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「村田諒太vs.ゴロフキン」の舞台裏…ファイトマネーは20億円超、滞在費は4000万円にジム会長らも驚愕

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.04.09 06:00 最終更新日:2022.04.09 07:14

「村田諒太vs.ゴロフキン」の舞台裏…ファイトマネーは20億円超、滞在費は4000万円にジム会長らも驚愕

日本人として竹原慎二以来の世界ミドル級王者の村田は強靱な肉体と頭脳で、ゴロフキン攻略を狙う。プロ通算16勝(13KO)2敗

 

“日本ボクシング史上最大のビッグマッチ” と銘打たれた2団体王座統一戦が4月9日、さいたまスーパーアリーナでおこなわれる。拳を交えるのは日本のスターWBA王者の村田諒太(36)と、IBF王者のゲンナジー・ゴロフキン(39・カザフスタン)。

 

 この試合、何が史上最大かといえば、とにかく両陣営を飛び交うマネーの額が桁外れなのだ。

 

 

 主催は業界最大手の帝拳プロモーション。トップの本田明彦会長は1988年と1990年に、あのマイク・タイソンの世界ヘビー級タイトルマッチを東京ドームで開催した世界的なプロモーターだ。

 

 その本田会長いわく「時代は違うが、間違いなくタイソンのときより経費は上回る」というのも、数字を見ていくと頷ける。

 

 まずは、チケットの値段が破格だ。リングサイドA席が22万円、B席11万円。ちなみに、東京ドームのタイソン戦は最高額が15万円だった。

 

 気になる1試合のファイトマネーは、ゴロフキンが15億円で、ロンドン五輪金メダリストとして抜群の知名度を誇る村田は6億円(いずれも推定)。もちろん、日本人ボクサーとして史上最高額である。

 

 ファイトマネー以外の経費もすさまじい。ゴロフキン一行の旅費、滞在費だけで約4000万円かかる。それもそのはずで、チームのスタッフは、コーチだけでもフィジカルやメンタルなど複数いて、さらに専属シェフ、専属カメラマン、弁護士までいる。コロナ禍で入国人数を絞っても十数人のチームになる。

 

 日本までの飛行機は、ゴロフキンら数名がファーストクラスで、あとはビジネスクラス。さらに、赤坂にある高級ホテルでレストランつきのワンフロアを貸し切るのだから、4000万円も納得の額だ。

 

 国内で数々のイベントを仕掛け、世界戦の交渉経験もある横浜光ジムの石井一太郎会長(39)は次のように話す。

 

「4000万円あれば、軽量級の世界戦1試合が軽く開催できます。でも、ゴロフキンを日本まで呼ぶんですから “VIP待遇” は当然でしょう」

 

 八王子中屋ジムの中屋一生会長(42)も、今回の試合に驚きを隠さない。中屋会長は2012年にWBA王者だったゴロフキン陣営と交渉し、淵上誠との試合を実現させている。

 

「ゴロフキンの実力は当時からすごかったですが、人気はまだまだ。試合会場はウクライナのアイススケートのリンクで、セミでした。ファイトマネーは淵上が約500万円。ゴロフキンも1000万円から2000万円程度だったと思います」

 

 ゴロフキンは、淵上戦のTKO勝利からしばらくしてアメリカ進出をはたすも、なかなか人気は出なかった。それでも時間をかけ、KOを量産してアメリカンドリームを実現。高額の報酬を手にするようになったのは、ここ数年の話である。

 

 村田は2017年に世界王者となり、同じミドル級で不動の王者となったゴロフキンをターゲットに定めた。交渉は2018年にスタートしたが、石井会長は日本にゴロフキンを呼ぶのは難しいのではないかと感じていた。

 

「ゴロフキンが、2019年にDAZNと大型契約を交わしました(6試合で約114億円と伝えられる)。そうなると、ファイトマネーは1試合10億円以上。さすがにこれでは日本に呼ぶのは厳しい。テレビ局では、とても払い切れない。

 

 今回のイベントの話を初めて聞いたとき、本田会長に『どうやってやるんですか?』と聞いたら『Amazonでやる』と。そんなことができるのかと、驚きました」

 

 今回の試合はAmazonジャパンの動画配信サービス、プライム・ビデオが日本国内でライブ配信し、海外ではDAZNが生中継する。プライム・ビデオがスポーツ中継をするのは今回が初めて。巨大IT企業の参戦により、メガファイトの扉は開かれたのである。

 

 こうしてお金の問題に目途は立ったものの、今回のイベント開催でいちばんの難敵はコロナだった。予定していたスケジュールはずれにずれ込んだ。コロナの影響で外国人の入国が厳しくチェックされるようになり、ゴロフキン陣営を呼ぶための手続きは難航した。

 

 スポーツ庁、外務省、厚生労働省、法務省、最後は航空関連事業を管轄する国土交通省にまで書類を出して、なんとかハードルを越えた。

 

 最大の危機は、当初予定されていた12月29日の試合がコロナ禍で延期になったときだ。村田には練習に欠かせないメキシコ人のスパーリング・パートナーが2人いるのだが、彼らの在留延長がなかなか認められなかったのだ。

 

「試合に向けてパートナーの存在は絶対です。村田がきちんと仕上げられないと、試合は台無しですから。(所属ジムの)帝拳は、2人が日本に残れるよう入管と粘り強く交渉してなんとか滞在を認めてもらいました」(ジム関係者)

 

 これだけの苦労を乗り越えて、日本ボクシング史上最大のビッグマッチがいよいよ実現する。村田の歴史的勝利に期待しつつ、まずは無事に試合がおこなわれることを祈るばかりだ。

 

写真・山口裕朗
取材&文・渋谷淳

 

( 週刊FLASH 2022年4月19日号 )

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