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不調者続出でもMLBが2度めの「日本開幕」を狙う理由…「大谷効果」でファンも若年化の好影響

開幕戦の大谷翔平(写真・桑原靖)
絶好調のドジャースに、昨季、サイ・ヤング賞を獲得したクリス・セールも脱帽だろう。5回裏まではさすがの投球を見せていたが、1点を追う6回裏、先頭バッターの大谷翔平が追い込まれながら苦手なセール投手からライト前ヒットでチャンスを演出すると、続くベッツ遊撃手がレフトスタンドへツーランホームラン。あっという間の逆転劇にセールも呆然とするしかなかった。
この勝利で開幕からの連勝は7に伸びたが、7連勝したのは本拠地がブルックリンにあった1955年の開幕10連勝以来70年ぶりで、1958年に本拠地が現在のロサンゼルスに移ってからは初めてのことだ。
また、前シーズンにワールドシリーズ(WS)を制し、連覇を狙うチームの開幕からの連勝記録である1933年のヤンキースの7連勝に並んだ。今季のWS制覇の大本命が、この上ないスタートを切ったことになる。
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もっともド軍のコンディションは、7連勝に匹敵するほど良好のものではない。一足早く日本で迎えた開幕は、思いのほかチームにダメージを与えていた。
米国から日本への長時間の移動、時差は16時間。コンディションを崩す選手が続出した。ベッツ遊撃手とキケ・ヘルナンデス内野手は体調不良となり、特にベッツは体重が10kg以上減ってしまったほどだった。
フリーマン一塁手も、わき腹の違和感から日本での開幕2戦を欠場。抑えの切り札としてライバルのパドレスから獲得したスコット投手も、本来の出来からはほど遠く、帰国後は毎試合のように失点を重ねた。
日本での開幕シリーズは大成功といったMLBの評価も、ド軍ナインにとってはそうは言いがたかったのだ。
ところが、最短で2年後の2027年、また日本での開幕シリーズが計画中と報じられている。しかもド軍が有力だというのだ。今回、ド軍は、ある意味 “痛い目” にあいながら、なぜまた日本なのか。
それはMLBにとって日本市場は、かつてないほどの魅力的に映るからだろう。
今年のド軍対カブスの開幕2連戦には、日本国内外の計22社がスポンサー契約を結んだ。これは、米国外開催で史上最高だった2024年の韓国・ソウルでの開幕シリーズの2.4倍にものぼるという。
「今回の日本での開幕シリーズでの大成功を受け、MLBは日本市場の大きさを再確認したといいます。ゆえに、『もう一度やろう』という流れに進んでいると聞いています。
2026年は東京ドームでWBC1次ラウンドがおこなわれ、2028年はロサンゼルス五輪があるため、2027年が有力視されているんです。
今回の大成功は大谷選手なしには語れませんので、MLBとしては大谷選手が活躍している間は、『できるだけ多くやりたい』というのが本音でしょう」(メジャーリーグ評論家・福島良一氏)
さらに開幕戦以外でも、「MLBは大谷人気にさらに乗っていきたい」と強く思っているという。
「近年、米4大スポーツで一番人気はNFL(アメフト)が断トツの1位で、続いてNBA(バスケ)。MLB(野球)とNHL(アイスホッケー)が、長らく最下位を争っていたんです。
野球が不人気の理由は、アメフトとバスケに比べてスピードがなく、バイオレンスにも乏しい点。ファン層はアメフトとバスケが若い人たちで、野球は年齢層の高い人たちでした。
それを何とか変えようとして、MLBはピッチクロックの導入など改革を進めてきました。その甲斐あって、昨年などはずいぶん若い人たちも球場に集まるようになりましたね。
さらにアメフトとの差を縮める意味でも、日本のファンを巻き込みたい。だから、何度でも日本開催をやりたいわけです。MLBにとって日本市場は、それだけ大切でもあるんです。その中心が大谷選手であることは間違いありません」(同)
遠く離れた日本での開催はリスクがともなうが、それでも開催したいほど日本市場、そして大谷の存在は巨大だということなのだろう。