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うつ経験棋士語る大坂なおみへの共感「負けるわけない相手に苦戦…」

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2021.06.08 06:00 最終更新日:2021.06.08 06:00

うつ経験棋士語る大坂なおみへの共感「負けるわけない相手に苦戦…」

6月2日には、2020年に6000万ドル(約66億円)を稼ぎ、女性アスリートの過去最高額を更新したことが報じられた大坂。だが、その心は蝕まれていた

 

「私は2018年の全米オープンから、長い間うつ病を抱えてきました。それに対処することはとても大変でした」

 

 5月31日、全仏オープンの棄権を発表した大坂なおみ(23)は、SNSでこのようにつぶやき、しばらくコートから離れる意向を表明した。

 

 

 勝負の世界に生きる者には、うつ病の経験者が少なくない。『うつ病九段』(文春文庫)の著書がある将棋棋士の先崎学九段(50)もその一人だ。

 

「発症したのは、2017年6月でした。眠れずにソファで横になる日が続き、7月下旬に入院することになりました。将棋から離れることになりましたが、当初は焦りや活躍している棋士への妬みなどはありませんでした。自分の中の感情のエネルギーが、枯渇してしまっていたのです」

 

 同い年の羽生善治九段と並ぶ一流棋士である先崎九段だが、入院中に若い看護師と将棋を指す機会があったという。

 

「本来なら、一万回指しても負けるわけがない相手と、平手でほぼ互角の勝負になってしまったんです。まるで、大坂なおみさんがテニススクールのおばさんにラリーで押されるようなものですよね。王手をかけられたときは、心臓がドキッとしました」

 

 約1年間の休場ののち、先崎九段は棋界に復帰した。

 

「退院当初は、初歩的な詰将棋の問題集にも歯が立たず、現役に戻れないのでは、と初めて焦りが生まれました。その後、少しずつ勘を取り戻すうちに、華々しく活躍する棋士たちに嫉妬したり、惨めな自分にイライラしたりするようになったんです。

 

 いま思えば、それはエネルギーが戻ってきて、回復が近くなってきた証し。私の場合は、半年から1年弱で治ったと実感できました。大坂選手にも、時間をかければ必ず治る病気なんだ、と伝えたいですね」

 

 プロ野球選手として中日、西武、ロッテで活躍した平野謙氏(65)も、うつ病経験者だ。

 

「僕の場合は、2002年のロッテのヘッドコーチ時代に人間不信からうつ症状が出始めました。人とメシを食うのが嫌になったり、気力がなくて新幹線に乗れないなんてことがあって。不安定な僕を助けてくれたのは、奥さんやまわりの人たちでした。大坂選手なら、コーチや近親者、肉親のサポートがいちばん大きな力になると思いますね」

 

(週刊FLASH 2021年6月22日号)

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