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大谷翔平 “年棒30億円が妥当” でも残留が合理的なワケ…他チームが抱える「資金不足」と「ローテ問題」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2021.10.31 06:00 最終更新日:2021.10.31 06:00
打っては、46本塁打、100打点。投げては9勝2敗、156奪三振――。
今季の大谷の活躍を評して、「前人未到の記録を打ち立てた」と語るのは、野球のデータに詳しいスポーツライターの広尾晃氏だ。
「打者として打席に立った回数と、投手として対戦した打者数の合計が、MLBでただ一人、1000を超えているんですよ。ベーブ・ルースと比較されますが、その数字すら超えていますからね。まさに二刀流です」
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『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』の著者でスポーツライターの佐々木亨氏は、今季、特に思い出に残る試合が2つあるという。
「まずは5月14日、レッドソックス戦で見せた、グリーンモンスターと呼ばれる高さ11m超のレフトフェンスを越えた11号本塁打ですね。流し打ちで、しかも片手一本で越えた。あんな打球は見たことありません。今季の彼の状態のよさを感じさせられました。
もうひとつは、7月2日のオリオールズ戦のサヨナラホームイン。仰向けになって喜んでいるシーンが非常に象徴的でした。彼の、野球に対して全力で取り組む姿勢、楽しむ姿勢、チームのためにプレーする姿勢が表われていたと思います。
彼は常々『自分は高いところを目指すタイプ』だと言っています。我々の想像を超えたところを見つめているんですよ」
仕事量がとんでもなく多い大谷だが、前出の広尾氏は「年俸査定にもつながる」と語る。
「打席に600回ほど立つ選手は、年俸15億円ほどもらっていて、打者と500回ほど対戦している投手も同じ15億円くらい。単純に言えば、両方をクリアしている大谷は、年俸30億円もらわないと、割に合わないんです。
彼の今季の年俸は約3億円ですが、1回の打席で対戦打者あたり、約26万円。普通の選手の10分の1ほどなので、コストパフォーマンスを考えると、超お得な選手になってしまいます」
となれば資金力のあるチームに絞られるということになるが、「ことはそう簡単に運ばないでしょう」と語るのは、メジャーリーグ評論家の第一人者である福島良一氏だ。
「大谷が二刀流を続けることで話を進めれば、DH制のないナ・リーグは外さなければいけない。するとア・リーグのチームに限られるわけですが、資金力のあるヤンキースやレッドソックスは、それぞれDHをチームの顔であるカルロス・スタントンとJD・マルチネスに任せていて、空きがないんです。そこが難しいところですね。
また、大谷が語ったように『勝てるチーム』となればアストロズやレイズがあげられますが、そこまでの資金力はない。そして、ここがいちばん肝心なことですが、地区で優勝を争うチームのローテーションは、5人で回し、先発は中4日で登板と固定されているんです。
ところが大谷が入れば、そのローテを組み直さなければいけない。エース級は中4日のリズムで長年投げていますし、そのリズムを崩したくないのが本音なんです。
ですから、優勝を目指すチームは、二刀流の大谷をうまく使いこなせないのではないでしょうか。もっと言えば、チームの勝利と二刀流は結びつかないともいえます。以上のことから考えれば、エンゼルス残留が第一候補でしょう」
MVPのさらに先へ、大谷は走り続ける。
(週刊FLASH 2021年11月9日・16日合併号)