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【緊急寄稿】大谷、鈴木誠也の成績にも影響…メジャー代理人が検証「2022年のメジャーはボールが飛ばない」の噂

スポーツ 投稿日:2022.05.25 20:10FLASH編集部

【緊急寄稿】大谷、鈴木誠也の成績にも影響…メジャー代理人が検証「2022年のメジャーはボールが飛ばない」の噂

5月24日、レンジャース戦の一回、三振に倒れた大谷(写真・時事通信)

 

「2022年シーズンのメジャーは、ボールが飛ばない」

 

 そんな噂がまことしやかに囁かれている。元メジャーリーグ通訳で、現MLB選手会公認代理人の小島一貴氏が、今期の本塁打数を調査。緊急レポートを寄稿してくれた。

 

 

 今シーズンはいまのところ、1試合あたり0.97本の本塁打が出ている。2021年は1.22本、2020年は1.28本。2019年は1試合当たり1.38本も出ていた。何よりも、前年比で0.25本、割合にして2割以上も減っていることが、本塁打が出にくいという実感に繋がっているだろう。

 

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 実際、報道によると、コロナ禍の影響で2021年は新旧のボール(飛ぶものと飛ばないもの)が混在していたが、2022年は2021年以降に製造されたもののみ供給されているとのことだ。各年度の1試合あたりの平均本塁打数は当然、増減があって、そこにはさまざまな要因が関係している。ただ、前年比で20%以上も減るというのは、ボールが変わっていることを裏づけるといえよう。

 

 とはいえ、一部では「MLB始まって以来の飛ばないボール」との声も聞かれたが、それは言い過ぎだろう。1試合あたりの平均本塁打数が1を切るのは、2014年の0.86本以来のことだ。もっとも2010~2014年の5年間は、2012年の1.02本を除けばいずれの年も1本に満たなかった。

 

 大谷翔平選手を始めとするスラッガーたちの本塁打量産ペースが、2021年よりも遅いと感じるのもやむを得ない。こういうとき、ボールが変わったと聞かされていなければ、力(りき)みなどに繋がりバッティングを崩してしまいがちだが、事前に知らされているのであまり影響はないはずだ。

 

 初年度となった鈴木誠也選手は、ちょうど飛ばないボールの年に当たってしまい不運だと思えるが、開幕から2カ月ほどがたち、ボールの飛び方の傾向も掴んできているのではないだろうか。5月は成績が下降してはいるがそれでも打率、本塁打数、OPS(出塁率+長打率。打者評価における指針のひとつ)はいずれもチーム3位。鈴木選手は、2022年のMLB全球団の新人の中でも打率7位、本塁打数3位、OPS5位である。

 

 ボールだけでなく投手や審判などにも慣れてくる夏場以降、さらなる活躍を期待したい。ちなみに異なるリーグで一概に比較はできないが、2021年のNPBでは「1試合平均の本塁打数」は0.84本だった。

 

 さて、ボールが飛ぶ飛ばないの話でいえば、アメリカ、特に中西部や西海岸の球場では、乾燥している日中のほうが気温の下がる夜よりもボールが飛ぶと言われている。ナイトゲームの日でも打撃練習は日中におこなわれるので、練習と試合では感覚が大きく異なる。

 

 私が2002年にテキサス・レンジャースで伊良部秀輝投手の通訳をしていたとき、チームメイトにアレックス・ロドリゲス選手(通算本塁打数歴代4位の696本)が在籍していた。あるナイトゲームで彼が打った瞬間に本塁打を確信しガッツポーズをしたが、失速してレフトフライになったことがあった。レンジャースの本拠地での試合だったが、あれほどの打者でも感覚がおかしくなってしまうことがあったのだ。こうした昼と夜の違いも踏まえてバッテリーがどのように打者を攻略しているのか、逆に打者がどういうアプローチをしているのか、注目してみるのもおもしろいと思う。

 

 2022年は飛ばないボールなので議論が巻き起こることはないかもしれないが、MLBでは幾度となく投手の安全について議論されている。飛ぶボールになると、ピッチャーライナーが危ないという議論だ。あるチームの投手コーチが「ルールを変更して、投手の前に防球ネットを設置するべき」とまじめに訴えていたこともあった。

 

 2020年の練習中のことだが、当時ニューヨーク・ヤンキース所属の田中将大投手の頭にライナーが直撃したシーンは記憶に新しい。アメリカでは、あるいは日本でも、本塁打がたくさん出たほうが試合が盛り上がるという傾向があるのだが、だからといってボールがどんどん飛ぶようにしようとはならない理由がここにある。

 

 ボールが飛ばなくなると打者が困り投手が助かると思えるのだが、必ずしもそうではない選手もいる。NPBでは2011年から統一球が導入されたが、特に2012年はボールが飛ばなかったと言われていながら、NPBは2013年6月までその事実を認めなかった。

 

 ボールが飛ばなくなっていることを知らされていないなかで、私が代理人として関与していたある外国人投手が脇腹を痛めてしまった。この投手はスライダーを武器にしていたのだが、2012年、どうも変化が鈍いように感じ、実際に痛打されることが多くなったので、曲げよう曲げようとしすぎてフォームを崩したのだという。2013年になり、後からボールの仕様変更を認められたことについて、「それならそのときに言ってくれよ」とこの投手は怒っていた。

 

 2022年、MLBでボールが飛ばなくなったことにより、多くの投手の成績が向上すると思われるが、その一方で変化球に影響が出て不振に陥る投手もいるかもしれない。

 

文・小島一貴 ※成績は日本時間5/24全試合終了時点

( SmartFLASH )

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