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【独自】町田ゼルビア・黒田剛監督 選手&スタッフが告発する「激詰めパワハラ」疑惑をJリーグが調査中!

3月14日、入念にゲン担ぎをする黒田監督
J1第6節を翌日に控えた3月14日、J1・町田ゼルビア(以下、ゼルビア)の黒田剛監督は神社を2社参拝し、念入りに必勝祈願をおこなっていた。
関係者に聞けば「試合前日の彼のルーティンです」という。祈願の甲斐があってか、翌日のアルビレックス新潟戦で、ゼルビアは見事勝利を挙げている。
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昨年はチームをJリーグ3位に押し上げ、今季も優勝争いを繰り広げる“名将”として評価もうなぎ上りの黒田監督。だが躍進の陰で、Jリーグがパワハラ疑惑の調査に乗りだしていることが、本誌の取材で明らかになった。
日本サッカー協会(JFA)に対して今年1月、黒田監督の行為がパワーハラスメントに当たるのではと、「私がJFAに実名で告発しました」と語るのは、町田ゼルビアのチーム関係者A氏だ。告発を受けて、JFAから要請を受けたJリーグが、パワハラの有無について調査に動いているのだ。
A氏に対しては、告発から約3週間後、Jリーグの担当者から黒田監督の行為や発言の具体的な内容について、聞き取りがあった。Jリーグ側は、3月中旬までにA氏以外のチーム関係者にも水面下で接触し、事実関係の調査を続けている。すでに弁護士にも、今後の対応について意見を求めているという。Jリーグ側のこうした動きを、本誌は関係者から独自に確認した。
■医師から精神疾患と診断され2週間入院
町田ゼルビアは2022年、サイバーエージェント社の藤田晋社長が、運営会社の社長に就任して注目を集めた。そして、2023年に青森山田高校のサッカー部監督だった黒田氏が監督に就任。黒田監督が主導した改革で、就任1年めにJ2優勝とJ1昇格が決定。翌年には、J1でいきなり3位と快進撃を見せた。今季も連勝を重ね、激しい首位争いを繰り広げている。
一方、ロングスローを多用したり、黒田監督の「我々が正義」などという発言が批判を集めるなど、たびたび話題に上っている。A氏は、こう話す。
「黒田監督の口癖は『俺が藤田社長に直接報告したら、お前なんかただじゃすまないぞ』。確かに、黒田監督は藤田社長と仲がよく、頻繁に会食に出かけています。本来は、監督に進言するはずのチーム内のCOO(最高執行責任者)や、選手や監督の人事を担うフットボールダイレクターも、黒田監督の言いなりですよ」
かつてゼルビアに在籍していたスタッフのB氏は、チーム内での印象的なトラブルをこう振り返った。
「昨年6月、あるコーチが練習中に黒田監督と戦術について議論になりました。その際、監督はいきなり大声を張り上げ、『なんで俺の言うことが聞けないんだ』『お前なんてもういらない。うるさい、俺の前に来るな』と怒鳴り散らしたのです。選手やほかのスタッフ全員が見ていましたから、私も『いったい何が起こったのか』といった様子で聞いていましたよ。
練習後、強化部に言われてそのコーチのほうから謝りに行ったのですが、『お前の話などどうでもいい』と、監督の怒りは収まりませんでした。それでもそのコーチは謝り続け、なんとかその場は収まりました。私はこれまでさまざまなチームで働いてきましたが、練習中に選手やスタッフがいる前で監督が罵声を浴びせ、怒鳴るようなことは一度も見たことがありません」
さらに後日、同コーチに対して処遇に変更があったという。同年8月のことだった。
「Jリーグのある試合で、このコーチの指示ミスで失点したのです。すると、監督はそのコーチを呼び出して、『ああいう点の取られ方はダメだ。失点の責任はお前にある。今後はベンチから外れてもらう』と告げたというのです。
そのため、9月以降シーズンが終了する12月まで、彼は遠征でも前泊が許されず試合当日に会場に直行し、アップには参加するものの試合中はスタッフルームで観る、という参加しか許されませんでした」(B氏)
結局、そのコーチは契約満了を理由に退団を通告された。
「契約満了とはいえ、昨季はJリーグ3位という結果を残した。結果が出ているのに、なんでそのコーチを辞めさせるのか……。彼が退団理由をチームの強化部に聞いたところ、『次のフェーズに行きたいから』と言うだけだったといいます。『なんで辞めなければいけないのか。訴えるんだったら手伝います』と憤るスタッフはいましたよ」(B氏)
別のチーム関係者C氏は、黒田監督の言動で休職に追い込まれた人物がいると明かす。
「昨年12月、監督とスタッフとのミーティング中に、黒田監督があるスタッフを叱責することがありました。『どうしてこんなにできていないんだ』『これだとやばいぞ』と、高圧的に責任を追及し続けたのです。1時間ほどそのスタッフは、黒田監督に厳しく問い詰められていました。
