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「最初の反物に個性が出る」落語家・三遊亭圓雀、力士たちの粋な“浴衣コレクション”を大公開!

落語家・三遊亭圓雀(写真・長谷川 新)
2025年3月9日に初日を迎えた大相撲・大阪場所。火花飛び散る取組だけではなく、土俵外の“おしゃれ番付”を見るのも、相撲の楽しみのひとつだ。
「夏季に力士が着る粋な浴衣は、いろいろな柄があって見るのが楽しいんです」
そう語るのは、力士浴衣のコレクターで落語家の三遊亭圓雀師匠だ。
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「きっかけは、安芸乃島関が引退して年寄・藤島を襲名したときに作られた反物をいただいたことなんです。20年以上前ですね。この色合い、柄のよさに心を奪われ、浴衣を仕立ててから、すっかりハマってしまいました」
とはいえ、角界にツテがあるわけではない圓雀師匠。ありとあらゆる知り合いに「なんとか手に入らないか」と声をかけまくったという。
「反物を作れる力士は、関取だけ。ほかにも、相撲部屋で作ったり、夏の時期にしつらえて交換したり、後援者に贈ったり。外部の人間が入手するのは、なかなか大変なんです。とにかく『ください、ください』と、いろいろな方に頭を下げ続けました(笑)」
そうしてコツコツと集めた反物で仕立てた浴衣は、なんと146枚。ほかにもダボシャツ67枚、アロハシャツ14枚を作製。それ以外にも、反物を使ったカバンなどを作っているという。
今回、圓雀師匠が披露してくれたのは、現役幕内力士を中心としたコレクションの一部だ。
「私が特に注目して集めているのが、幕内に昇進して最初に作る反物なんです。やはりまだ遠慮がちというか、柄とか色合いとかも、あっさりとしたシンプルなものが多いんですよ。それがだんだんと、凝った個性的なものになっていくわけですね」
プライベートでも親交があり、のぼり旗を贈る間柄でもある前頭三枚目・翔猿関の反物は、最初のものからすべてコンプリートしているという。
「これは落語の世界でも同じなんですが、本来は自分の名ではなく、人からもらってその方の名が入ったものを着るのが“粋”だとされていたんです。しかし、最近は自分の名前が染め抜かれた浴衣を着る力士が多くなっています。
柄では、“勝ち虫”といわれるトンボや、縁起物のひょうたんなどが多いです。“綱”の柄を入れていいのは横綱だけ、といった暗黙のルールもあるそうです」
こうした相撲との縁から、圓雀師匠は「落語大相撲」と題するイベントを定期的に開催している。
「落語には『阿武松(おうのまつ)』という、江戸時代の横綱を題材にした有名な噺があり、歴史的にも縁が深いんです。これまでの縁に感謝して、少しでも相撲に親しむ人が増えてくれたらいいと思っています」
新横綱の二場所連続優勝に期待がかかる今場所、服装にも注目かも。
さんゆうていえんじゃく
1966年生まれ、埼玉県草加市出身。1987年、三遊亭小遊三に入門。2001年、真打に昇進。2018年、春馬改め、六代目圓雀を襲名。「上手い!と言われる噺家より、面白い!と言われる噺家でありたい」がモットー