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専門医語る ダルビッシュを待ち受ける“リハビリ500日地獄”
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2015.03.19 13:00 最終更新日:2022.02.14 18:08
「うまくいっている」
――キャンプイン当初の笑顔から事態は一変した。剛腕最大の危機。ダルビッシュ有(28)に右肘内側側副靱帯の部分断裂が見つかった。
肘の靱帯断裂とはどのような損傷なのか。ダルビッシュの行く手にはどんな試練が待ち受けているのだろうか。楽天のキャンプドクターを務め、亀田総合病院(千葉)のスポーツ医学科部長代理・山田慎医師は次のように語る。
「靱帯損傷といいますが、多くの場合は慢性的なものです。子供のころから続けてきた投球によって肘にかかる負荷で靱帯が少しずつ骨を引きはがしてしまう。やがて靱帯に張りがなくなり、緩んでくる。さらに投げ続ければ、靱帯が切れることもあります」
靱帯損傷は肘の内側の痛みとコントロールや球速の低下を招く。だが、こうした不調はほかの原因で起こることも頻繁にあり、診断は非常に難しい。 ダルビッシュが受ける肘の靱帯再建手術は、1974年に初めて受けた投手にちなみ、「トミー・ジョン手術」(以下、TJ)と呼ばれる。
「TJの対象者は、手術をしない保存療法では効果がなく、ハイレベルでの復帰を目指すアスリートです。’74年当時の復帰率は1%。’90年代に70%、最近では90%にまで向上した」
ただし、これは手術を受けた患者全体の数字。メジャー級のアスリートとしての復帰という点では定かではない。メジャーで’13年に開幕ロースター入りした投手のうち34.4%がTJを経験している。日本では4.4%。アメリカのTJ偏重は明らかだ。さらに術後に過酷なリハビリが待つ。
「最初は安静。キャッチボールを始められるまでに4〜5カ月。70%の投球が5〜12カ月。12カ月が過ぎて肘の痛みや腫れがなければ、やっと全力投球が可能になります」
投手にとって「投げられない」ことはなによりもつらい。加えて筋力の衰えやチーム内競争への出遅れ、試合勘の鈍り、監督・コーチ陣の信頼感喪失、戦力外への恐怖・不安・焦燥感
――ダルビッシュは山本聖子&お腹の子供と新生活を始めたばかり。投げ出せない日々が続く。
(週刊FLASH 2015年3月31日号)