ミーティング後、同席したスタッフが『あれは酷いな』『パワハラだよ』と声をかけていましたが、その後監督から、再度そのスタッフを追及するようなLINEが届いたといいます。結果、そのスタッフは体調を崩して休職してしまったのです。医師から精神疾患と診断され、約2週間入院していました」
パワハラ問題などに詳しい今井法律事務所の今井俊裕弁護士は、ゼルビアで起こった事例について、こう見解を述べる。
「戦術について衝突したコーチに対して『なんで俺の言うことが聞けないんだ』などと、選手らの前で叱責したというのは、パワハラ行為として問題だと思います。さらに、これを機にベンチから外すなどの措置を取ったとしたら、監督として行きすぎでしょう。
また、1時間にわたり詰問されたスタッフが体調を崩して休職してしまったことは、非常に問題だと考えます。パワハラに該当すると考えます」
■ゼルビアの選手限定でアンケートを実施
こうした黒田監督の言動については、国内外の日本人プロサッカー選手らの労働組合にあたる「日本プロサッカー選手会」(以下、選手会)が、毎年おこなっているアンケートでも申告があったという。当時のチームの内情を知る選手D氏が、本誌の取材に答えた。
「選手会は昨年9月に、Jリーグ選手全員を対象とした、パワーハラスメントに関するアンケートをおこないました。さらに同年11月に再度、今度はゼルビアの選手に対象を限定したアンケートフォームがLINEで送られてきたんです。そこには、9月のアンケートで『心配される回答が複数確認されました』との文言がありましたから、チーム内でのパワハラを訴える回答がいくつもあったのでしょう。
11月の2回めのアンケートには『現場指導者の方々から、節度を超えた指導や、選手同士での不適切な言動などはありませんか?』との質問がありました。これを見たとき、『ああ、黒田監督のことかな……』と思いました。以前から、メンバー以外の選手に非常に冷たかったり、『マイナス因子は排除する』などの発言が頻繁にありましたから」
本誌は選手会に、昨年ゼルビアの選手にアンケートをおこなったかなどを質問したが、「無回答でお願いします」とのみ担当者から返答があった。
別の選手E氏も、こう証言する。
「黒田監督は『怪我しても公式戦なら出られるだろう』などと無茶を言ったり、『こんなことは小学生でもできる』などと口にすることがよくありました。僕自身も昨年、選手会に相談したことがあります。黒田監督のそうした態度は、目に余るものがありましたから」
こうした状況を目の当たりにしたA氏が年明けにJFAにおこなった告発が、今回のJリーグによるゼルビアへの調査の端緒となっている。現在、A氏はJFAから依頼を受けたJリーグと詳細なやり取りを重ねている。
本誌は3月18日、告発の有無についてJリーグに事実を確認した。
Jリーグからは、《現在通報内容の一部詳細を確認しています》との回答があり、黒田監督のパワハラに関する告発があったことを認めたうえで、《今後クラブへ事実関係の調査とその結果に基づく適切な対応を依頼】するといい、【調査結果と対応を受けてリーグとしてのその後の対応を検討》するとした。
■黒田監督を直撃120分「チーム一丸」を熱弁
では、当のゼルビアは黒田監督の“パワハラ問題”についてどのように把握しているのか。
本誌は3月17日に、チームを運営する株式会社ゼルビアに質問状を送付。すると翌日、同社社長も務める、サイバーエージェント社の藤田晋氏の名前で、《事実を混ぜながら、大半が事実無根の嘘と憶測で構成された文面であり、とても看過できません》と、強く否定する回答が返ってきた。さらに、藤田氏は《監督の黒田剛が取材に応じます》という。
本誌は3月20日、チームの練習場に赴き、黒田監督本人を取材した。
現場で応対したゼルビアの出席者は5人。黒田監督のほかに広報担当者、フットボールダイレクター、そして顧問弁護士を含む2名の弁護士だ。
黒田監督は、自身にはパワハラ的な言動がいっさいないことを、およそ2時間にわたり丁寧な口調で訴えた。
「ベンチを外れたというコーチについて、彼に対して恫喝したとか、それがきっかけでベンチから外したということもありません。確かに意見がぶつかったことはありましたが、『お前はいらない』などの人格否定的な、サッカーとは関係のない発言はしませんよ。これはほかのスタッフにも聞いていただければ、私と同じように言うはずです。罵倒はありませんでした。
それに、私がまるで“独裁”しているかのようですが、みんなで協議のうえで、ベンチに入れるコーチの人選を変えました。しかしそれも、蚊帳の外にしたとかではない。彼は試合中、スタッフ席に入ってもらっていました。試合前には、ロッカールームにも入れていました。チーム一丸となっていますから」
