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“コロナの女王” 岡田晴恵氏 オミクロン株に悩む名門大学野球部のために動いた!「部員に特撰ヒレかつ70人前の差し入れを」

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.03.03 06:00 最終更新日:2022.03.03 06:00

“コロナの女王” 岡田晴恵氏 オミクロン株に悩む名門大学野球部のために動いた!「部員に特撰ヒレかつ70人前の差し入れを」

白水寮は築10年から築42年までの4つの棟からなる。多くの名選手が巣立っていった

 

 白鴎大学教育学部の岡田晴恵教授は、同大学の硬式野球部の顧問に就いている。感染症の専門家として、岡田氏が、同大学での体験談を語ってくれた。

 

(以下、岡田氏による寄稿)

 

 

 2020年の春、私は白鴎大学硬式野球部の顧問に就任しました。その前から、前部長で歌手でもある山本コウタロー名誉教授に「野球部を頼みますよ」と言われていたのです。私はもともと大の野球ファン。喜んで引き受けました。

 

 

 また、新型コロナの感染が国内で深刻に認められはじめてからは、感染症の専門家として、少しは協力できるのではないかと思いました。

 

 教育学部の私のゼミでは、窓を全開にして、学生たちはコートを着て授業を受けています(笑)。でもそのおかげか、ゼミ生もなんとか感染なしでここまで来られました。

 

 硬式野球部は、関甲新学生野球連盟に所属する強豪で、阪神で活躍する大山悠輔くんや、オリックスの大下誠一郎くん、昨秋に西武からドラフト指名された中山誠吾くんなど、多くのプロ野球選手を輩出してきました。

 

 部員は約70名。全員が「白水寮」で共同生活を送っています。多くの学生が巣立っていった歴史ある寮ですが、トイレ、洗面所、風呂も共用という昔ながらの造りです。

 

 私は2020年の夏に、寮に入って感染対策をどうすべきか、自分の目で確かめました。そして、いま主流の借り上げアパート型の寮と比べて、感染症のリスクはどうしても高くなると判断せざるを得ませんでした。

 

 しかしその後、現在まで白水寮では、一人も二次感染者を出していません。遊びたい盛りの大学生が70名近くも共同生活するなかで、これは奇跡的なことだと思います。

 

 それは私の功績ではなく、スタッフ、指導者、部員ともに立派だったからです。白水寮は、なぜ感染拡大を防げたのか。全国の運動部関係者や、会社や工場で働く方にも、きっと参考になるはずです。

 

 2022年2月、オミクロン株によって、白鴎大学がある栃木県内でも1000人を超える感染者が出る日がありました。

 

 その少し前の1月、白水寮で学生とともに生活し、指導している会田泰輔コーチは、県内で感染者が増えてきた報道を見て、いち早く対策を強化することを決意しました。

 

 もともと徹底していた朝晩の検温や、トイレ後に毎回便器の消毒、2方向以上の換気に加え、入浴も同時には3人までに制限し、寒いですが脱衣所の窓を全開にしました。

 

 練習は、これまで部全体でおこなっていたものを、7〜8人のグループで、時間差でやるようになりました。コーチや監督は大変だったと思います。これだけのことを、オミクロン株が本格的に広がる前に、指導者判断でやっていたのです。

 

 食事はこれまでは食堂でおこない、換気や人数制限、黙食などを実行してきましたが、集まること自体をやめて、部屋食にしました。

 

 コーチやマネージャー、スタッフが手分けし、部員たちの部屋の前に弁当を置き、配食したら連絡し、食べさせるようにしました。

 

 その仕組み自体はうまくいったのですが、食べ盛りの運動部員たちです。これまでは、ご飯は自分でおかわりし、お腹いっぱい食べられたのですが、弁当では足りないという声が上がってきました。

 

 会田コーチに聞いたところ、栄養的にバナナがよく、学生も好んで食べるとのこと。以来、ご飯の追加ぶんのつもりで、バナナを差し入れています。私が70本以上のバナナを運ぶのは、なかなか重くて苦労します。でも、学生に手渡すと、ひょいっと持って行ってくれるんですよ(笑)。

 

 2月初旬、野球部員に2名の感染者が出ました。感染ルートは不明ですが、発症日や状況から、それぞれ別のルートから感染したと思われます。

 

 学生は野球だけではなく、試験や講義もあります。地域での感染者も増え、誰が感染してもおかしくない、ピークといわれていた時期でした。

 

 一人は寮内で隔離し、もう一人は保健所から療養用のホテルを用意されました。本人も、ほかの部員にうつしたくないと、自らホテル療養を希望しました。

 

 2月14日は、まだ2名の隔離期間のさなかでした。この日は月曜で、白水寮では週に1回ある、夕食が出されない日です。コロナが流行する前は、学生たちは連れ立ってラーメン店などで外食することもできました。もちろん、今はそうはいきません。

 

 そこで差し入れたのが、小山駅の駅ビルにあるとんかつチェーン「さぼてん」の「特撰やわらかヒレかつ弁当」でした。野球にも、コロナにも「勝って」という思いをこめたのです。

 

 このお弁当は、以前に差し入れたとき好評だったもので、そのときは存在を知らなかった「大盛り」にしました。私も、だんだん学習しているんです(笑)。

 

 ちょうどバレンタインデーだったので、チョコレートも70個つけました。もし、食欲がない学生がいても、チョコでカロリーを摂ってほしいという思いからでした。

 

 現在、それから10日ほどたちました。毎朝の部員からの体調報告をコーチが注意深くチェックしてくれています。寮内で二次感染はなく、乗り切ることができたようです。

 

 第6波はピークアウトしつつあるといわれていますが、まだまだ気は抜けません。

 

 春休みも、みんなには帰省せず、寮で過ごしてもらいます。学生にとって、コロナ禍の大学生活はつらいと思いますが、お願いをしっかり受け止めて、真面目に守ってくれています。

 

 学生やスタッフの皆さんには、感謝しかありません。私の希望が、あの寮にはあります。

 

( 週刊FLASH 2022年3月15日号 )

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