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MLBで急増する盗塁戦術 ベースサイズとけん制球数制限で高まる「スモールベースボール」日本人選手躍進の可能性
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.06.12 19:30 最終更新日:2023.06.12 19:30
現地時間6月7日の試合で大谷翔平選手が連続盗塁を決め、今季の盗塁数を9とした。この日2つめの盗塁は、日本人メジャーリーガー通算1000盗塁となるものだった。大谷選手自身は今季22盗塁ペースで、26盗塁を記録した2021年以来、2度めの20盗塁以上を記録しそうな勢いだ。
じつは、今シーズンのMLBでは、盗塁数が大きく増加しているが、これはシーズン開幕前から予測されていたことだった。理由のひとつは、ベースのサイズが大きくなったこと。これまで15インチ(38.10cm)だったベースの各辺が、それぞれ3インチ(7.62cm)大きくなった。ベースを大きくした理由のひとつは、走者と野手の交錯を減らすため、すなわち選手の安全確保だったようだが、塁間の距離が11.4cmほど近くなったことにより、間一髪のプレーがセーフになることが増えたといえよう。
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もうひとつの理由は、ピッチクロックとセットで導入された、けん制球の制限である。ランナーが出塁した場合、投手は1打席の間に2回までは牽制球を投げることができるが、3回めは走者をアウトにできなければ自動的にひとつの進塁を与えることになる、というものだ。試合時間の短縮を狙ったルール変更ではあるが、実質的に、1打席につき2回までしか、けん制できないことになってしまった。なお、走者が進塁した場合は、1打席の間であっても、けん制球の回数はリセットされる。
この結果、今シーズン、MLBの1試合当たりのチーム平均盗塁数は、0.72まで増加した。2022年は0.52、2021年は0.46である。それ以前の2016~20年の5年間は、0.52、0.52、0.51、0.47、0.49と、どちらかといえば減少傾向にあった。今季は前年比で約4割も増加しており、ルール変更が大きく影響していると考えていいだろう。参考までにNPBでは、2022年は0.53、2021年は0.50だった。
ここ数年のMLBにおいて、盗塁はいわゆる“弱者の戦術”であり、戦力的に劣っているチームが多用しているというイメージがあった。2019年は、盗塁数トップのレンジャースが地区3位ながら勝率5割に届かず、2番手のロイヤルズも地区4位で勝率5割を大きく下回った。短縮シーズンだった2020年こそ、盗塁数トップのパドレス、2位のマーリンズのいずれも地区2位だったものの、2021年になると、盗塁数トップ5のチームがすべて、勝率5割を下回っていた。2022年は盗塁数トップのレンジャースと2番手のマーリンズがともに地区4位に沈み、いずれも勝率は5割に届かなかった。
しかし、今季は盗塁数トップのレイズが激戦区のア・リーグ東地区で首位を走っており、2番手のパイレーツも開幕から好調でナ・リーグ中地区首位をキープしている。盗塁数3位タイのレッズとアスレティックスはともに勝率5割に届かないが、盗塁数5位のダイヤモンドバックスはナ・リーグ西地区首位。そして盗塁数6位のブルワーズはパイレーツに次ぐ2位である。ルール変更により、盗塁を効果的に用いているチームが首位争いに絡んでいる、といえそうな状況であり、盗塁は再び、勝つための有効な戦術に復活しつつあるようだ。
けん制球の回数制限やベースの大型化は、試合時間の短縮や選手の安全確保のほかに、盗塁の企図数を増やして、スリリングなプレーを増加させるという意図もあったといわれているが、その目論見はいまのところ、当たっているといっていいだろう。
近年、パワー重視の傾向がますます進んでいたMLBにおいて、今季は足の速い選手の活躍の場が再び広がりつつある。この傾向が続けば、スモールベースボールを得意とする日本人野手にとっても、MLBで活躍するチャンスが増えることになるかもしれない。
(文・小島一貴)
※成績はいずれも現地時間6月11日時点
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