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阪神・佐藤輝明、桁外れのパワーを培った高校時代「20kg増量筋トレ」の指導者は “うどん店主”
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2021.05.12 06:00 最終更新日:2021.05.12 06:00
「テルでいくよ!」
阪神・大山悠輔(26)の出場選手登録を抹消したことを受け、矢野燿大監督(52)の決断は早かった。四番・三塁に指名されたのは、黄金ルーキーの佐藤輝明(22)だった。それもそのはず。ゴールデンウイークの4月30日以降の4試合は、打率.438、2本塁打、7打点と、4番にふさわしい活躍を見せていたからだ。
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その源は、187cm94kgの体から繰り出される、桁外れのパワー。元阪神監督の岡田彰布氏(63)も、「ルーキーの体やないよ」と驚きを隠さない。その惚れ惚れする体躯は、“ある人物” と鍛え上げた賜物だった。兵庫県西宮市でうどん店「はづき」を営む高取君己さん(49)が、その人だ。
高取さんの息子が所属していた少年野球チームの、対戦チームのメンバーだった佐藤の、ずば抜けたプレーに目を奪われたのが最初の出会いだった。
小学生時代にタイガースジュニアに選ばれるなど、西宮市内では有名だった佐藤。「こういう子がプロに行くんだろうな」と、高取さんはファン目線で見ているだけだったという。だがその後、高取さん親子は仁川学院高校の入学式で、佐藤と再会することになる。
「背は177cmくらいあったけど、体重は65kgで線が細かった。息子が『野球部に入るの?』と聞いたら、『サッカーやろうと思ってる』と言ったと聞いて、『なんとしても野球部に入れさせんと』と、息子に口説かせたんです」
ただ、高取さんには気になることがあった。
「センスはあるけど、いかんせん非力なので、飛距離が出なかったんです。そこで筋トレをすすめたんですが、本人は笑って受け流すだけでした」
だが入部後に、パワー不足をいちばん実感したのは佐藤自身だった。何かを変えなければと、高校2年の秋、高取さんの知り合いのジムに通うことを決心する。この時点で182cm78kgほどと、まだまだ細かった。
高校野球は毎年12月から2月までは対外試合ができないため、高取さんは佐藤と “増量計画” を立てた。すべては、将来プロに行ける体を作るためだった。
「仁川学院からプロに行くのは現実的じゃないから、大学に行って、その4年間で実績を作らないといけない。まずは、大学関係者の目に留まるために、『高3になる直前の3月から7月にかけて本塁打を量産できる体にしよう』と決めた。そのために3カ月で体重を100kgにすることを目標に、週3回ジムに通わせました」
その3カ月は、想像以上にハードだった。高校での厳しい練習を終えた後のジムでのトレーニングで疲労が溜まり、なかなか体重が増えない。
「筋肉を作るのはタンパク質だとジムで学び、量を食べるのが無理ならと、プロテインを学校に持っていかせました。結果、3カ月ほどで20kg近く増量しました。きつかったとは思いますが、彼もプロになるためにと、必死でした」
一方で、大学進学に関しても相談を受けたという。
「アドバイスしたのは、お前を見て『欲しい』と言ってくれる監督のもとへ行け、と。そういう監督じゃないと、使ってくれませんから。なかでも、近畿大学の田中秀昌監督が熱心に誘ってくれたんです」
当初は、高取さんの息子と3人で始めたジム通いだったが、高3の夏以降は、高取さんの息子は受験勉強のため、佐藤と2人だけでジムに行くこともあった。そうした努力が実を結び、近畿大で佐藤は活躍。阪神から、ドラフトで1位指名を受けた。
「『自分の子供でもないのに、どうしてそこまでできるの?』と言われたこともあります。でも私は、『こいつはすごいな。プロになれる』と感じて、応援しただけなんです(笑)」
鋼の肉体と、“コシ” のある打撃で、新人王獲得は射程圏内だ。
(週刊FLASH 2021年5月25日号)r