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DeNA石井琢朗コーチ、関わった球団すべて躍進の秘密は「試合前ミーティング」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.16 18:49 最終更新日:2022.09.16 18:56
2021年シーズンの横浜DeNAは、54勝73敗16分で首位ヤクルトから20ゲーム差をつけられ、最下位に沈んだ。
ところが今季は、一時首位ヤクルトに17.5ゲーム差をつけられながら、8月の快進撃で現在、5.5ゲーム差と2位を維持している。他チームに比べて選手の補強に特筆すべきものはなかったが、なぜここまで巻き返すことができたのか。横浜担当記者が解説する。
「もともと打線は12球団一といわれるほど強力だったし、今季は投手陣も先発、中継ぎ、抑えともに安定し、投打がかみ合っています。ですが、昨季ともっとも大きな違いは、新たに加わった石井豚朗野手総合コーチの存在です。彼が加わったことによって、野球の質が大きく変わりました」
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石井琢朗氏(52)といえば現役時代に横浜で不動のリードオフマンとして活躍し、1998年のリーグ優勝と日本一に貢献した。2006年には通算2000本安打を達成し、名球界入りを果たした。その後、広島で5年間プレーし、2013年からは広島で指導者としてスタート。その実績は凄まじい。
広島では現巨人のクリーンアップ・丸佳浩(33)、現MLBカブスの鈴木誠也(28)らを主力に育て上げ、黄金時代の構築をサポートした。2018年から2年間はヤクルトで村上宗隆(22)、塩見泰隆(29)を指導。2020年からも2年間、巨人で若手を鍛え上げた。
「現役時代、これだけの実績を残していますから、当然、監督就任要請の声がかかったこともあります。ですが、本人は指揮官というよりコーチに魅力を感じているらしく、引退後はコーチ一筋です。
その指導は選手にとことん寄り添うやり方で、早出特打で毎日のように選手と向き合っています。それは関わった球団すべてで変わらない。もちろん、選手やスタッフらとのコミュニケーションもばっちり取れています」
では、野球の質は具体的にどのように変わったのか?
「打線は3割20本塁打以上打てる選手が揃っていますが、ラミレス政権の “負の遺産” として、個々人の能力に頼った野球しかしてこなかったことがあります。
そこを石井コーチが変えたんです。打線は水物とよく言いますが、いい状態が長く続くとは限らない。そこで、つなぐ意識を徹底させ、各自が “考える野球” に取り組んでいます。主力でも進塁打、バントなど当たり前のようにやります。走塁も同様で、状況に応じて考え方を変えます。
また、試合前の石井コーチ主導のミーティングは毎日やっています。そこでコーチから選手たちに伝えられるのは、昨日の試合の反省点と今日の試合でやるべきこと。
そして必ず言われるのが、『意味ある凡打を打とう』ということです。打者はどんなに調子がよくても、打率は3割で4割に届かない。だからこそ『7割の失敗をチームに生かそう』ということを徹底しています。
なかでもユニークなのは、『見逃し三振も考えたうえでのことならいい』ということなんです。これは巨人時代にもやっていたことですが、原(辰徳)監督には消極的に映り、2人がぶつかった結果、2年めに石井コーチは3軍野手コーチに飛ばされてしまいました」
今もおこなわれている石井コーチによる試合前ミーティング。選手たちには大好評で、キャプテンの佐野恵太(28)もNHKのインタビューで、「きょうの戦いに向かっていくなかで練習前から確認することが、去年までなかったことだったので、大きい1つの要因」と指摘。そのうえで、「本当に楽しいですね。毎日、朝起きて球場に来るまでもワクワクしながら来ています」と笑みをこぼした。
主将のこの言葉こそ、コーチングが成功した証にほかならない。
よそから4番打者を根こそぎかき集めてパズルのようにスタメンを急造するのではなく、現在の選手一人ひとりに “考える野球” を浸透させる。個々人を有機的に連携させ、各自の底力を引き出す――。これぞまさに組織論の真髄だ。
残り試合数は20を切った。1998年以来となる24年ぶりのリーグ優勝に向け、選手たちのモチベーションは日に日に高まっている。
( SmartFLASH )