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「佐々木朗希の穴をどうする?」ロッテ・吉井監督が明かした「ペナントレースのキーとなる」2人の投手の名前

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記事投稿日:2025.03.26 17:23 最終更新日:2025.03.26 18:08
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
「佐々木朗希の穴をどうする?」ロッテ・吉井監督が明かした「ペナントレースのキーとなる」2人の投手の名前

就任3年めで優勝を狙う千葉ロッテ・吉井理人監督

 

“令和の怪物”佐々木朗希MLB移籍は、昨オフの日米プロ野球界で最大の注目を集めた。メジャー20球団以上が加わったとされる争奪戦の末、昨季WS覇者のドジャースが佐々木を獲得。佐々木は早くも先発ローテーション入りし、日本での開幕第2戦に先発。3回1失点と好投した。

 

 一方、怪物を送り出した千葉ロッテは、昨季10勝をあげCS進出の原動力となった佐々木が抜けた穴をどう埋めるのか。就任3年めとなる吉井理人(まさと)監督に、今季の戦い方、そして選手の「気づき」を重視する独自の指導論を聞いた。

 

 

佐々木朗希が抜けた穴をどうするか

 

 日米の野球ファンが注目した佐々木のメジャー初登板については、「立ち上がりから非常に気合が入っているな、という印象でした。朗希本人は決して納得していないと思いますが、いい投球だったと思います」(以下、「」は吉井監督)と感想を教えてくれた。

 

 

 その佐々木を失ったダメージは、大きいのではないかーー。しかし、吉井監督は意外にも「気にしていない」という。続けて、「もちろん、ローテーションを考えてみて、やっぱり朗希の力は大きかったなと感じています。でも野球チームは毎年、変化があるものなので、気持ちとしてはなんとも思っていません」とサラリ。そして、現戦力についてはこう自信を見せる。

 

「この2年と違って、野手のルーキーに生きのいい選手が入ってきた。チーム内の競争は激しくなりました。よそと比べてどうかはわからないですけど、チームの中では少しずつレベルが上がっていると思います」

 

 ペナントレースのなかでキーパーソンとなり得るのは誰か。吉井監督はまず投手として、ともに20代後半の種市篤暉と小島和哉の名をあげ、「2人とも、かなりのレベルまで来ている。でも、エースと呼ばれるためには、もっともっと上を目指してほしい」と発破をかける。野手については、「頼りにしている選手は、35歳以上のベテランも多い」としながらも、ルーキーの西川史礁(みしょう)と2023年ドラフト1位の上田希由翔(きゅうと)の若手に言及した。

 

 シーズン中のポイントについてはこう語る。

 

「ここ数年のマリーンズは、6月に調子を落としています。そこからいったん持ち直しても、8月後半から9月にまた下降する。その波をできるだけ少なくして、8月終わりから9月に絶好調になるようにもっていきたい。強いチームはそれができる。メジャーを見ていても、強いチームは夏場以降にめちゃくちゃ強い。残念ながら2024年までのマリーンズは、シーズン終盤に勢いが衰えがちなので、そこを何とか変えたいと思います」

 

自ら培ったコーチングの「哲学」とは?

 

 吉井監督といえば、投手コーチを10年以上務めた経験があり、名伯楽と呼ばれた。コーチと監督の違いをどのように感じているのだろうか。

 

「仕事内容がぜんぜん違います。投手コーチのときは、ピッチャーのことを考えて、彼らのパフォーマンスを上げることを第一としていましたが、監督になるといろいろな選手を見なきゃいけないですし、決めることが仕事なので、決断する機会が圧倒的に多いです」

 

 コーチを始めた当初、「コーチングについての信念をあまり持っていなかった」と振り返る。転機となったのは2014〜2015年、筑波大学大学院で学んだことだった。

 

「コーチングの勉強をしました。といってもコーチングの方法ではなく、さまざまな競技の指導者たちがどういうアプローチをしているかとか、あるいは心理の勉強をしたりしました。その結果、コーチングの芯のようなもの、哲学というべきものを得ることができました。それは、迷ったときに立ち返るところになっています。その哲学とは、やはり『気づき』。選手自身に気づかせることが、指導の基本ではないかと思っています。

 

 ピッチャーに対してずっと実践しているのが、自分のパフォーマンスの振り返りです。コーチが『今日はこうだったぞ』と指摘するのではなくて、選手自らが振り返り、『気づき』を得るという方法です。2025年からは、この振り返りを野手にもやってもらいます」

 

理想のリーダー像

 

 そのような選手育成方針を掲げる吉井監督にとって、理想のリーダーは「ちょっと、おっちょこちょいくらいのほうがいい」という。「いい意味で、ボビー・バレンタイン監督のように、記者の誘導尋問に引っかかって自分で怒っている、みたいな(笑)。そういう人間味のある人のほうが、私は魅力を感じますね」。

