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史上初「大関に3人同時昇進」あるぞ!花田虎上は「 “ずるい” 相撲が取れる豊昇龍が一番手」…元NHK好角アナと名古屋場所を語りつくす
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.07.11 06:00 最終更新日:2023.07.11 06:00
7月9日に初日を迎えた大相撲名古屋場所。大関昇進がかかる3関脇、迎え撃つ横綱、超スピード出世の新入幕力士など、見どころたっぷりの場所を、元横綱・若乃花の花田虎上氏(52)と、元NHKの名物アナ藤井康生氏(66)が、がっぷり四つで語り尽くす。
藤井 名古屋場所といえば、とにかく暑いわけですが、花田さんはどうだったんですか?
花田 自分は好きでした。気温が高いと体が柔らかくなるんで、怪我もしにくくなります。自分が大関昇進を決めたのも名古屋でした(1993年)。
藤井 今回の名古屋場所ですが、最大の注目はやはり……。
花田 もちろん、3関脇の大関昇進でしょうね。
藤井 では、ずばり聞きます。大関にいちばん近いのは?
花田 う~ん……。豊昇龍(24・ほうしょうりゅう)じゃないですか。
藤井 その理由は?
花田 言葉は悪いですけど、勝ちにこだわった “ずるい” 相撲が取れるんですよ、豊昇龍は。次に若元春(29・わかもとはる)、そして大栄翔(29・だいえいしょう)の順ですね。
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藤井 ここ2場所では大栄翔が22勝、ほかの2人が21勝。星の差ひとつですが、大栄翔が有利という見方もできます。
花田 大栄翔は押し相撲なので、波に乗れるといいけど、モロさもあるんですよね。
藤井 じつは私も同じで、やはり安定感というところで、大栄翔に不安を感じているんですよ。
■図々しい相撲が取れる新大関は二桁は勝てる
花田 とはいっても、いちばんいいのは3人が一緒に大関に上がることですよね。
藤井 もちろん。難しいとは思うんですが、史上初の3人同時昇進、見てみたいですよね。同時昇進といえば、お父さんの先代・貴ノ花も輪島と同時の大関昇進でしたね。じつはもう一人の関脇・魁傑(かいけつ)も大関昇進がかかっていたんですが、こっちは負け越してしまったんです。
花田 やはり、3人同時はなかなか……。
藤井 ですね。そして、新大関も注目の一人だったんですが・・・・・・。
花田 霧馬山(きりばやま)……じゃなくて霧島(27)。う~ん、やっぱりまだ慣れませんね。自分にとって霧島といえば、先代の霧島さんなので。
藤井 若乃花と霧島の対戦もたくさんありましたからね。
花田 はい。霧島については心配していなかったのですが・・・・・・。もっと力強さがほしいとは思うところはありますけど、普通に二桁は勝つと思っていましたからね。なので、初日前日に休場を届け出たのは残念でしたね。
藤井 何が変わって、大関に昇進できたのでしょうか?
花田 相撲は変わっていないんです。ただ、自分の相撲に自信がついたんだと思います。
藤井 とはいえ先場所、序盤は「らしくない」相撲が続きましたよね。
花田 4日目でしたっけ、取り直しも含めて2番続けて変化したことがあったじゃないですか。私はあれを見て「大丈夫だ」と思いましたよ。あそこまで図々しい相撲が取れるなら大丈夫だと。
藤井 図々しい(笑)。
花田 それくらい図々しくないと、大関まで上がれないですよ。
藤井 というと、花田さんも?
花田 私は自分のことをいたって普通だと思いますけどね(笑)。でも、自分以外で大関になった人、全員「変人」ですよ。横綱ともなると、さらに変人です。
藤井 横綱の話が出たところで、照ノ富士(31・てるのふじ)についても。場所前は、腰の状態が心配されていましたが。
花田 出場してくるなら大丈夫とみていいんじゃないですか。照ノ富士の場合、体のどこかの状態がよくなくても、あの体の大きさでカバーできますから。体が小さくて苦労した自分からすれば、うらやましいですよ。
藤井 先場所は「格の違い」を見せつけました。今場所も、やはり優勝争いの中心とみていいんでしょうね。
花田 怪我さえなければ、ですね。先場所は前半戦、勝ち負けは別として、土俵から落ちることがなかったので、優勝すると思いましたよ。
藤井 やはり、膝ですか?
