門」の店長・星山昭則氏(70)が振り返る。
「元気いっぱいの明るい子で、病気がわかっても人前では絶対に涙を見せなかった。邑実は、ボミさんの大ファンで、『ボミさんになりたい』と言っていたぐらい。邑実が少しでも喜んでくれればと、知人を介して、ボミさんのサインをいただけないか、とお願いしたんです」
この話がボミのファンクラブ「ファンカフェ」前会長の安部陸氏の耳に入った。安部氏はボミにすべてを伝えた。
「ボミプロは二つ返事で『私にできることならなんでも協力したい』と言って、キャップにサインをしてくれました。それをファンカフェの北海道在住のメンバーが、星山さんに届けて、交流が始まりました」(安部氏)
キャップを受け取った邑実さんは、2015年3月に治療を終えて退院する。その後、すぐに練習を再開し、今年4月のプロテストを受験するまでに回復した。
だが、6月、白血病が再発。伝え聞いたボミは、今度は実際に試合で被るキャップにサインをし、ファンカフェメンバーを通じて、彼女のもとに届けた。
邑実さん本人に話を聞いた。
「ボミさんが本当に大好きなんで、キャップをいただいたときは、めちゃくちゃ嬉しかった! 感動しました。ボミさんは試合中、いつもニコニコしていますよね。調子が悪いときでも笑顔でプレーしている。そこがすごく好きです。プレースタイルも大好き。パワーでいく選手が多いなか、ボミさんはショット
の精度がすごく高い。あんなプレーができたらなって憧れています」
現在、抗ガン剤治療で入院中だが、お姉さんがドナーとして合致。9月下旬には骨髄移植手術が決まった。
「手術の前に一時退院が許可されていて、北海道最終試合の『日本女子プロゴルフ選手権』は、体調がよければ観戦に行けるかもしれないんです。ボミさんのプレーをぜひ観たいです」
と声を弾ませる。病室からとは思えない、明るく元気な声が受話器の向こうから聞こえてくるのだ。
「いったん病気が治って、7カ月ぶりにクラブを振ったときは本当に嬉しかった。早く元気になって、強くてみんなに愛されるプロになりたい」
強くて愛されるプロ、それは彼女憧れの選手そのものだ。
(週刊FLASH 2016年9月13日号)