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長嶋茂雄、師匠とともに文化勲章を受賞…富士山の絵に秘められた「絆」とは

スポーツ 投稿日:2021.10.26 20:33FLASH編集部

長嶋茂雄、師匠とともに文化勲章を受賞…富士山の絵に秘められた「絆」とは

読売ジャイアンツ出陣式で(2021年3月)

 

 今年度の文化勲章受賞者が発表となり、長嶋茂雄氏と、長嶋氏の絵画の師匠である絹谷幸二(きぬたにこうじ)画伯の同時受賞が発表された。

 

 2001年、当時、巨人監督だった長嶋氏は、世界の有名人たちの絵画を集めたチャリティイベント『ザ・ワールド セレブリティーズ アートフェア』に出展するため、絹谷画伯から絵の指導を受けた。

 

 

 作品のタイトルは『新世紀生命富士』。明るい色調で大きな富士山と真っ赤な太陽の共存ぶりを描いており、いかにも監督らしい雄々しさを持っている。チャリティという趣旨をくんで、明るい色調にしたという。作品は、シルクスクリーン印刷により、全部で900枚が作られた。

 

 当時、本誌のインタビューに応じた長嶋氏は、「最初はすごく疲れました。でも描いているうちに、いいものにしたいと思ってくる。出来ばえには大満足です」と笑って自賛している。

 

 絹谷画伯は長野五輪のポスターや東京芸術劇場の壁画などで知られる、日本を代表する画家だ。長嶋氏との出会いはテレビ関係者の紹介だった。長嶋氏が「いやぁ~、絹谷さん、ファンなんですよぉ」と言葉をかけ、ゴルフや会食を楽しむ間柄になった。

 

『新世紀生命富士』は、そんな親交の深い2人の合作なのだ。当時、絹谷画伯も本誌の取材に応じている。

 

「監督(当時)はそうとう絵がお好きで、かなり造詣が深いですよ。タイプとしては、元気な絵がお好きで、ご自宅にもたくさんのコレクションをお持ちです。現役時代によく自主トレをしていた富士山の印象が強いみたいで、テーマはすぐ決まりました」

 

 制作期間は2000年12月からおよそ3週間。恒例の早朝ランニングを終えたのち、朝8時半からお昼まで、長嶋氏は絹谷邸2階のアトリエに通って筆を進めた。画伯も学生時代は野球部に所属していたため、作業中も自然と野球談議に花が咲き、楽しいひとときだったという。

 

「絵を描くのはモノのバランスや間を見る作業。これは打者にも必要なもので、監督は現役当時から、私の師匠のアトリエにもよく見に行ってたそうですよ。そうやって、『モノを見る』ということを鍛えていたんでしょう」

 

 実は、長嶋氏の処女作も、画伯との共同作品だ。京都の共通の知人に請われて “合作した” 民家の壁画で、画伯がベースを描き、そこに長嶋氏が色を足して手形を押した。

 

 画伯が「いずれ絵描きにしちゃおうかなぁ」と長嶋氏をそそのかすと、長嶋氏は「いやいや、僕は85歳まで、“現場” でやりますよ」と笑っていた。

 

 いま、長嶋氏はちょうど85歳。まさに “現場” の積み重ねで文化勲章を受賞したのだ。

 

写真・時事通信

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