■ショットのキレが生み出す爆発力
怪我といえば、気になるのは安田だ。2020年9月に頚椎捻挫を患い、3試合を欠場、1試合を棄権した。
「もともと祐香は体の線が細いので怪我が心配だったんです。でも先日、電話で話したときは元気そうな明るい声で『大丈夫です』と言っていたので安心してます。
祐香はお姉ちゃんがうちのゴルフ部だったので後を追うように入ってきました。リーダーシップがとれ、責任感を持たせるためにキャプテンをまかせたんです。
そこから変わって、どんどん自分から前に出るようになったし、一人で海外遠征に行っても結果を残してくるようになった。だいぶ成長して精神面も強くなりました」
安田の成長する姿を見てきた角谷監督だからこそ、怪我さえなければ、十分、優勝を狙えるという。そんな安田の武器についてはこう話す。
「祐香のプレーでずっと惚れてたのはショットのキレなんです。ここしかないというとこに落としてくるし、スピン力があるからピタッと止まる。
そこが祐香の爆発力で、中学3年のときに62というスコアを出していますからね。古江のことを野球でたとえて“安打製造機”と言いましたが、安田は“ホームランバッター”。ハマったらバーディを量産する爆発力が魅力なんです」
滝川二高のゴルフ部は、近くにあるゴルフ場の協力もあり、1週間に4日、ラウンド練習ができる。
その環境に加え、ナショナルチームにも選出されていた2人は、同チームのガレス・ジョーンズコーチのもと、“ゴルフ脳”も鍛えられ、引き出しも増えた。
よきライバルとして切磋琢磨してきた2人は、高校2年時に全国大会の女子団体で同校に初優勝をもたらし、翌年は2連覇を達成した。
■2人の笑顔はシブコより素敵です
角谷監督が彼女たちに教えてきたのは、ゴルフのプレーだけではない。
「自分で考えて行動する『考動力』を身につけるように指導しています。試合に出て、この場面ならどのクラブを選択するか、考えて決めるのは自分です。
その対応力を養ってきたので、2人ともプレーは早いと思いますよ。もうひとつ。2人ともおっとり系に見えるでしょ? でも心の中の負けん気はやっぱり強いですよ。
絶対に誰にも負けないっていう気持ちは人一倍、すっごい根性を持ってます。でもその負けん気は外には出さないように、いつでも笑顔で感謝しないといけないよ、と教えてきました。
だから2人とも、笑顔がいいでしょ? 古江がプロに転向する記者会見のときに『笑顔は渋野日向子プロよりも素敵です』と言わせてもらったんです(笑)。2人の笑顔には太鼓判を押します」
滝川二高の後輩であり、女子の日本アマチュアランキング1位でナショナルチームにも所属する梶谷翼(17)は、ツアー2戦めの「明治安田生命レディス」を含め、その後も数試合に出場予定。
古江と安田が切磋琢磨してきたように、実力派の後輩たちが入ってくることで、若手の熱い戦いからますます目が離せない。
写真・馬詰雅浩、アフロ/日刊スポーツ、Golffile
(週刊FLASH 2021年3月16日号)