スポーツスポーツ

高津臣吾が山田哲人に贈る最大級の賛辞「一塁への送球の正確さは日本一」

スポーツ 投稿日:2022.04.15 11:00FLASH編集部

高津臣吾が山田哲人に贈る最大級の賛辞「一塁への送球の正確さは日本一」

山田哲人を祝福する高津監督(写真・時事通信)

 

 2年連続最下位から、ペナント制覇と日本一達成を果たしたヤクルトスワローズ。第22代監督である高津臣吾が、山田哲人について最大級の賛辞を贈る。

 

 

 2021年から新しくキャプテンを務めた山田哲人について書きたい。

 

 山田は2020年のオフにフリーエージェントの権利を獲得し、いろいろ熟慮してからスワローズと再契約を結んだと思う。そして気持ちを新たに、2021年からキャプテンとして自ら手を挙げ、チームを支えてくれた。日本シリーズでは限界、いや極限までプレーしてくれた。

 

 

 山田といえば3割、30本、30盗塁の「トリプルスリー」が有名だが、打撃コーチたちは、「哲人のバットのヘッドの動きは特別です。ふつう、あの構えからでは速球には間に合わない。ところがスピードとパワーで間に合ってしまうんです」と絶賛する。

 

 僕には打撃の技術的なことは分からないが、山田のスタンドティーの打撃練習(止まっているボールを打つ練習)を見ていると惚れ惚れする。

 

 プロ野球選手といっても技術は千差万別で、青木宣親などは「スタンドで止まっている球を打つよりも、投手が投げる動いている球をミートする方が簡単です」と言う。

 

 山田のスタンドティーは、ものすごく飛ぶ。それこそ、日本シリーズ第5戦で放ったホームランのように外野スタンドまで運んでしまうのだ。山田独特の技術、パワー、スイングスピードが生み出す芸術だ。

 

 そしてもうひとつ、山田について書いておきたいことがある。もっともっと、彼の守備を評価して欲しいのだ。山田の守備を分析していくと、とにかく基本に忠実なのである。

 

 2011年にスワローズに入団し、守備を担当していたコーチの三木肇(現・楽天二軍監督)の教えを受けていたが、いまだに若いころに身につけた守備の「型」を崩していない。打撃に関しては、シーズンごとに変化があるが、守備については基本を大切にするから、驚くほど安定している。

 

 さらには、守備範囲が圧倒的に広いということを伝えておきたい。他の選手だったら飛び込んで捕るような打球でも、山田の場合は正面で捕球している。これに気づく人は、なかなかいない。われわれのように毎日、山田のフィールディングを見ているから気づくのだ。

 

 それに加えてスローイングも正確だ。特に、二塁キャンバス寄りの打球を逆シングルで捕球した後、一塁に送球するときの正確性は日本一だと思う。解説者のみなさんには、この山田の技をぜひともファンのみなさんに向けて解説して欲しい。お願いします。

 

 山田の魅力は英語で言うところの「アジリティ(agility)」――機敏さ、敏捷性だが、ゴロのリズムにタイミングを合わせるのも上手だ。

 

 みなさんは覚えておられるだろうか。日本シリーズ第6戦の5回、若月健矢選手のイレギュラーした打球を、山田が体勢を崩しながらも正面に入り処理した場面。リクエストで判定が覆り、結果的に内野安打になったが、彼の守備のうまさがもっともよく出ていたと思う。

 

 また、日本一を決めた最後のアウトは、宗佑磨選手の二塁ゴロを山田がさばいたものだが、あのゴロも処理が難しい。バウンドが大きく、勢いが殺されていて、宗選手のスピードを考えると、内野安打になってもおかしくない打球だった。実際、ダグアウトで見ていて、ヒヤッとした。

 

 ところが、山田は2バウンド目でもう正面に入っていた。本能で反応していたのだろうか、これ以上はないというタイミングで捕球していた。このすごさは、プロでないと分からないかもしれない。

 

 それでも、さすがの山田も5時間に及ばんとする耐久戦で疲れ切っており、つまずきながらもなんとか一塁に送球して、最後のアウトを取ってくれた。山田でなければ、もっともっと際どいプレーになっていてもおかしくなかった。

 

 あれは、日本一になるために必要だった最後の “試練” となるゴロであり、それをキャプテンの山田がさばいたのは、何やら象徴的だった。

 

 山田自身も守備には誇りをもっている。彼からは、「新聞記者のみなさんに、監督からアピールしてくれませんか? 今年はゴールデングラブ賞を目指しますって」と言われており、実際に記者の人たちに話をするのだが、なかなか記事にならない。どうしても、山田の場合は「トリプルスリー」とか、打撃の話題が優先され、守備の話は地味に映るのだろう。

 

 球団が目にしているデータによれば、山田の守備のおかげでかなり失点を防げている。山田の守備には「実」があるのだ。これまで、誰も反応してくれなかったので、自分から書かせていただきました。ぜひとも、正当な評価をお願いします。

 

 

 以上、高津臣吾氏の新刊『一軍監督の仕事 育った彼らを勝たせたい』(光文社新書)をもとに再構成しました。

 

●『一軍監督の仕事』詳細はこちら

 

( SmartFLASH )

続きを見る

スポーツ一覧をもっと見る

スポーツ 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事