ーー3人同時に相撲を始められたそうですね。
春 兄が小学4年。自分が小2で、弟が小1のとき。
景 そのときから、親父が「わんぱく相撲教室」で教えるようになったんです。実家はちゃんこ屋(福島市「ちゃんこ若葉山」)ですからね。お爺ちゃんが小結(若葉山)で、親父も相撲取り(元幕下・若信夫(わかしのぶ))という環境なので、自然とそうなったんだと思います。
春 なぜか自分だけが母親から「あなたはお相撲さんにならなきゃダメよ」って、ずっと言われてたんですよ。
景 親父の指導といっても、おもに基礎的な体力づくりが多かったよね。くま歩きやったり、うさぎ跳びとか。
春 くま歩きってね、四つん這いになって熊みたいに歩くんです。もちろん、テッポウ、すり足もやりましたけど。
景 すり足で思い出すのは、正月。気温はマイナス、雪の上、吹雪の中ですり足を延々やらされた。これはうちの親父じゃないんですけど、すごく気合の入ったコーチがいて。
春 あ、〇〇さんだ。
景 そうそう(笑)。あれで高熱出しちゃったやつとかいたからね。
春 今じゃコンプライアンス的にアウトかな(笑)。うちもけっこうスパルタだったからね。家のテレビで『あしたのジョー』とか『巨人の星』のビデオをずっと流してたね。
景 あれ、親父がどこかから借りてきてたんだろうね。だって、世代的には俺たち絶対違うから。でもその影響で、ああいうのが普通だと思うようになってたのかもしれない。
春 それが親父の作戦なんだよ。まんまとやられたわ(笑)。
ーー「大波三兄弟」といえば、やはり期待されるのは3人揃っての関取です。
春 期待されているのはわかっていますし、実現できれば嬉しいです。
景 もちろん、そうなればいいという思いはあります。
春 しかし、これは大波さんがどうというよりも自分のことが心配。自分の場合は、十両1場所で幕下に陥落というのを2回もやってますから。とにかく、自分が(幕下に)落ちないように頑張るだけですね。
景 自分も、とにかく自分の相撲を貫いていくだけです。優勝できたのも、その結果ですから。自分の相撲を信じて「一意専心」でいきます。
春 俺の場合は「頑張りすぎない」かな。いくら頑張っても、自分の力以上のものは出せませんから。ただ、持っている力は全部出し切りたい。
相撲界の三兄弟といえば、「井筒三兄弟」が有名だ。長男・鶴嶺山(かくれいざん)は元十両。次男・逆鉾(さかほこ)と三男・寺尾は元関脇だが、3人同時の関取はこれまでに例がない。大関候補となった若隆景。五月場所で自己最高位まで番付を上げてきた若元春。そして関取の座を目指す若隆元。刺激し合い、支え合う「三本の矢」で、いつか夢を掴む。
わかたかもと
長男・(本名・大波 渡)
1991年12月29日生まれ 183.2cm 124.5kg
わかもとはる
次男・(本名・大波 港)
1993年10月5日生まれ 185cm 139kg
わかたかかげ
三男(本名・大波 渥)
1994年12月6日生まれ 180cm 131kg
写真・高橋マナミ、共同通信
コーディネート・金本光弘
取材協力・「CAFE kichi」