「新庄は素晴らしい守備力を誇る外野手でした。肩も強く、中堅の守備力はメジャーリーグでも群を抜いていました」
2001年、BIGBOSSこと新庄剛志(50)がニューヨーク・メッツに移籍した際の監督だったボビー・バレンタイン氏(71)は、教え子の当時をそう回想する。
ロッテでも監督を務めたバレンタイン氏だけに、新庄ら日本人選手も多く受け入れて活躍の場を与え、積極的にチームの中心に据えた。
【関連記事:新庄剛志監督 型破りの裏にあった “陰の努力”…「深夜のホテルで素振り1時間」親友が語る意外な素顔】
「彼は打撃センスも優れ、どんな速球にも対応できました」
そんな新庄を、日本人メジャーリーガーとして初めて四番に抜擢したのもバレンタイン氏だった。
「私は何度も彼を四番に起用しました。当時のメジャーリーグには、速球を主軸に組み立てる投手が多いなか、新庄は見事に適応していた。打撃成績はチームでもトップクラス。だからシーズン中、彼を何度もクリーンアップに起用しました。
そして、なによりも覚えているのが、彼は試合中いつも楽しそうに笑顔を浮かべ、チームメイトも新庄と一緒にプレーできることをとても喜んでいたことです。人柄も素晴らしかった」
渡米前の新庄は、阪神での理不尽な上下関係に悩み、野球への情熱が薄れつつあった時期でもあった。それだけに、メッツでの自由な雰囲気を、心の底から楽しんでいる節があった。
その後、新庄はサンフランシスコ・ジャイアンツ、メッツを挟み、2004年に日本ハムに移籍するわけだが、くしくも同じタイミングでバレンタイン氏はロッテの監督に復帰。その際、かつての教え子である新庄にオファーを出したとされる。
「ロッテに誘ったのは事実です。彼はチームに好影響をもたらすと思った。野球に対して積極的に取り組む新庄の姿勢やスキルは、チームメイトに刺激になると思ったからです。チームを強化し、優勝を目指すためには、絶対に必要な存在だと考えていました」
実際にバレンタイン氏&新庄のコンビは、契約寸前までいったが、土壇場で新庄から断わりの連絡が入ったという。
「残念ながら彼には断わられました。そのとき、彼がなんと言ったかは覚えていません」
新庄は日ハムで大活躍し、ブームを巻き起こしたが、彼がバレンタイン氏のもとでプレーする姿を日本で見たかったファンも多いだろう。
バレンタイン氏は、新庄を忘れられない選手の一人だと語るが、引退後に監督になることは「まったく想像していなかったし、考えもしなかったよ」と、苦笑いを浮かべた。
4月22日現在、日ハムは8勝14敗とパ・リーグ最下位に沈んでいる。ここまでは、派手な言動ばかり目立っており、采配は精彩を欠いている。
「それほど頻繁に試合を見ているわけではないので、監督としての評価は控えたい。ただ、彼のパフォーマンスについては、アメリカでも報じられていますよ。
就任時、『優勝は目指さない』との発言が問題視されたようですが、彼は優勝するためにはまだまだやるべきことがたくさんあると思ったのでしょう。チームが優勝を狙える水準に達していないと」
打順について、オープン戦では抽選で決めたり、開幕後も頻繁に組み替えていることに批判も集まっている。
「メジャーリーグでは162試合のなかで、多いところでは100通り以上の打順を試す球団もあります。ほとんどの球団は打順を固定していません。
打順というのは、すなわちチームがその日の試合で何ができるかを表現するもの。打順の組み替えは相手投手に対し、打者のパフォーマンスを最大化するためにおこない、勝利に不可欠な試みです。
もちろん十分な根拠や目的もなく、ただ打順を組み替えるというのは論外ですけどね。
新庄は打者の特長を見極めるために打順を組んでいるはずだから、彼の方針こそメジャー流です。投手起用にしても、初戦で本来はリリーフ投手の北山亘基に先発させたそうですが、新人監督だから、試行錯誤しながらそれぞれの投手の強みや弱点を確認したいのでしょう」
おおむね新監督に対して好意的な評価だが、自らを「BIGBOSS」と呼んだり、選手よりも目立つことに関してはどう感じているのだろうか。
「私は、野球は第一にエンタテインメントであるべきだと考えています。新庄は試合に娯楽性を与えている。ファンに野球を楽しんでもらううえで、彼のキャラクターはきわめて重要な役割を果たしていると思う。
だから、新庄には監督として切磋琢磨すると同時に、エンターティナーとして日本球界を変えてほしい。まだ結果は出ていませんが、彼はスロースターターなので、これから巻き返すと思いますよ」
勝利を重ね、日本そして世界の野球に革命を起こせるかーー。