広尾氏は、印象に残るひとりの選手を挙げた。
「ランク上位の選手は、ほとんどがスラッガーです。そんななか11位の福本豊さんは、典型的なトップバッタータイプです。当然、本塁打や打点はほかの選手に及びません。でも、彼には盗塁という武器がありました。
RCは盗塁も評価しますが、盗塁死もカウントしています。多く走るのはいいけど、アウトになればRCの数字は増えません。つまり、福本さんは抜群の盗塁成功率だったんです。
さらに、福本さんは俊足を生かした二塁打も多かった。塁打もすごく大事な要素なので、その点も含め、高額になりました。RCは、打者のタイプを超えて貢献度の高さがわかるんです」
打者のトップは王貞治の7億3481万円だが、本誌前号の投手編でトップだった稲尾和久の16億6979万円には遠く及ばない。その理由とは?
「昔と今では、投手のスケールが違いますね。稲尾さんが42勝したとき、投球回数はじつに404回でした。対して打者は、もともと “9分の1” の存在です。投手は完投すれば一人で試合を作れますが、打者はどんなに頑張っても一人では試合は作れませんから、影響力が低いんです。
また、試合数は昔もいまも、あまり変わりませんから、打席数も変わりません。打者の成績にはもともと “限界” があるということです。打率4割の選手が出てくれば話は別ですが、それは、ほぼ不可能。日本もメジャーも、打者の成績は限界に近づいています」(広尾氏)
そんななか、「特筆すべき成績を残した打者がいる」と言い、広尾氏が特別にRCを算出したのが松井秀喜(46)だ。
「1988年に東京ドームが開設されたことをきっかけに、各球場の大型化が進みました。それまでは両翼が約90m、中堅が約110mという広さが、プロ野球球場の標準でしたが、以降はそれぞれ95m、120mになりました(現在の東京ドームは両翼が100m)。
つまり、球場が広くなり、ホームランが出づらくなったのです。しかし、松井秀喜は、この条件下で50本塁打を記録しました。日本人選手としては、この記録はいまだに破られていません。
いまは、投手も打者も各指標の数値が小さくなっています。それは投打ともに洗練されてきて、みんながハイレベルなところで競り合うようになってきたからです。野球は、新時代を迎えたのです」
とはいえ、突出した数字を持つ化け物選手たちを振り返ると、あの荒っぽい野球が懐かしくなる。以下の関連リンクで、日本プロ野球における「今なら年俸いくら?」の強打者ランキングを公開する。
【「RC」の算出方法】
RC={(A+2.4×C)×(B+3×C)÷(9×C)}-0.9×C。A=安打+四球+死球-盗塁死-併殺打。B=塁打+{0.24×(四球-故意四球+死球)}+0.62×盗塁+{0.5×(犠打+犠飛)}-0.03×三振。C=打数+四球+死球+犠打+犠飛
※一部敬称略
(週刊FLASH 2021年2月9日号)