2024年8月21日、カナダ、米国、メキシコで共催される2026年のワールドカップ・アジア最終予選で、日本と同じ組に入った中国が、代表メンバー27人を発表した。9月5日には、アウェーで日本と対戦する。
注目は2人のFWのアランとフェルナンジーニョで、とものブラジルから帰化した選手だ。アランはフルミネンセFC、フェルナンジーニョは “サッカーの神様” にして元日本代表監督のジーコが所属していたフラメンゴとあって、経歴は申し分ない。
また、DFにもイングランド出身の中国系ティアス・ブラウニング(蒋光太)もメンバー入りしており、中国以外にルーツを持つ選手が3人も名を連ねた。
もともとサッカー熱の高かった中国だが、中国代表がW杯に出場したのは、2002年の日韓共催大会の1回のみ。その後の予選ではことごとく日本や韓国、そして中東勢の後塵を拝してきた。
「そこで中国政府は、代表チームの強化として思い切った改革をおこないました。豊富な資金をもって、中国スーパーリーグ(CSL)に、欧米で現役で活躍する選手を大勢招き入れたのです。Jリーグ開幕当初の日本と同じ構図ですね。
これは、大物助っ人と一緒にプレーすることで、国内の選手の実力が上がることを期待してのものでした。2014年にブラジル代表の中心だったMFオスカーが弱冠26歳の若さで、上海上港に移籍したときは、世界のサッカー市場が驚きを隠せませんでした」(サッカー記者)
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ところが、この改革は失敗に終わる。たしかにクラブ単位ではアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)での活躍を見ても成功と言えたが、大物助っ人が多く加入したことで、中国選手のポジションは奪われ、むしろ中国代表の力は「落ちた」と言われたほどだった。
その後は中国スーパーリーグに属するクラブの資金難が相次ぎ、大物助っ人の加入は極端に減っていった。かわりに代表強化の策として導入されたのが、2019年ごろから始まった、帰化選手の代表入りだった。
「今回選ばれた3選手以外にも帰化選手は多くいて、予選を重ねるごとに増えるケースは十分ありえます。
ただし、こうした現状を中国のサッカーファンが受け入れているのかと言えば、そうでもないんです。国民からは、『帰化選手が多い中国代表は中国代表じゃない』と拒否反応を示されることも多い。この問題をどう解決していくかが、今後の課題です」(スポーツ記者)
しかし、「国民感情に目をつぶっても帰化選手を受け入れなければいけない問題がある」と、サッカー専門誌記者は語る。
「次回のW杯は出場国が32カ国から48カ国に増えましたが、これは『国際サッカー連盟(FIFA)の中国に対する忖度だ』と言われています。FIFAとしては、どうしてもW杯に中国が出てほしいから出場枠を広げたと。
じつは、カタールW杯では、中国企業が世界トップの14億ドル(約1900億円)を出資したと言われています。中国がカタールW杯に出ていないにもかかわらずです。それでもこれだけのお金を出してくれた。FIFAとすれば、中国は、今や世界一のビジネスパートナーでもあるわけです。もし次回のW杯に中国が出場できれば、さらに出資額が増えることは目に見えています。だから、どうしても出場してほしいわけです」
また、中国としても「是が非でも出なければいけない理由がある」と続ける。
「じつは、習近平国家主席が大のサッカー好きなんです。中国で重要政策を決める全人代(全国人民代表大会)の会議で、サッカー代表チームの低迷が議題にあがったこともあり、それくらい中国代表の低迷を心配しています。
2011年に北京を訪れていた韓国の民主党党首・孫鶴圭(ソン・ハッキュ)とサッカー談義をした際は、『中国がFIFAワールドカップに出場する、FIFAワールドカップを開催する、FIFAワールドカップで優勝する、これが私の3つの夢である』と語っています。中国サッカー協会のみならず、政府としても、なにがなんでも次回のW杯には出なければいけないんです」
国民が反対しても、勝つために帰化選手は必要だろう。もしかしたらイレブンの半数以上が帰化選手になるときがやってくるかもしれない。
( SmartFLASH )