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ザスパ群馬次期社長・細貝萌 元日本代表が「経営に興味を持った」きっかけの3冊「僕も“変革のプロセス”を」【アスリート「座右の書」】

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記事投稿日:2025.03.01 06:00 最終更新日:2025.03.01 06:00
出典元: 週刊FLASH 2025年3月11日号
著者: 『FLASH』編集部
ザスパ群馬次期社長・細貝萌 元日本代表が「経営に興味を持った」きっかけの3冊「僕も“変革のプロセス”を」【アスリート「座右の書」】

2025年4月にザスパ群馬の社長に就任する予定(写真・保坂駱駝)

 

「この一冊で、壁を乗り越えられた」――。強い体とメンタルを兼ね備えたアスリートたちに「座右の一冊」を聞いた!

 

 サッカー元日本代表で、ザスパ群馬次期社長(現在は社長代行兼GM)の細貝萌(はじめ)は、サッカー界屈指の読書家だ。

 

 

「前橋の自宅と千葉に建てた家に、数百冊ぐらいはあるのかな。車のトランクにも6、7冊は入っていて、すきま時間に並行して読んでいます。“積ん読”本もだいぶ含まれますけど(笑)」

 

 と、スマホで撮った自宅の書棚や、読了後に必ずつけるという蔵書リストを見せてくれた。

 

「浦和レッズ時代(2005~2010年)はほとんど読まなかったんですが、2011年にドイツへ行ってからは、本が手放せなくなりました」

 

 小説は読まないという細貝だが、今回、あげたのはいずれも寓話的要素のあるビジネス書。まずは、世界で2800万部も売れた『チーズはどこへ消えた?』(スペンサー・ジョンソン著、扶桑社)。小人とネズミが見つけた大量のチーズが、忽然と消えた。賢いはずの小人はその場にしがみつくが、本能で動くネズミは、次の場を求めて走り出す――。

 

「物語自体はすごく短いのに、状況の変化にふだんから自分がどう対応していけるのか、しっかり考えることのできる一冊。原著も持っています」

 

 同書の原題を、流暢な英語でサラリと口にした。20年もの現役生活の半分が、ドイツの名門バイエル・レバークーゼンなど、海外クラブだった。

 

「最初は言葉を話せないので、やっぱり孤立しがちなんです。長時間のバス移動中も、ついケータイをいじったり、映画を観たりしがちですが、ドイツではスポーツマネジメントの教科書を開いている選手もいました。影響されましたね」

 

 2024年に現役を退き、最後の所属先だった故郷のザスパ群馬で社長代行の任に就いた。

 

「実績のある選手は、みんな監督を目指しますが、僕はまったく向いてないと思うから、考えたこともありません(笑)。監督ではなく、よりチームを包括的に見られる『経営』に興味を持ったのは、組織論として読める『カモメになったペンギン』(ジョン・P・コッター、ホルガー・ラスゲバー著、ダイヤモンド社)の影響かもしれません。氷山が溶けてすみかを追われたペンギンたちが、『8段階の変革プロセス』にのっとって移住計画を立てるんです。ザスパも2025年、J3に降格してしまいましたし、僕も“変革のプロセス”を遂行しなければならないと思っています」

 

 そして、最後に推すのが『Good Luck』(アレックス・ロビラ、フェルナンド・トリアス・デ・ベス著、ポプラ社)。2人の騎士が、森のなかで年に1度生える、幸せを呼ぶ「魔法のクローバー」を探す話だ。

 

「単なる『運』は偶然にすぎず、『幸運』は自ら作り出す、というのがメッセージ。幸運をつかむには、環境を整えることや、自分でしっかり準備する努力も関わってくるんです」

 

 同書を開きながら、不敵にほほ笑んだ細貝。ザスパを再びJ2に昇格させ、やがてはJ1に――。そんな心の準備が、すでにできているのかもしれない。

 

■サッカー選手の読書遍歴を大調査! 久保建英は難解なサッカー学術書を

 

 細貝もそうだが、長谷部誠中田英寿ら日本代表・海外雄飛組の多くは現役時に自著を出し、それらはサッカーファンのみならず、後進のJリーガーたちにも必読書となっている。

 

 そんななかで自叙伝を著わしていないのが、本田圭佑だ。その読書傾向は、ほかの選手と一線を画する。アナキスト人類学者の、革新的で重厚な経済史書『負債論』(グレーバー、以文社)を読んだ、と自身のXで報告。いまもブータンのクラブに籍を置く現役選手だが、実業家としても活躍の幅を広げている。

 

 ラ・リーガで大活躍中の久保建英(たけふさ)も、難解なサッカー学術書『スタジアムの神と悪魔』(ガレアーノ、木星社)を読んでいることを「東スポ」が報じている。

 

 一方で、2024年末にポーランドの名門に完全移籍した森下龍矢(りょうや)は、東野圭吾を皮切りに逢坂(あいさか)冬馬の『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)に行き着くほどミステリーを耽読。前所属の名古屋グランパスのサイトでもその読書家ぶりを「意外」だとイジられていた。

 

 また、ポルトガルで思うような結果を出せなかった現・鹿島アントラーズの三竿健斗は、失意の帰国中、機内で妻に渡された『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子、幻冬舎)に救いを得たと語る。

 

取材/文・鈴木隆祐
※記事中一部敬称略

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