医師から精神疾患とされて入院したスタッフについても、「現在、休職中のスタッフがいるのは事実です。昨年12月12日、翌年に向けてのコーチ全体の話し合いのなかで、翌年のキャンプの話になりました。そのスタッフはキャンプの取り仕切りを担っていますが、そこでトラブルが発覚したんです。当該スタッフには、『急いでやろうよ』と伝えました。けっして高圧的な態度などではなかったはずです。これも、多くのスタッフがいるなかでのことですから、ほかにも同様に証言してくれる人がいるはずです。しかしその日以来、彼は出社することはありませんでした。彼は責任感が強く、少し仕事を背負い込みすぎてしまったのか……非常に心配しています」と回答した。
Jリーグからゼルビアに対して事実関係を調査するよう依頼があったかを確認すると、この取材時点ではまだなんの連絡も来ていないと話し、黒田監督を含むゼルビア側の全員が「なんとも言えないです」と、困惑の表情を浮かべた。
「今回の(FLASHの)質問状に関しては、かなり推測に基づいていると感じます。悪意があるというか、チームを陥れようという(告発者の)意思が感じられる。とにかく事実と違うことばかりです」(黒田監督)
■Jリーグからゼルビアに聞き取り調査の依頼が
本誌が取材したパワハラ事例には「まったく身に覚えがない」と強く反論した黒田監督。パワハラを告発した関係者たちの認識とは真っ正面からぶつかる形だが、パワハラの被害を受けたとされる人たちはどう答えるのか――。
まず、練習中に強く叱責された後にベンチからも外されたというコーチに話を聞くと、事実関係については否定せず、「私からは何もお話しできることはありません」とだけ語った。
さらに、現在休職中だというスタッフにも事実を確認すると「ミーティングで詰問され、2週間の入院を余儀なくされた」という経緯については認めたうえで、「ほかは何も話せません」と語った。
一方、本誌の取材と並行して、Jリーグの動きが本格化。3月下旬に、ゼルビアにチーム内で聞き取り調査をおこなうように依頼があったという。
こうしたJリーグの動きを、元JFA規律委員のメンバーで、元衆議院議員の松平浩一弁護士はこうみる。
「Jリーグによる告発者への聞き取り調査で、『この告発は主観的なものだ』と結論づけるケースもあり得ます。しかし今回は、クラブに調査を依頼するにまで至った。告発者と入念なやり取りを2カ月間も重ね、ハラスメント当日の具体的な様子までJリーグが把握しているとすれば、ゼルビアでパワハラがあった可能性をJリーグが真剣に検討しているとみて間違いありません」
両者の主張がぶつかり合うなか本誌は3月26日、さらなる取材でも「被害当事者らが黒田監督のパワハラ行為について否定していないこと」を念押ししたうえで、あらためて「パワハラ的な言動はなかったか」と、ゼルビアに質問した。さらに、Jリーグからの調査依頼の有無についても質問すると翌日、再び藤田氏の名前での回答があった。
藤田氏は《匿名で、JFAが設置している「暴力等根絶等通報窓口」に通報があった》として、《通報があれば、リーグ側はクラブと対応を協議しなければなりません。それだけです》という。さらに、《匿名で、通報や告発というのは誰にでも出来ます》《それが個人的な恨みや復讐心のためだったとしたら、影響力のあるメディアが加担して良いのでしょうか?》とも主張した。そのうえで、ゼルビアでパワハラが常態化しているという疑惑について、《そんな状況ではないと断言できます》という。
だが、通報者はJFAには実名で告発をおこなっており、藤田氏が言う、匿名での告発という反論は正確ではない。
そこで、さらに「チーム内の調査のうえで、パワハラはないと断定しているか」、そして「JFAには告発が実名でおこなわれていること」を伝えたうえで、重ねて見解を尋ねた。本誌の3度めの質問に、やはり藤田氏から回答があった。
チーム内での調査について、藤田氏は《Jリーグに告発された内容については、すぐに私に共有されています》《内容について、黒田監督からも話を聞きました》という。また、本誌が練習場で黒田監督に取材した際の録音も《2時間近く、全て聞いてます》《監督は大半を否定していますし、事実があったにしても、私にはとてもメディアが記事にすべき内容には思えませんでした》とした。
ゼルビア側が「パワハラはなかった」と強く主張するなかで、A氏はこう語る。
「私自身サッカーに従事する身として、この業界、引いてはスポーツ界がクリーンで、これからプロを目指す子供たちに誇れる業界であることを真に望みます。そのためには、パワハラ的な言動はけっして許してはいけないと思うのです。私は、黒田監督に対しては退任だけでなく、コーチングライセンスの剥奪を望みます。そうすれば、もう彼が監督を務めることはなくなりますから。
しかしそのためには、チーム内の処罰等ではなく、Jリーグとしての処分が必要になります。だからこそ、私は実名で告発したんです。今の黒田監督のもとでは、チームの自浄作用がうまく働くはずがありません」
調査は現在も継続中だ。チーム、そしてJFAとJリーグは、どのような結論を出すのか――。