 

 ヤクルト時代は、名将・野村克也氏の薫陶を受けた。

 

「いまでも野村監督の本を監督室に置いていて、迷ったら読んでいます。野球をよく研究していた方が書いたものなので、わからなくなったらなんでも答えが載っている、参考書のような感じです。でも、書いてあることをそのまま実践するのではなくて、自分なりにアレンジするのが大事だと思っています」

 

 最近もピッチャーの配球について発見があったようだ。

 

「近年の先発投手は、打順の3回りめに手詰まりになることが多い。野村監督の本では、1巡めはまっすぐ中心で投手の気分がよくなるような配球をし、2巡めはそれを逆に、3巡めはミックスする、と書かれていた。それはそうだなぁ、と気づかされました。ほかにもいくつかありましたよ」

 

 野村氏といえば、独自の人生教育をまじえたミーティングで有名だった。「あれは現役時代、ちょっと苦痛でした(笑)。3時間くらいしゃべっていましたから(笑)」と振り返るが、自身は「3分くらいのクイックミーティング」をおこなうという。では、その短時間で、どのようなことを選手たちに伝えているのだろうか。

 

「だいたいは、モチベーションを上げる話です。何か、たとえ話をして、『みんなでがんばろう!』という形で締める。映画やドラマからセリフを引用させてもらうこともあります。大河ドラマの『真田丸』で、草刈正雄さんが演じていた真田昌幸の決めゼリフ、『おのおの、抜かりなく』にも共感しました。でも、選手・スタッフ全員が集まったミーティングでそのセリフを使ったら、みんなポカンとしていて(笑)。『負ける気がしない。おのおの、抜かりなく』って言ったんですけど。結局、3連敗しました。まあ、ミーティングでは、けっこう滑っています」

 

 選手時代に影響を受けた指導者として、上記のバレンタイン氏、野村氏とともに、仰木彬氏、権藤博氏、ボブ・アポダカ氏(メッツ時代の投手コーチ)の5名をあげることが多かった。最近はそこに、日本代表を率いたあの人も加わったという。

 

「栗山英樹さんです。正直なところ、日本ハムの投手コーチのころは、ちょっと面倒くさいことを言ってくる監督だなと思っていました(笑)。でも、2023年の第5回WBCで私が投手コーチを務めたとき、栗山さんを見ていて、勝つためには何でもするという強い気持ちに感心しました。監督はそれくらい信念を持ってやらないといけないのだな、と気づかされたんです」

 

 また、メジャーの経験は大きかったようだ。アポダカコーチの言葉は衝撃的だったという。

 

「最初にメジャーのキャンプに参加したとき、『お前のことをいちばん知っているのはお前自身だ。だから話し合って決めよう』みたいなことを言われました。じつは、日本ではそんなことを言われたことがなかった。いまでこそ日本でも、そういう考え方が浸透しつつありますけどね。当時は指導者になるつもりはまったくなかったのですが、あの経験があったから、なんとか指導者としてやっていけているのだと思います」

 

そばで見てきたダルビッシュ、大谷、佐々木

 

 いま、メジャーで大活躍するダルビッシュ有、大谷翔平とは、投手コーチとして接してきた。そして、コーチ、監督として育ててきた佐々木も渡米。彼らには何か共通するものがあるのだろうか。

 

朗希はこれからなので、まだわからないですけど、でも彼らには似たところがあるかな。ダルビッシュも大谷も朗希も、野球に対する好奇心がすごく強くて、それが向上心につながっているのだと思います。そのあたりは3人とも共通していると感じています」

 

 大谷については、とくに投球の面で伸びしろがあると感じている。

 

「大谷は、もともとバッティングは本当にすごかったので、それについてはアメリカでも十分、できるだろうなと。ピッチングはまだアメリカに行ってからほとんどフルにはできていないので、これからだと思います」

 

野球界と一般社会の共通点

 

 人材育成において、野球界も一般社会も考え方は同じだと吉井監督は語る。

 

「野球界は昔から、やるべきことを率先してやるような選手を育ててきたので、そういう選手はすでにたくさんいます。でも、やるべきことの中身を自分で考えて、責任をもって行動する選手をあまり育ててこなかった。

 

 社会でも、昔は(マニュアルのように)決まっていることを率先してやる人がすごく役に立ったらしいですが、いまはそうではなくて、自分で考えて行動できる人が通用すると言われていますよね。これは野球界でも一緒だと思うんです。そういう選手をたくさん育てたいと思っています。自分で考えて行動してほしい、という思いを込め、『主体性』という言葉をよく使っています」

 

 主体的に考え、責任をもって行動する。そんな選手が増えつつあるマリーンズ。2025年はさらなる飛躍を期待できそうだ。

 

(取材・文/小島一貴)

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