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大谷翔平 大物米国人記者2人が懸念する“隠れ疲労”…理想の打順は「二番トラウト、三番大谷」

スポーツ 投稿日:2022.06.11 06:00FLASH編集部

大谷翔平 大物米国人記者2人が懸念する“隠れ疲労”…理想の打順は「二番トラウト、三番大谷」

5月9日、レイズ戦で満塁本塁打を放ち、ナインに迎えられる大谷

 

 2021年、大谷翔平(27)は投手として9勝、打者として46本塁打を放つなど、ベーブ・ルース以来となる本格的な二刀流で結果を残し、アメリカンリーグ(以下ア・リーグ)の年間MVPに選出された。

 

 一方で、エンゼルスはア・リーグ西地区で77勝85敗の4位に沈んだ。7年連続でプレーオフ進出を逃し、大谷自身「勝ちたい」と、勝利に飢えたコメントを口にした。

 

 迎えた今季、投手としてここまで10試合に登板し、4勝4敗で防御率3.99。打者としては12本塁打でア・リーグ8位タイ。チームも6月9日時点でア・リーグ西地区で28勝31敗の2位につけている。

 

 

 そんな大谷とエンゼルスを現地メディアはどう見ているのか。長くMLBの取材を続ける大物記者2人にたっぷりと語り合ってもらった。

 

ーー今季のエンゼルスは昨季までと何が違うのか。

 

マイク・ディジオバンナ記者(以下MD) 先発ローテーションの一人であるパトリック・サンドバル(3勝1敗)がいいし、昨季デビューしたリード・デトマースが5月10日のレイズ戦でノーヒットノーランを記録するなどできすぎ。

 

レット・ボリンジャー記者(以下RB) 先発ではチームトップの5勝(2敗)とマイケル・ロレンゼンも安定している。4勝(3敗)のノア・シンダーガードは昔ほどの球威はないが、トミー・ジョン手術明けとは思えない。大谷もエースらしく、調子がよくない日でも試合を作れる。エンゼルスはここ10年、先発が弱点だったが、今季は6人のローテーションが機能している。

 

MD (MLBでは、先発投手5人を100球前後で降板させ、中4日でまわすローテーションが一般的だが)もともと6人のローテーションは、大谷への負担を考えてのものだが、ロレンゼンもシンダーガードも故障明け。いきなり中4日のフル回転は無理だけど、中5、6日なので、十分な回復時間があることに救われている部分があるだろう。

 

ーー打者では、テイラー・ウォード(打率.333、10本塁打)が嬉しい誤算で、彼が一番に固定されそう。となると大谷の理想の打順は? 開幕当初は一番だったが……。

 

MD 個人的に大谷の一番は、いいアイデアではないと思っていた(笑)。確かに打席はいちばん多くまわってくる。しかし、二番か三番がベストだと思う。一番なら初回に本塁打を打っても1点。二番か三番なら、走者を置いての打席が増える。大谷は、誰かが塁にいる状況で打席に立たせたい。

 

RB 八、九番が出塁できるチームならいいけどね。開幕当初、5打席のうちイニングの先頭打者として打席に立ったことが3回もあった。大谷が走者なしで打席に入るのは、やっぱりもったいないよ。

 

■大谷に選択権を与えてはいけない

 

 昨季は怪我で36試合の出場に終わったマイク・トラウトの復帰が打者・大谷の負担を軽減しているともいえる。MLB現役最高の選手ともいわれ、今季チームトップの14本塁打を放っている。

 

RB 去年のことを考えると、二番大谷、三番トラウトが理想。去年の後半、大谷がまともに勝負してもらえなかったのは、後ろにトラウトがいなかったから。

 

MD 個人的には二番トラウト、三番大谷がいい。アンソニー・レンドーンも復帰したし、ジャレッド・ウォルシュも悪くない。

 

 5月29日のブルージェイズ戦で2打席連続本塁打を放つなど、ここまで11本塁打の大谷だが、46本を放った昨季と比較すると、打者としては絶好調とはいいきれない。

 

RB 去年の前半が、とくにすごかったからね。それに比べればスロースタートに映るけど、まだ今後どうなるかわからない。そもそもリーグ全体で、オフェンスの数字が下がっている。飛ばないボールの影響もあるだろうしね。

