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豊昇龍が明かす “朝青龍の甥” としての重圧…白鵬からも「次はお前が頑張る番だ」とエールが
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.01.12 06:00 最終更新日:2022.01.12 06:00
2018年一月場所で初土俵を踏んでから、今年で5年め。今場所、22歳の若武者・豊昇龍が燃えている。
「(去年は)いいこともいっぱいあったし、悪いこともありました。(九月場所、十一月場所と)最後は2場所連続で負け越しましたからね。でも年が替わって、もう気持ちも切り替えています」
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モンゴル・ウランバートルの出身で、父親は元横綱・朝青龍の兄。少年時代はレスリングに熱中し、16歳で日体大柏高校に入学した。
「レスリングをやるために日本に来たんです。叔父さん(朝青龍)は『相撲をやればいいじゃないか!』と言ってたんですけど、その気は全然なかったんですよ。
もちろん、叔父さんがどんなにすごい人なのかは知っていましたよ。でも怖かったんですよね、叔父さんが。目の前にいるだけで体はあんなにデカいし、めちゃめちゃ怖い。自分はそんなに体が大きいわけじゃないし、あんな人ばっかりいる相撲なんか無理、絶対やりたくないと思っていたんです」
しかし、入学直後の5月、事態が一変する。
「授業で国技館に大相撲を観に行って感動しちゃったんです。遠藤関の技のすごさとか、日馬富士関がものすごいスピードで大きな体の力士を倒したり。もう相撲をやるしかないと思って。
それで叔父さんに電話したんです。そしたら、やっぱり怒られました。『だから言ったじゃないか!』って。それでも、叔父さんが世話をしてくれて、相撲部に入ることができたんです」
入部当時の体重は66kg。
「とにかく毎日ご飯をいっぱい食べて吐く。その繰り返しでした。きつかったですけど、我慢すればきっといいことがある、強くなれると思って」
体重が100kgを超えた高校3年のインターハイでは個人戦で準優勝。2017年秋に立浪部屋に入門した。その後、スピード出世で初土俵から2年もたたずに十両昇進、2020年九月場所には新入幕を果たした。
昨年七月場所で初の三賞となる技能賞を獲得。角界の未来を担う一人として期待されるが、ついてまわるのは “朝青龍の甥” という肩書だ。
「もちろん尊敬しているし、すごく世話になっていますからね。実際、叔父さんですから……。でも、そう言われるのが嫌なときもありますよ。あれだけすごい人と、甥ということで自分が比べられるのは違うんじゃないかと思うんですよ。もし比べられるにしても、まだまだ早いですよ」
昨年、同じモンゴル出身の横綱・白鵬が引退した。
「横綱には、自分が高校のころから稽古をつけてもらっていたんです。関取になる前は『恩返しは俺に勝つことだぞ』って言われたし、関取に上がったときは『早く(番付を)上がってこないと、俺がやめちゃうぞ』って声をかけてもらって。
それで去年の九月場所ですね、自分が前頭筆頭だったので、横綱とやっと対戦できると思っていたら、引退されてしまったので……」
白鵬の現役最後の場所となった昨年七月場所の千秋楽。三賞を受賞し、控室に一人残っていた豊昇龍に、白鵬がこう声をかけたという。「次はお前が頑張る番だぞ」と。
「そのときは深く考えなかったんですけど、あのとき横綱は引退を決めていたということを後から知ったんです。そう思うと、う〜ん……。そういうことだったのかと、今になって思うんです」
5年めの今年は、三役昇進の期待もかかる。
「もちろん三役は狙いますが、“いちばん上” を目指すという気持ちで入門しましたから。それは今も変わっていません。その前に、まずは一月場所で勝ち越しですね(笑)。とにかく “全身全力”。その気持ちで、一番一番を大事にして頑張りますよ」
今いちばん対戦したい力士を聞くと「阿炎関」と即答した。
「これまで当たったことがないんですけど、先場所すごかったですよね。横綱(照ノ富士)を土俵際まで持っていくぐらい、あの長い手でばんばん突っ張るんですから。どれだけ強いのか、確かめたいんですよ」
とにかく相撲が楽しいと言うが、ふがいない相撲を見せれば、叔父さんがツイッターで活を入れてくる。
「いつも気にかけてもらって嬉しいです。でも、正直言うと、あれ本当に参るんです。すごいプレッシャーなんですから(笑)」
豊昇龍智勝(ほうしょうりゅう ともかつ)
1999年5月22日生まれ モンゴル・ウランバートル出身 187cm132kg 本名はスガラグチャー・ビャンバスレン。立浪部屋所属。最高位は東前頭筆頭。三賞は技能賞1回。突き押しに四つ、足技もありと取り口は多彩
写真・高橋マナミ
コーディネート・金本光弘