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原監督が「貧打チーム」を優勝させた年の共通項は…「終盤力」に「ディフェンス力」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2021.03.28 16:00 最終更新日:2021.03.28 16:00
原辰徳監督は、2014年や2020年のように主力野手が不調で3割打者不在の状況でも、チームを優勝まで導いている。
優勝を逃した第2次政権最終年の2015年も、主軸の高齢化による貧打かつ中継ぎの勝ちパターンが解体された中、優勝したヤクルトを1.5ゲーム差まで追い詰めた。このように、苦しい状況の中でもチームを優勝または優勝争いまで持っていく手腕は、巨人の歴代監督の中でも卓越している。
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こうしたシーズンに共通していることが、「終盤力」と接戦の強さである。終盤の強さはすなわち、質・量ともにブルペン陣が確立されていることを意味する。2014年は、全盛期から落ち始めてはいたが「スコット鉄太朗」を中心に終盤を守り切る体制だった。
続く2015年も、ルーキーだった戸根千明や中継ぎに回った宮國椋丞などが機能し、勝ちパターンを解体した状態でもブルペンのコマ数は揃っていた。2020年は中川皓太や大竹寛を中心に、勝ちパターンを数種類形成できるほどのバリエーションの豊富さが垣間見られた。
共通事項は他にもある。
相手チームにプレッシャーを与える「代走の切り札」だ。原第2次政権では鈴木尚広が試合終盤に出場し、たとえ盗塁を仕掛けなくてもその名前、ブランドだけでプレッシャーを与える働きがあった。第3次政権では増田大輝を代走の切り札で起用し、終盤に出場させて相手にプレッシャーを与えていった。
こうした代走起用は機動力を中心にしたスモールベースボールと捉えられがちだが、チームの総合的な力量を引き出した試合展開に持ち込む「トータルベースボール」を展開する上での一つのオプションである。
さらに、2014年と2020年のシーズンに共通するのは、「ディフェンス力」である。
2014年は片岡と坂本の二遊間を中心とした守備が光り、失策数はリーグ1位の少なさだった。2020年も、小林誠司の離脱こそあったものの吉川尚輝と坂本の二遊間を中心に12球団トップクラスのディフェンス力で無駄な失点を与えないチーム作りができていた。
このディフェンス力によって、貧打の問題も深刻にならず、メンタル面においても投手陣に良い影響を与えたと考えられる。
プロ野球史上、ペナントレースにおけるチームの失策数は1991年の西武と2017年のソフトバンクの38失策がシーズン最少記録である。
守備率でも2017年のソフトバンクが.993で歴代1位、1991年の西武が.992で歴代2位である。そして、2球団ともにこの年リーグ優勝と日本一に輝いている。
西武は清原和博や秋山幸二、オレステス・デストラーデ、ソフトバンクは柳田悠岐や中村晃、松田宣浩といったタレント性のある中軸が注目されがちだったが、固いディフェンス力からリズムを作り、勝ちを積み重ねていった側面は無視できない。
1991年の西武は、清原の不調などもあり規定打席到達選手で3割打者は不在ながらも、守備の堅さから勝ちを拾った。2017年のソフトバンクは歴代1位の守備率を誇り、このシーズンから3年連続で日本一に輝いている。
こうした過去のケースを見ても、ディフェンス力は非常に重要であり、貧打をカバーして優勝に近づくことができるとわかる。
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以上、ゴジキ(@godziki_55) 氏の新刊『巨人軍解体新書』(光文社新書)をもとに再構成しました。ファンもアンチも日本一多い球団の哲学を、21世紀を中心に紐解くとともに、そこにある「勝利のメンタリティ」の源泉を考察します。
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