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鈴木誠也 広島時代からの “打撃の師匠” が明かす、カブス入団直前のLINE「進化した姿、見せます!」

スポーツ 投稿日:2022.04.27 06:00FLASH編集部

鈴木誠也 広島時代からの “打撃の師匠” が明かす、カブス入団直前のLINE「進化した姿、見せます!」

入団1年めの鈴木に打撃指導する内田氏

 

 12試合連続出塁、4本塁打とメジャーで鮮烈デビューを果たした “侍の四番”。その原点には、やはり広島カープ時代の教えがあった。

 

 プロ入り後、二軍監督として鈴木誠也の打撃センスをいち早く見いだしてマンツーマンで指導にあたり、渡米前も連絡を取り合った “打撃の師匠” 内田順三氏(74)にアメリカでも結果を出し続ける理由を聞いたーー。

 

 

「必死にやってる結果が、今たまたまついてきているだけ」

 

 カブスの鈴木誠也(27)が、4月11日から17日までにもっとも活躍した選手として週間MVPに選ばれた。

 

 発表された18日の試合後のインタビューには、あくまでも謙虚な言葉で答えたが、日本とはあらゆる環境が異なるなか、6試合で打率.412、3本塁打、5打点は立派な成績だ。

 

 オープン戦では、「スズキの獲得は失敗」と報じた地元マスコミも、いまや「チームの攻撃を一身に背負う」と、まさに手のひら返しで称賛する。

 

 鈴木がプロの門を叩いたのは2013年、ドラフト2位で広島に入団。当時、二軍監督を務めていた内田順三氏(74)は、二人三脚で鈴木の指導・育成をおこなった。

 

「彼が入団してきた当時、カープの若手選手には『第1ストライクの速球系は積極的に打ちにいけ』ということを叩き込んでいました。それをまさに今、誠也はメジャーで体現している。

 

 まだ手探りのなか、あれだけの成績を出せるのは、攻撃的なバッティングができている証拠だと思います」

 

 いまや強肩強打の外野手として鳴らす鈴木だが、入団1年めはショートを守った。

 

「当時、カープの一軍は若干、ショートが弱かった。誠也は即戦力ではなかったので、ショートで育てようということになった。当時のオーナーは、『勝たなくていい』というのは言いすぎですが、『とにかく選手を育ててくれ』とよく言っていました。

 

 なので勝ち負けにあまりこだわらず、打てないから試合に出さないなどといったことはやめようと決めていたんです。誠也は1年めに、そこそこの成績を残しました。

 

 ただ、ショートは内野の要なので、覚えることがたくさんある。守備にばかり気を遣って打撃のよさを消してしまうといけないので、2年めからは外野一本に専念させました。野球を覚えるという意味では、最初の1年間も無駄ではなかったはずです」

 

 入団当初から鈴木は「走攻守」すべてに優れ、身体能力の高さに目を見張るものがあった。ただ、バッティングには改善の余地があったという。

 

「最初は後ろの腕(右腕)の肘が伸びて、バットのヘッドが遠回りするドアスイング気味でした。高校時代の金属バットの弊害でしょう。木のバットは金属に比べて芯の幅が狭い。金属バットは道具が仕事をしてくれるので、前の腕ではなく後ろの腕でぶつけるように打てば、ある程度飛ばせてしまう。

 

 木のバットに対応するため、なるべく体の近くを通して振る、『インサイド・アウト』のスイングの練習を徹底させました。

 

 まずは左打席側にネットを立てた状態でのティーバッティング。バットが体から離れるとネットに当たるので、ネットに当たらないように打つ練習を繰り返しました。結果、広角に打ち分けられるようになり、いまや彼の強みです」

 

 広島は12球団一の練習量を誇っていたが、そのなかでも鈴木は群を抜いていたという。

 

「彼は入団時から、自ら意識的に取り組む練習の重要性をわかっていました。日々、彼の練習につき合うなかでとくに覚えているのが “目力” です。

 

 指導を受けているときは、『聞き漏らしてなるものか』と絶対に視線をそらさない。注意されているときも『なにくそ!』という感じで目を向ける。私に挑んできているような表情でした。ここまで向上心を持った選手はなかなかいません」

 

 自分にとってプラスと思えば、他球団の選手にもアドバイスを求めた。その後、内田氏は巨人に移籍したが、鈴木からはたびたび連絡が入った。

 

「僕が巨人の巡回コーチを務めていた、3年ほど前のシーズン後半。このとき誠也は打率3割をキープしていたんですが、『今のフォームに納得がいかない。ちょっと変えてみようと思うんですが』という連絡が来ました。

 

 びっくりしましたよ。時期が時期だし、打率3割を打っているにもかかわらずですよ。そのときは『シーズンが終わってからでいいのでは』と説得しました(笑)。

 

 じつは渡米前にも、『軸足の回転、持っていき方をもう一度確認したいので見てもらえませんか』と連絡があった。ただ、コロナ禍とお互いの拠点が離れていたこともあり、実現しませんでした」

 

 現在、鈴木はチームの主軸として活躍している。現地記者は3つのポイントを挙げる。

 

「彼自身『英語のレベルは小学生以下』と語るだけに、ほとんどしゃべれない。にもかかわらず、彼のまわりには選手が集まって常に笑顔がある。ほとんどがボディランゲージなんだけど、それで理解し合えている(笑)。ナインに日本のお菓子を差し入れるなど、気配りもうまい。

 

 ホームランを打ったあとの “合掌ポーズ” は、チームメイトもまねして喜んでいます。

 

 もうひとつは選球眼のよさ。13試合で14四死球、出塁率.520は見事。要するに、ボール球に手を出さない。そして、妻・愛理さんの存在。彼女は英語が話せるので、鈴木選手も安心して家庭をまかせられ、野球に専念できるようです」

 

 鈴木のカブス入団直前、内田氏はLINEではなむけのメッセージを送った。

 

「『ファーストストライクの直球系を積極的に振れ、怪我をせずに頑張れ』とLINEしたところ、『はい。進化した姿をお見せします!』と力強い返信があった。

 

 開幕当初、ナインの面々は彼の実力に対し、半信半疑だったと思います。でも、それを払拭するスタートを切れた要因は、彼の持っている積極性。打つことによってチームの一員というか、“カブスの家族” になったと思いますね」

 

 打撃の師は、今も早朝に中継される愛弟子の勇姿を楽しみにしている。

 

( 週刊FLASH 2022年5月10日・17日号 )

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