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プロ野球、知られざる「育成選手の世界」引退4選手が告白…年俸240万円に散った“夢”

スポーツ 投稿日:2021.02.05 06:00FLASH編集部

プロ野球、知られざる「育成選手の世界」引退4選手が告白…年俸240万円に散った“夢”

育成施設も12球団随一といわれているソフトバンク

 

 最後に、巨人で育成から支配下登録されて一軍で活躍し、現在は(株)エイジェックスポーツマネジメントでトレーニングマネージャーを務める星野真澄さん(36・元巨人)に話を聞いた。

 

「育成と支配下とのいちばん大きな違いは、一軍の試合に出られるかどうか。僕のときは三軍はなかったので、二軍扱いでしたが、『契約金がない、年俸が抑えられている、一軍に出られない』というのが育成契約。当時は支度金300万円、年俸240万円でした。

 

 育成の年俸は、規定などもないと思うので、チームによって違うかもしれませんが、240万円より安いことはないと思います。人道的にも厳しすぎるじゃないですか」

 

 星野さんは、育成から入団年に一軍昇格を果たして活躍。その後、怪我で再度育成契約になったが、そこから2度めの支配下登録入りを果たすという、数奇な野球人生を送った。

 

「入団して、オープン戦期間中の3月の終わりには支配下登録されたので、僕は昇格が早かったんですよ。2度めの育成契約は、股関節の手術をしたときです。『実力不足で支配下を外されるならいいですけど、怪我で育成に戻すのはやめてください』と伝えたんですけどね……。手術費用などは、全部球団が持ってくれました」

 

 育成と支配下では、金銭面でも待遇の差は歴然だったと、星野さんは続ける。

 

「支配下に上がると、二軍の最低年俸をもらえるんです。当時は440万円ですね。一軍に上がって投げさせてもらって、2年めで1300万円まで上がりました。その翌年は二軍だったんで、年俸も下がって1050万円でした。そこからは緩やかに下がり続けて、みたいな感じですね。

 

 山口(鉄也)さんっていう、いい先輩(育成の星で、最高年俸3億2000万円)がいたので、年俸1億円を目指してやっていましたね。

 

 2度めの支配下のときは、二軍でいい成績だったんですよ。最多登板(3勝2敗3S防御率1.25)で、年間を通して成績も残せたのですが、それでも一軍に上がれなかったので、さすがに察しました。『一軍では使えないって判断をされたんだな』と。トライアウトに挑戦したもののオファーがなく、引退を決意しました」

 

 2020年の巨人は、育成出身の松原聖弥(26)がシーズン中盤から二番打者に定着するなど活躍したが、ソフトバンクや巨人などの常勝チームの育成選手は、「じつはキツい」と星野さんは続ける。

 

「チームが強いってことは、中継ぎ、抑えとか、打者もそうですけど、入れ替わりが少ないんですよ。安定した成績を残す選手がたくさんいるってことなので、そうすると『育成から上げてこよう』という話に、なかなかならない。『いま勝てているから、とりあえずいいでしょう』ってなっちゃう(笑)。そうなると、選手はどうにもできませんしね」

 

 また星野さんは、プロの世界にはどうにもならない “才能の壁” があることを思い知らされたという。

 

「『ある程度、自分に知識をつけて対戦すれば、勝てない相手はいないのでは』と思っていたら、ちょっと無理な打者もたくさんいましたね(笑)。規格外なんです。

 

 内川(聖一・当時DeNA)さんに、インハイのカットボールを投げたんですよ。左対右なんで、胸元に入っていくような球でしたが、170kmくらいの弾丸ライナーでレフトスタンドに打ち込まれました(笑)。

 

 普通、あの球は引っ張ったらファウルなんですよ。きれいにパチーンと叩いて、球が切れずにフェンスを越えていくっていう、その答えは僕の中になかった(笑)。キャッチャーの阿部(慎之助)さんから、『気にしなくていいよ、ソロでよかった』って言われましたけどね。

 

 あとは、ソフトバンクの松中(信彦)さんと対戦したとき、初球のまっすぐをフェンスまであと何cmってところにツーベースされて。そのときも阿部さんから、『三冠王だし、全日本の四番だし、お前のストレートなんて効かねえよ』って言われたんです。でもそれ、僕のドームでの最速球だったんですよ。148kmとか出て。

 

 そういうのを痛感したときに、『野球のやり方を間違ってたな』って思いましたね。自分の力を最大限発揮したところで、どうにもならない人たちがいるんだと気づかされました」

 

 2020年末、12球団の育成選手56人がクビを通告された。一方、2011年に育成ドラフト4位でソフトバンクに入団した千賀の年俸は、ルーキーイヤーの150倍近い4億円に。明日を夢見る選手にとって、“育成ドリーム” は、かなうものと信じたいが……。


(週刊FLASH 2021年2月16日号)

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