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藤波辰爾が語る後輩・大谷晋二郎の頸髄損傷「日本のプロレス界は大技至上主義が横行している!」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.04.19 06:00 最終更新日:2022.04.19 06:00
4月10日に両国国技館でおこなわれたプロレス団体「ZERO1(ゼロワン)」の旗揚げ20&21周年記念大会。メインイベントは、団体のエース・大谷晋二郎(49)が、“外敵” 杉浦貴(51)の持つ世界ヘビー級王座に挑む一戦だった。
試合中盤。杉浦が大谷をコーナーポストへ投げっぱなしジャーマンで叩きつけた直後、アクシデントは起こった。
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「終わってねえぞ、オラ!」
杉浦が大谷に手を伸ばすも、仰向けで大の字になった大谷はまったく動かない。選手やスタッフが大谷を取り囲み、ファンが呆然と立ち尽くす衝撃の幕切れとなった。
横たわった状態から全身が動かせなくなったため、都内の病院に緊急搬送された大谷の容態は「頸髄損傷」。13日に手術を受け、現在は家族と会話するなど、大谷の意識は安定しているという。
複数のプロレスや総合格闘技の団体で、リングドクターを務める「格闘メディカル協会」の金村良治医師が語る。
「動画を見た限り、杉浦選手の投げっぱなしジャーマンは、プロレスにおける通常のよくあるムーブですし、とりわけ危険な技というふうには感じませんでした」
金村医師は過去に3度、選手が頸椎にダメージを負い、一時的に首から下が麻痺状態に陥った試合に立ち会ったという。
「幸い3選手ともに比較的軽量だったため、大事には至りませんでした。体重が80kgくらいまでだと、頭や首を打ちつけても大事に至らないことが多いのです。
ただ、これが高山善廣選手(2017年の試合中の事故で頸髄完全損傷)のように130kg近い体重となると、打ちつけた衝撃に自重が加わります。大谷選手も公称で97kgあり、高山選手と同様、非常に大きな負荷がかかったと考えられますね」(同前)
第3、第4頸椎あたりを損傷したという大谷に対し、高山はより重度の完全損傷。現在も、リハビリ生活が続く。
2009年、試合中の事故で亡くなった三沢光晴さん(享年46。頸髄離断)のケースは、積年のダメージの蓄積が大きく影響したともいわれている。
「三沢さんはおそらく、試合前から痺れがあり、手などにあまり感覚がない状態で試合をしていたのだと思います。実際にそういう選手は多く、『手を思い切り握ってください』と言っても、軽くしか握れない選手も多いんです。
今回の事故のきっかけになった技自体は、珍しいものではありません。大谷選手も選手生活が長く、もともと頸椎にかなりのダメージが蓄積していたと思われます」(同前)
新日本プロレス時代の後輩でもある大谷の事故について、10日の大会に参戦していた藤波辰爾(68)が、見解を語る。
「僕も(ビッグバン・)ベイダーに投げられたときに腰椎をやられて、1年半くらいリングに上がれない時期があって……。みんな、瞬間瞬間で受け身で対応は取ってるんだろうけど、限界がありますからね。ひとつ間違えれば、今回のような怪我は誰にでも起こりうるわけで、本当に “紙一重” なんですよね。僕も、頸椎なんかは正常な状態じゃないですからね」(藤波、以下同)
そして藤波は、「大技至上主義」に陥りがちな現状について警鐘を鳴らす。
「プロレスがどんどん進化し、技が派手になっていくのは世の常なんだけど、特に今は危険な技が多い。しかし、投げっぱなしの技を制限するなどのルールはありません。もしそれをすると、選手のパフォーマンスが委縮してしまうし、難しいところです」
選手はファンの声援に応えようと、自分たちの許容範囲を超えてしまう現状もある。
「ただ言えるのは、海外では相手の頭を打ちつけるような大技は多用しないですよね。僕が使ってたドラゴンスープレックスも、受け身が取りづらいということで、海外では一時禁止になりましたから」
そして藤波は、杉浦についても心配する。
「大谷くんに関しては一日も早い復帰を祈ることしかできません。そして、今回のようなことが起こってしまうと、対戦相手の杉浦くんの心の中にもスッキリとしないものが残っちゃうんで、杉浦くんのケアも大事だと思います」
プロレス界屈指の “熱い男” 大谷。皆が、その復活を願っている。