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「さもないと日本は地に落ちたまま」IOC会長に初めて日本人がなる可能性を“長野五輪を呼んだ男”が力説

3月3日、キーウで取材に応じる渡辺守成氏(写真・共同通信)
3月9日、小誌「Smart FLASH」では「日本人がIOC(国際オリンピック委員会)会長に!?」と題する記事を掲載。そのなかで、五輪アナリストの春日良一氏は国際体操連盟(FIG)の渡辺守成会長がIOC会長に選出される可能性を語った。
今回も春日氏が、別の視点からその根拠を力説する。
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「東京五輪が開催される予定だった2020年はコロナ禍もあり、五輪史上初となる1年間の延期となりました。それでも世論は『五輪より人命が先だろ!』といった論調で延期にも懐疑的でした。
ただ、実際に開催してみたら、選手や大会関係者、ボランティアの方々の尽力もあり、無観客ながら大いに盛り上がりました。競技によっては視聴率が60%を超え、総じて『開催してよかった』という意見が多く聞かれました。IOCからも『日本だからこそ開催できた』といった賞賛の言葉をいただきました」
ところが1年後に起こったある事件によって、その評価は一変する。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の元理事が、大会スポンサー企業から賄賂を受け取ったとして、2022年8月17日に東京地検特捜部に逮捕されたのだ。
「1964年に初めて日本で行われた東京五輪から2021年の東京五輪まで、日本では冬季五輪を札幌、長野の2つの地で開催し、成功を収めました。しかも、誘致から開催まで、『日本の運営能力は信頼できる』との評価もいただいていたんです。ところが東京五輪汚職事件によって、これまでの評価がすべて崩れ去ってしまった。さらに悪いことに、汚職の当事者は反省の弁もなかった。逮捕、釈放後も同様でした。日本オリンピック委員会(JOC)もけじめをつけさせなかったから、結局、東京五輪が悪者にされてしまったのです」
それから日本は一気に坂道を転げ落ちていった。冬季五輪で有力な候補地だった札幌は、招致目標を2030年から2034年にして、その間に日本の人々の五輪への信頼を回復しようと目論んだが、IOCは2030年と2034年の開催地を同時に決定する方針を明らかにし、プレゼンする以前に自ら降りるしかなくなった。
「このイメージダウンは非常に大きく、現状、IOCは日本が言うことを何も聞いてくれないでしょう。一方、日本国民にとって、『五輪はもういい』という感情が先に来るはずです。
そんな逆風のなか、渡辺さんが手を上げてくれた。彼は『五輪はスポーツ関係者だけのものじゃない。皆に理解される五輪にならなきゃいけない』という理想を持っています。もし会長選に勝利すれば、IOC会長として理想を発信でき、一度地に落ちた世界のスポーツ界での日本の信頼を回復させるきっかけになるはずです。だからこそ会長選に勝ってほしい。さもないと日本は地に落ちたままです」
区切りとなる第十代IOC会長を決める選挙は、五輪発祥の地・ギリシャで3月20日(現地時間)に行われる。