花田 そうです。土俵から落ちると、下に足を着くことで、膝に大きな負担がかかる。前半戦でそれをやってしまうと、対戦相手が強くなる後半戦は苦しくなります。だから今場所も、前半戦に土俵から落ちる取組があるかどうかですよね。
藤井 今場所の番付を見て、おもしろいのは前頭四枚目に朝乃山(29)がいることだと思うんです。上位陣と当たりますし、なにより大関昇進を目指す3人にとっては……。
花田 「邪魔な存在」ですよね。でも気持ちで負けちゃだめなんです。番付は自分のほうが上なんだと。朝乃山に先に塩を撒かせるくらいの気持ちで行かないと負けますよ。
藤井 花田さんとは「Abema」で大相撲中継をご一緒させてもらっていますが、朝乃山に対しては厳しいですよね。
花田 なんだか、みんなやたら優しい目で見てるような気がしますけどね。もともと怪我で大関から落ちたわけじゃなくて、先場所もあれくらい勝って(12勝)当然ですから。
藤井 裏を返せば、それだけ朝乃山の力を認めていると。
花田 そうです。今場所も二桁は当然、優勝争いにも絡んでくる。それくらいやってくれないといけない存在です。
■有力なアマ力士がみんな宮城野部屋へ
藤井 それから、新入幕も3人います。豪ノ山(25)、湘南乃海(25)、そして落合改め伯桜鵬(19・はくおうほう)。
花田 湘南乃海は、兄弟子(元安芸乃島の高田川親方)の部屋なんですが、やはり注目は伯桜鵬でしょう。しかし、言いづらい四股名ですね…。
藤井 元白鵬の宮城野親方は「鵬」をつけますからね。
花田 白鵬がいて、現役には王鵬(23・おうほう)もいるし、ややこしい。それはいいとして、彼のよさは運動神経、持って生まれた身体能力の高さ。僕らの時代でいうと、琴錦さんみたいな感じですね。とにかく相撲がうまい。相手を見ながらフェイントをかけたりもしますから。
藤井 初土俵からまだ4場所めですよ。これからどんな相撲を取ったらいいんですかね。
花田 それは決めなくていいんです。「型」を決める必要はないですよ。よく「上に上がるには、型がないとだめだ」と言う人がいますが、それは体が大きい人の話。伯桜鵬、そんなに身長はないでしょう。
藤井 181センチですね。体重は162キロありますが。若乃花も自由というか、完全に四つ相撲ではなかったですよね。
花田 そうです。まずはどんな相撲でもいいから勝てばいいんです、プロの世界なので。それで上に上がって自信をつけて、そこから考えればいいんです。この形になったら負けない、みたいなのを。千代の富士さんの「前みつを取ったら負けない」みたいなね。
藤井 師匠の元白鵬、宮城野親方がどう教えるか気になりますね。
花田 師匠はスカウトで忙しいんじゃないですか(笑)。でも、引退したばかりの石浦(現・間垣親方)が部屋にいるので大丈夫でしょう。
藤井 お父さんは名門、鳥取城北高校の相撲部総監督ですから教えるのもうまそう。宮城野部屋には、前頭六枚目の北青鵬(21・ほくせいほう)や新十両の川副改め輝鵬(24・きほう)もいます。今後、有力なアマチュア力士が、みんな宮城野部屋に行くのではと危惧する声もあります。
花田 それは仕方ないことです。企業でたとえるなら、ほかの部屋は「営業努力が足りない」ってことだと思います。
藤井 これからの相撲界を考えたとき、やはりどれだけ若い人を引きつけられるか。
花田 女子プロゴルフでは、優勝賞金5000万円のトーナメントもあるんです。大相撲の優勝賞金は1000万円。5回優勝してやっと追いつく金額。お金がすべてじゃないけど、こういうことも考えないと。
藤井 お父さんの先代・貴ノ花はオリンピック候補に名前が挙がるほどの水泳選手でしたが、「水泳じゃメシが食えない」と、相撲界に入りました。千代の富士も、オリンピックにと期待された陸上選手でした。昔はお金が稼げるということで、そういう人たちが力士になりましたが、今はそういう時代じゃないですね。
■関脇3人の優勝決定巴戦で同時昇進が理想
花田 そこまで運動能力の高い人が入門しているかというと……。もっと外国の人からも「相撲をやったら稼げる」と、思わせるくらいにならないといけないと思います。
藤井 今は昔のような「怖い相撲部屋」というわけでもないですしね。
花田 あと、部屋選びってすごく大事だと思うんですよ。親方によって得意な相撲って違いますから。本当は四つ相撲が合う力士なのに、師匠が押し相撲しか教えられない。こういうことってあるので、事前にどんな親方なのかをしっかりリサーチするべきです。私もよく相談を受けますね。
藤井 さて、最後にもう一度、名古屋場所について。どんな結末を期待しますか?
花田 関脇の3人で優勝決定戦というのが、理想じゃないですか。そうすれば、3人同時昇進。
藤井 優勝決定巴戦ですか。となると、思い出すのは30年前……。
花田 横綱・曙と大関・貴ノ花、そして関脇だった私、若ノ花の3人ですね。私は曙に負けて優勝は逃したんですが、あの場所で大関に昇進したんです。名古屋では、そんな熱戦を楽しみにしています。
取材協力・CAFE kichi