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MLBで外野手の凡ミスが多い理由は「芝」にあり…秋山翔吾、筒香嘉智も泣いた難しいボール処理

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.06.21 20:00 最終更新日:2022.06.22 11:40

MLBで外野手の凡ミスが多い理由は「芝」にあり…秋山翔吾、筒香嘉智も泣いた難しいボール処理

芝には秋山も戸惑った?(写真:AP/アフロ)

 

 6月20日(日本時間)のエンゼルスvs.マリナーズ戦は日本でも中継されていたが、この試合を終盤まで観ていた人は、マリナーズのセンターのフリオ・ロドリゲス選手のエラーを観て、あまりに稚拙なプレーだと思ったかもしれない。

 

 問題の場面は3-0とエンゼルスがリードしていた8回表、エンゼルスの攻撃でのこと。

 

 

 先頭のテイラー・ウォード選手が安打で出塁したものの、マイク・トラウト選手、大谷翔平選手が連続三振で二死一塁。ここで4番ジャレッド・ウォルシュ選手のカウント0-1から、一塁走者がスタート。

 

 ウォルシュ選手はセンター前にライナーを飛ばし、エンドランを決める。さらに、マリナーズのセンター、ロドリゲス選手が打球を捕り損なう間にウォード選手が一気に生還し、エンゼルスに4点めが入った。

 

 センターから走者が走っていたのは見えていただろうし、そこそこ強い打球だったので、早く三塁へ送球したかったのだろう。打球処理を焦ったあまりに捕球し損ね、ダメ押し点を奪われる痛いミスとなった。いったい何が起こったのか? 私が思うに、答えは外野の芝にある。

 

 MLB中継をよく観ている人ならご存じだと思うが、MLBの球場の外野の芝は、縞々だったり格子状だったり、ある程度規則正しい模様が入っている。それも、本塁方向から見て縞々や格子だったり、あるいはファウルラインから見てそうだったりと、さまざまである。

 

 客席から観るぶんにはとてもきれいで、ファンを楽しませるものだ。この模様はどうやって入れているかというと、芝の刈り方にある。縞々にしようと思ったら、最初の行では右から左に芝刈り機を進め、隣り合う次の行では逆に進める。格子状にするなら、さらに90度の角度で同じことをおこなう。要は芝の順目、逆目の向きの違いで、模様を表現しているのである。

 

 しかし、このきれいな芝の模様が、じつは外野手にとっては曲者なのである。アメリカの芝は強く、MLB各球場の芝は毛足が長いので、打球はかなり影響を受けるのだ。

 

 しかも、打球は芝の模様の幅に合わせてバウンドしてくれるわけではないので、たとえば右、右、左、右、など、不規則に向きを変えながら野手に迫ってくる。

 

 私がこれに気がついたのは、メジャーで通訳をしていたころのバッティング練習でのことだった。外野手と同じフィールドに立って打球を見て、初めて気がついた。テレビの画面越しではまずわからないが、実際に打球を処理する外野手にとってはかなり難しい打球になる。

 

 現在のMLBでは、トロント、タンパベイ、アリゾナ、テキサスを除く26球 団の本拠地が天然芝で、いずれも芝に模様を入れている。外野に飛んでくるほとんどのライナーやゴロのバウンドが、芝の影響を受けると考えていい。

 

 もちろん、MLBの外野手であればこれを言い訳にはできない。実際、上記のロドリゲス選手のプレーもエラーと判定されている。ただ、テレビで観るほど簡単なプレーではないというのも確かだ。少なくとも、外野の芝に模様の入っていない球場でゴロを処理するのと比べれば、格段に難易度が高くなる。

 

 なお、フリオ・ロドリゲス選手はドミニカ出身の弱冠21歳のルーキー。2021年8月の時点では、MLB全体のプロスペクト(将来有望な選手)のランキングで2位になっており、注目の若手選手だ。

 

 フライに対しては、足の速さを生かして好プレーもたびたび見せている。芝の模様に慣れてゴロの処理も上達すれば、今後、攻守に優れた名外野手になるかもしれない。

 

 じつはこの芝とバウンドの関係の話を、外野守備がうまいと言われていたある日本人選手に聞いたことがある。すると、日本でも縞模様の入っている天然芝の球場では、同じようなバウンドになるのだという。

 

 芝の種類が異なるのでどの程度似ているのかわからないが、天然芝のマツダスタジアムを本拠地にしていた鈴木誠也選手にとっては、それほど難しい適応ではなかったのかもしれない。逆に、人工芝の球場を本拠にしていた秋山翔吾選手や筒香嘉智選手にとっては、最初は戸惑いがあっただろう。

 

 MLB中継で、外野手がうまく捕球できないという場面を、日本のプロ野球以上によく目にする、という印象を抱いているファンの方も多いだろう。

 

 このような場面は野球の醍醐味のひとつであり、さあ本塁でクロスプレーかと思った瞬間に外野手がエラーしてしまうと、白けた雰囲気に包まれるのは確かだ。

 

 しかし、MLBでのそうしたミスのほとんどは、芝に模様が入っていなければ発生しないものだと思う。

 

文・小島一貴(元メジャーリーグ通訳、現MLB選手会公認代理人)

 

( SmartFLASH )

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