 

MD 見逃し三振が多いことと、引っ張って内野ゴロになる打球が多いことは確か。疲れもあるだろうね。ユニバーサルDH(ナ・リーグでもDH制が導入された)や、ショーヘイ・オータニルール(投手として降板後、DHとして出場を続けられる)のおかげで、出場機会は増えるけど、逆に休むことができなくなった。ジョー・マドン監督は「ショーヘイに相談しながら休ませる」としているが、大谷が「疲れているので休みます」とは言わないと思う。だから、大谷に選択権を与えてはいけない。5月4日のボストンでのレッドソックスとの連戦では、延長戦になって夜11時過ぎまで塁上を走り回っていながら、翌日のデーゲームで先発して好投したけど、さすがに負担が大きい。知らず知らずのうちに、疲労は溜まっていくはずだよ。

 

RB 打つときに重心が一塁側に流れて、引っかける打球が多いけど徐々に修正されて、センターから左中間への打球も増えてきている。

 

 投手としては昨季9勝を挙げた大谷。初の二桁勝利も期待されるが……。

 

RB 今年はスプリットがまだよくない。ヒューストン(4月20日)ではよかったけど、テキサス(4月14日)で満塁ホームランを打たれたのはスプリットだった。でも、これでスプリットがよくなったら、投球の幅ができる。それが見えたのが、5月26日のブルージェイズ戦。腰を痛めて5点を取られて4勝めは逃したけど、スプリットがよく落ちていた。

 

MD 初回に腰を痛めたということだけど、6回まで投げ切った。今年は制球が悪くても、途中でアジャストして6回ぐらいまでは投げられる。軸になる球も、スプリットがダメならスライダー、スライダーがダメならフォーシームの球速を変えたりしながら対応している。

 

ーーそういえば今季、大谷はいつもよりも感情を表に出してプレーしていると思うが……。

 

MD 打てないときにバットを “心肺蘇生” したり、試合前はチームメイトとじゃれあったり、笑顔も多い。あとは、もう少し取材対応してくれたら、さらに嬉しいけどね。

 

 大谷がメディアに取材対応するのは登板日のみで、5月は1試合2本塁打、MLB通算100号を放った試合でも取材対応したものの、取材機会が少ないという声は日米のメディアから上がっている。

 

RB 試合前は二刀流の準備があるから、忙しいのは理解できる。でも試合後は、2~3分でいいから、話をしてくれるとありがたい。一般のスポーツファンも、彼には興味を持っているからね。

 

MD もう、MLBを代表する選手といっていい。去年1年で、彼を取り巻く環境はガラリと変わった。こっちもどこに住んでるの? とか個人的な話を聞きたいわけじゃない。彼のパーソナリティをもう少し知りたいね。野球への哲学とか。

 

ーー昨季、MVPに輝いたことで大谷の雰囲気などに違いがあるのだろうか。

 

RB クラブハウスでも、チームメイトたちとジョークを言い合ったり、大谷がいたずらを仕掛けたりしている。デビッド・フレッチャーやサンドバルとは、よく通訳なしで話をしたりしているようだ。ここ数年と比べれば、そういうシーンが多い。

 

MD やっぱり、チームが勝っていることは大きい。クラブハウスの雰囲気もまるで違う。去年の空気が今季も続いていたら、大谷がチームを去る可能性もあったけど、今はなんとしてでも、チームは彼を引き留めたいだろうからね。

 

マイク・ディジオバンナ記者

「LAタイムズ」に入社し36年。野球記者としては27年め。エンゼルスは1995年から取材し、一時期ドジャースの番記者も務めたが、現在はまたエンゼルスを担当。同紙のコラムニストも兼任

 

レット・ボリンジャー記者

MLB.COM」エンゼルス担当。2008~2010年、ドジャースとエンゼルスを担当。2011~2018年はツインズを担当し、2019年からエンゼルスの担当

 

写真・共同通信
取材&文・EIS

 

※成績は6月9日時点、日時は現地時間

 

( 週刊FLASH 2022年6月21日号 )

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