十両2場所から幕内に返り咲き。そこから2場所連続二桁勝利で、一気に番付を上げる。が、昨年の大晦日に新型コロナウイルスの感染が判明。荒汐部屋からほかにも感染者が出たことから、今年の一月場所は全休となった。
「熱が40度まで上がって全身が痛くて……。それで入院して、場所が始まるくらい(1月10日)には体調もよくなっていたんですけど。出られないのは歯がゆかったですね。2月からようやく稽古を再開できたんですが、最初は体も動かなくて、大変でした」
今年の三月場所にかける思いには、並々ならぬものがあったという。
「大震災から10年という節目でしたから。土俵で頑張っている姿を(地元の)福島の人たちに見てもらいたい、そういう気持ちは強かったです」
東日本大震災当時は高校1年生。原発事故もあり、次兄とともに長男が所属する荒汐部屋に身を寄せ、1カ月を過ごした。その強い気持ちもあり、三月場所は2大関を破り、優勝争いにも絡む大活躍。10勝を挙げ、初の技能賞を獲得した。続く五月場所も2大関を倒し9勝。技能賞獲得とともに、三役昇進を果たした。
「次は大関? いや、先の目標より、目の前のことに意識を向けています。まずは勝ち越すこと。三役に定着して、それからです」
冷静に語る伸び盛りの26歳だが、私生活では2018年に結婚、すでに4人の子供がいるビッグダディ。趣味は、意外にも魚をさばくことだという。
「始めたのはここ2年ほどですかね。ほかに趣味らしいこともないですから。漁師の方から買えるサイトがあるので、そこから買ったり。マイ包丁も何本かありますね。アンコウをさばいたこともあります」
さすがは、技能賞連続受賞力士。土俵でも大きな力士をどうさばくのか……興味は尽きない。
若隆景渥(わかたかかげ あつし)
1994年12月6日生まれ 福島県出身 荒汐部屋所属 祖父、父、2人の兄も力士。東洋大を経て、2017年3月に初土俵。技能賞2回
コーディネート・金本光弘
(週刊FLASH 2021年7月20日号)