スポーツ
羽生結弦 「4回転半が成功するまではやめられないのでは」村主章枝が語るプロフィギュア選手の“退き時”
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.02.13 18:00 最終更新日:2022.02.14 22:56
「4回転アクセルは全日本のときと比較すると非常に回転も速く、本当にあと一歩だったという感じを受けました」
羽生結弦(27)の北京五輪をそう振り返るのは、ソルトレイクシティ五輪で5位、トリノ五輪で4位の成績を収めた元フィギュアスケート選手の村主章枝(41)だ。北京五輪の男子フィギュアスケートのフリーで、羽生が挑んだ4回転アクセル。転倒して回転不足の判定となったが、国際大会では初めて、4回転アクセルとして認定された。
【関連記事:羽生結弦 世界初の4A認定!競技人生でこだわり続けた「前人未踏」の哲学】
2021年11月4日、羽生は、NHK杯の欠場を発表していた。かねてから羽生の懸念だった「右足関節靭帯損傷」の影響だった。
「競技に“タラレバはない”とよく言われますが、怪我をしていなかったら……、今シーズンの試合に出られていたら……、五輪でも成功できたんじゃないかというぐらい、本当に惜しかったと思います」(村主氏)
今大会で4回転アクセルに挑んだ羽生の健闘は讃えられるものだが、彼の最大の功績は、日本男子のフィギュアスケートのレベルを引き上げたことだと村主氏は続ける。
「私が五輪の出場権を争っていた10年ほど前、女子のレベルは上がっていましたが、男子はあまり注目されていないこともあり、伸び悩んでいたと思うんです。そこに羽生選手が頭角を現わして、世界でも結果を残し始めた。それで、男子もより切磋琢磨して、という流れができた。長年にわたる羽生選手の頑張りが、男子のフィギュアスケートのレベルを引き上げたと思うんです。
そういった意味では、羽生選手がメダルを獲れなかったことは本当に悔しいですが、彼の今までの活躍の結果が良い影響を与え、鍵山優真選手(18)が銀メダル、宇野昌磨選手(24)が銅メダルという成績に表われていると思います。まさかこんな時代がくるとは思いませんでした。感動的でした」
羽生の存在があったからこそ、宇野や鍵山といった世界で戦える後輩たちが育ってきた。
そんな羽生も、村主氏の“後輩”だった時期がある。
「彼が15〜16歳のときだったと思いますが、アイスショーでご一緒したことがあります。そのときの印象は物怖じしない、自分の思ったことはきちんと話す子。具体的に何を話したかは覚えてないですが、話し方や雰囲気で、大物になるなっていう感じはしましたね。
大人になってからご一緒したわけではないので、今はどのような感じかはわからないですけど、性格は滑りに出ます。いつもスピンやジャンプの軸がまっすぐですから、きっと性格も自分の信念を曲げないまっすぐな性格なんだと思います。
私が現役最後のころ、カナダのトロントで練習をしていたんですね。同時期にリンクは違いますが、彼もトロントで練習をしていて。そのころに聞いたのは、家と練習場の往復しかしないぐらい、とにかくストイックな方だという話でした」
4回転アクセルを目標にしてきた北京五輪が終わり、気になるのは羽生の今後だ。羽生は現在、進退については明言していないが、現役続行か否か注目が集まっている。村主氏は自分の経験も踏まえ、こう話す。
「4回転アクセルに挑戦してきちんと成功しないと、彼のなかでは気がすまないんじゃないかと思うんです。ご本人もよく『負けず嫌いだ』っておっしゃっていますからね。このままじゃ終われないと思っているような気がします。
五輪の舞台でやらないと気がすまないという気持ちは、私もよくわかるんですよ。私自身、悔しい思いをしながら続けていたら、33歳まで現役を続けていましたから。次の五輪で羽生選手は31歳ですが、工夫次第でまだまだできると思います。怪我や故障は気がかりではありますが、4度目の五輪にチャレンジしてほしいなと思います」
村主氏が語るように、羽生もまた、「氷に嫌われた」ままでは終われないのかもしれない。
( SmartFLASH )