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【阪神・淡路大震災から30年】元オリックスコーチ・新井宏昌氏が感動した“被災直後”キャンプ初日の選手たちのプロ意識

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2025.01.16 06:00 最終更新日:2025.01.16 06:00

【阪神・淡路大震災から30年】元オリックスコーチ・新井宏昌氏が感動した“被災直後”キャンプ初日の選手たちのプロ意識

新井宏昌さん(写真・共同通信)

 

 阪神・淡路大震災の当日、オリックス・ブルーウェーブの打撃コーチだった新井宏昌氏は、自宅寝室で巨大地震を迎えた。

 

「私の自宅は大阪なんですが、あの瞬間、地球がどうにかなったのかと思いました。一軒家でしたが、下から突き上げる感じで。現役時代やコーチとなってからも、地方のいろんな場所で地震は経験してきましたが、それらとはまったく違っていました」

 

 

 幸いにも大きな余震は来ず、自宅が倒れることはなかった。また、大阪も大きな被害を受けたが、神戸に比べてインフラの部分では「まだましでした」と気づいた。

 

「神戸ではすべてが止まっていたようですが、(自分は)大阪に住んでいたので電気、ガスは大丈夫でした。すぐにニュースとかは見られたんですが、それが逆に、ショックを大きくしました。私は自宅からグリーンスタジアム神戸(当時)に通うとき、阪神高速を使っていたんです。その巨大な阪神高速が倒れていたので、『これはとんでもないことが起きた』と思いました」

 

 自宅は、玄関ドアが引っかかる程度で、大きな損傷はなかったという。

 

「家族も家も無事で、ひと安心しましたが、次に考えたのは野球のこと。キャンプは2月1日からですからね。時間的にも難しいのでは、と思いました」

 

 地震の前年である1994年は、仰木彬新監督のもと2位と健闘した。さらに新井氏が名づけ親となり、一緒に“振り子打法”を完成させたイチローが、210安打と大ブレイク。それだけに、1995年シーズンは覇権奪回に燃えていた。

 

「私は、コーチとしてスタッフの一員でしたので、宮古島のキャンプに全員がそろえるのか、といった心配がまずありました。なので、球団や仰木監督から『行ける者だけ宮古島に別々で行こう』と言われたわけです。被災したコーチ、選手のなかには、自宅には住めないから実家に戻っている方もおられた。なので、それぞれのところから宮古島には行ける人だけ、ということになったんです」

 

 ところがそんな心配はよそに、2月1日、宮古島キャンプには選手全員が顔をそろえた。それだけでも喜ばしいことだったが、キャンプ初日の選手の動きを見て、感動すら覚えたという。

 

「キャッチボールやシートノックでの、みんなの肩のでき上がりや動きがとてもすばらしかったんです。本当に驚きました。

 

 あれだけひどい震災にあったんですから、練習だってそんなにできていないはす。限られた時間、環境のなかで体を作るように努力していたんですね。これこそプロだと感じました。なんてすごい選手たちなんだ、と。『これはもしかしたら優勝も……』と感じました」

 

 1995年、オリックスは「がんばろう神戸」を合言葉に、邁進した。

 

「じつは震災前、そこまでグリーンスタジアムが満員になることはなかったんです。ところが、被災している方たちが多いなか、連日、多くのお客さんがスタジアムにつめかけ、ほぼ満員の状態でプレーできたわけです。自分たちの生活がたいへんなのに選手を応援してくれたことに、すごく暖かい気持ちになりました。

 

 選手たちは追い込まれていたと思うんですが、何か違う力が伝わったと思います。パ・リーグ制覇も、神戸の人たちの力が選手に加わったと思います。それと、キャンプ初日に見せた選手たちの動き。あの意気込みも、優勝への大きな原動力になったんじゃないでしょうか」

 

 奇跡のパ・リーグ制覇から30年が経とうとしている。

 

「震災のことは、決して忘れることはないですね。もう日本に住むのをやめようかな、と思ったくらいです(笑)。日本にいる限り、地震が追いかけてくるというか……。

 

 私は、被災するまで、『東京は地震が多いけど、関西には大きな地震がくることはない』と思っていたので、地震に備えるということはいっさいなかったんです。でも、あれを経験してからは、子どもたちも防災グッズをそろえているようです」

 

 新井氏は“節目”を迎え、「もうひとつ、思うところがある」と続ける。

 

「震災から30年めの2025年、一緒にかかわったイチローの、アメリカ野球殿堂入りの発表があるんですよね。満票が期待される? まあどうなるか分かりませんが、殿堂入りは間違いないと思います。私は、それだけでもとんでもないできごとだと思います。日本人選手がアメリカの野球殿堂入りするなんて、考えた人も、思った人もいないと思います。

 

 とにかく、イチローとは震災を一緒に経験し、しかも30年めという節目の年に殿堂入りの発表がある。イチロー選手にかかわったということも、震災のことも含めて、あの日を思い出しますね」

 

 メジャーリーグの殿堂入り発表は、阪神・淡路大震災から5日後の日本時間1月22日におこなわれる。

( SmartFLASH )

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