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亀田興毅「1億円賠償」勝訴から2カ月…日本ボクシングコミッション(JBC)解散に初告白「何を言っても時間は返ってきません」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.04.12 06:00 最終更新日:2022.04.12 06:00
日本のプロボクシングを統括し、試合管理をおこなってきた一般財団法人日本ボクシングコミッション(JBC)が、3月末で解散した。
2020年末の井岡一翔選手のドーピング騒動では、JBCによる検査体制の重大な不備が判明したが、今回の直接の解散原因は深刻な財政難だ。
「法律により、一般財団法人は純資産額が2期連続で300万円を下回ると、解散しなければなりません。財務諸表によれば、JBCの財産は2020年末は約2500万円、2021年末は約4000万円のマイナスでした」(ボクシング担当記者)
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2010年度に約1億6000万円あった純資産は減る一方だった。
「JBCは2012年当時、事務局長だった安河内剛氏を不当に解雇した問題で、最高裁まで争いました。結局、2016年にJBCは敗訴し、莫大な裁判費用がかかりました。このことが、財政破綻のおもな要因だとみられています」(同前)
さらに、JBCによる不当な処分で国内試合が不可能になったなどとして、元世界3階級王者の亀田興毅氏(35)ら、3兄弟がJBCを提訴した裁判では、東京高裁が今年2月に亀田氏側に1億10万円の賠償金の支払いをJBCに命じ、判決が確定している。
人気番組『行列のできる相談所』(日本テレビ系)への出演でも知られ、亀田氏側の代理人を務めた北村晴男弁護士(66)が、今回の解散についてこう解説する。
「JBCは、解散の理由として『コロナの影響で減収したこと』を挙げていますが、これは真実ではありません。コロナが原因であれば、とっくにスポンサーが手を差し伸べているでしょう。本当の理由は、この組織が違法行為を続け、弁護士費用と賠償金の支払いが積み重なったからです」
すでに破綻状態にあるJBC。亀田氏への賠償金の支払いの目途は立っているのか。
「今、永田(有平)理事長らはスポンサーを集め、組織を復活させようとしています。それができれば、支払いは可能なのでしょうが…」(北村弁護士)
北村弁護士は、亀田氏の裁判の目的として、「亀田氏側の損害の回復」と「JBCの正常化」を訴えてきた。しかし現状では、いずれの目的も達成されたとは言い難い。
3月31日に「一般財団法人JBC」は解散したものの、3月14日に「一般社団法人JBC」が設立されていたことが、解散発表の会見で明らかになっている。理事長は、変わらず永田氏だ。北村弁護士はこう憤る。
「姑息ですね。JBCの幹部たちは責任を一切感じておらず、判決が間違っているという程度の感覚なのでしょう。違法行為に関わってきた人たちが全員辞めない限り、正常化はできません」
そして北村弁護士は、“新生JBC” を託すべき人物として、かつて不当に解雇された安河内氏の名を挙げた。
「安河内さんは、かつては事務局長として、見事に組織を運営してきました。しかし、裁判で不当解雇が認められたにもかかわらず、JBCは安河内さんを形式的に復職させただけで、実権を与えませんでした。おそらく永田理事長らは、新しいJBCでも、安河内氏に実権を与えることはないでしょう。これでは、これまでのJBCの二の舞いです」
安河内氏に、JBCの解散と、再建にどう関わっていくのかについて尋ねたが、「コメントは控えさせてください」と答えるのみだった。
一方、亀田興毅氏は本誌にこうコメントを寄せた。
「(JBCとの闘いは)2013年12月から、約9年弱に及ぶ長いものでした。プロボクサーとして年齢的にピークだった期間に、日本のファンの前で試合ができず、弟の大毅、和毅も含めて、辛く苦しい時期を過ごすことになりました」
亀田氏は2014年2月、都内にジムをオープンしたと同時に、JBCから日本国内での活動を禁じる処分を受けた。さらに同日、亀田氏と弟の和毅さんらは監禁や恫喝、暴行をおこなったとして、JBCの職員から訴えられたのだ。
「当時の自分たちのイメージからか、悲しいことに世間からは『亀田ならやりかねない』と思われてしまいましたが、裁判ではすべての映像が残っていたことが証拠となり、勝訴しました」
だが勝訴したことは、大きく報じられなかった。
「そのため、オープンしたジムの経営は苦しく、当時は1億円以上の経済的損失を負うことになりました。しかし、何を言っても時間は戻ることはなく、返ってきません」
一般財団法人JBCに、解散の原因は裁判費用による財政悪化ではないのか、社団法人を設立した意図、新法人でも永田氏が理事長を続けるのかについて問い合わせた。
JBCは、質問には直接答えずに、コロナ禍による収入減での解散経緯の説明と、次のような回答があった。
「(JBCは)現在は清算法人として業務を継続し、現在の債務超過を解消させるべく支援者探しと再建策を作成して関係各所との協議をしているところです。(中略)なお、一般社団法人JBCを設立いたしましたが、将来財団ではなく社団法人化することを視野にいれて、当面はボクシング興行維持のために最大限の努力をして再建のプランを協議しているところです」
永田理事長は、自身がかつて所属していた株式会社東京ドームに資金援助を仰ぎたい意向だという。
「東京ドームはボクシングの聖地である後楽園ホールを運営し、歴代の経営者がJBCのトップに就くなど、深い関係があります。現状は難航しているようですが、もし資金援助の道筋がつけば、解散の原因を作った人たちが居座ることになるのではないかと心配です」(前出・記者)
一方、これまではJBCと協力し、興行をおこなってきたボクシングジム経営者による団体・日本プロボクシング協会は、すでにJBCを見限っている。
「これからは、我々協会が中心になり、中立性を担保しながら、新しいコミッションを立ち上げようと、すでに動きだしています」(ジム経営者)
JBCによって人生を狂わされた亀田氏もまた、次のステージに目を向けている。
「2021年3月、私は新たにプロボクシングジムの会長となりました。今の私、“亀田興毅” があるのはボクシングのお陰です。一人のプロボクサーがボクシング人生をかけて臨んだ裁判をけっして無駄にすることなく、未来溢れるボクサーたちのために生かしていただけたらと思います」
亀田氏は今、ボクサーたちの地位向上のためにさまざまな活動をおこなっている。JBC再建に奔走する永田理事長らには、“志” はあるのだろうか。