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プロ野球、知られざる「育成選手の世界」引退4選手が告白…年俸240万円に散った“夢”

スポーツ 投稿日:2021.02.05 06:00FLASH編集部

プロ野球、知られざる「育成選手の世界」引退4選手が告白…年俸240万円に散った“夢”

元ソフトバンクの幸山さん

 

 コロナ禍により開始が危ぶまれていた、2021年のプロ野球春季キャンプが、2月1日よりスタートした。2020年のドラフト会議で注目を集めた楽天・早川隆久(22)や阪神・佐藤輝明(21)らは一軍スタートと、早くも “即戦力” として、首脳陣からの期待の高さが窺える。

 

 一方で、三桁の背番号を背負い、支配下登録を目指して奮闘する男たちもいる。ソフトバンクの千賀滉大投手(27)や甲斐拓也捕手(28)、周東佑京選手(24)ら “育成出身の男たち” が話題となっているが、「彼らは奇跡的な存在。ほとんどの育成選手は数年以内に消えていく」(スポーツ紙記者)という。

 

 

 育成選手に夢はあるのか――。志半ばで引退した元育成選手らに、現役時代を振り返ってもらった。まずは、元ソフトバンクホークス育成選手で、現在は國學院大学に通う幸山一大さん(こうやまかずひろ、24・元ソフトバンク)。支配下登録選手との格差について、こう話す。

 

「生活の面では、育成選手は全員寮に住み、寮費は3万円と安いうえに、3食分の食費も含まれていたので、支配下選手との格差はあまり感じませんでした。道具に関しても、スポンサーから年度始めにグローブやバットが支給されました。ただ、追加で頼むと、自腹で払う必要がありました。

 

 また、育成3年間で支配下登録されなければ、ソフトバンクの場合はクビになります。育成は、支配下よりも下手だということで、朝早くから練習が始まり、練習時間は支配下に比べて長かったですね」

 

 ソフトバンクの育成選手は20名ほどが在籍し、年間80試合がおこなわれる。他球団より試合数が多く、アピールするチャンスに恵まれているが、選手層が厚いため、支配下登録率は12球団でいちばん低いという。

 

「二軍で首位打者になった田城(飛翔・現オリックス育成)でさえも、支配下登録されなかったですからね。足が速かったり、規格外のパワーがあるとか、何かひとつ突出したものがないと、支配下登録されるのも難しいし、ましてや一軍には上がれない。

 

 周東さんとは、1年間だけ一緒にやったんですが、やっぱり走力はすごかったですからね」

 

 一方で、「ソフトバンクの育成はうらやましいですよ」と語るのは、元広島カープ育成枠で投手だった岡林飛翔さん(おかばやしつばさ、21・元広島)。

 

「ソフトバンクと巨人は、そもそも選手の数が多いですから、実戦経験も豊富。カープの育成選手は4〜5人程度しかいなくて、二軍の試合にもなかなか出られませんでした。正直、プロという実感はあまりなかったですね」

 

 そして、わずか2年で戦力外を通告されたという。

 

「年俸は240万円でしたが、寮暮らしで3食つき月3万円だったので、苦ではありませんでした。クビは、2年めシーズンの成績やイップスという点から、薄々予感していました。

 

 コーチの指導は技術面ばかりで、イップスになったときにも心理的なサポートはなかったです。支配下だったら、違ったかもしれませんが……」

 

 その岡林さんと同じ年に現役を引退し、2020年、國學院大学に入学した元千葉ロッテ・島孝明さん(22・元千葉ロッテ)は、こう振り返る。

 

「僕の場合は最初から育成契約ではなく、ロッテの支配下でプレーしていたんですが、怪我で投げられないことが多く、3年めの終わりに球団側から育成を打診されました。しかし今後の人生を考えた場合、プロ野球に残るよりも、大学で勉強しなおしたほうがいいなと思ったので、打診を断わり引退しました。

 

 収入がガクンと減って、野球をやりながらお金をもらえていたことが、どれだけ幸せだったかを身に染みて感じます。もう一度プロの世界に戻れるチャンスがあったら? いや、もう戻らないですね(笑)」

 

 一軍で出場経験がある元プロ野球選手が、育成選手を取り巻く厳しい実状を明かす。

 

「僕がいたチームは、12球団のなかで育成選手のレベルはいちばん低かったと思います。『よくプロ野球選手になれたな』って思う選手もいました。

 

 ソフトバンクと巨人が育成選手を獲ってるから、とりあえず他球団も育成枠を設けているのが実情ですよ。一軍のコーチが一軍の選手を指導するのは簡単なんですが、育成をまかされているコーチは、大袈裟にいうと小学生に一から教えるようなものですから、かなり大変だと思いますよ」

 

 また、支配下登録されたとしても、そこから一軍に上がることは、さらに困難だという。

 

「実際にあった話ですが、支配下登録されて二軍で好成績を残した選手がいたんですが、一軍に昇格したのは別の選手。でも、『なんで一軍に上がるのは俺じゃないんだ』なんて首脳陣に言うと、昇格が遠ざかるから言えない。

 

 プロ野球の世界は『結果がすべて』ではなく、『ゴマすり』の世界。首脳陣自身が生き残るために、監督にゴマをするんですから」

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