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【ドジャース番記者座談会】佐々木朗希の起用が慎重すぎる理由は? 山本由伸には「サイ・ヤング賞」の可能性も!

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記事投稿日:2025.05.03 06:00 最終更新日:2025.05.03 07:31
出典元: 週刊FLASH 2025年5月13日・20日合併号
著者: 『FLASH』編集部
【ドジャース番記者座談会】佐々木朗希の起用が慎重すぎる理由は? 山本由伸には「サイ・ヤング賞」の可能性も!

5試合に登板し、16四球と “荒れ球” が続く佐々木朗希。日本で1年間ローテを守ったことがないだけに、シーズンを乗り切れるか

 

 昨季、4年ぶり8度めのワールドシリーズ制覇を果たしたドジャース。今季もサイ・ヤング賞2度の左腕ブレイク・スネル(32)を加えるなど大型補強を敢行し、連覇への期待が高まっている。

 

 なかでも注目は大谷翔平(30)、山本由伸(26)、そして今季加入した “令和の怪物” 佐々木朗希(23)の日本人トリオである。

 

 今回は、2年めの飛躍を期す山本、そしてメジャー1年めの佐々木の評判、状態はどうなのか。ドジャースを知り尽くす2人の敏腕記者に語り合ってもらった。

 

 

―― 3月のMLB東京シリーズは盛り上がりましたね。

 

ビル・プランケット(以下、BP) ドジャースはまた、日本で開幕戦をやりたいと考えているよ。ビジネスとしても大成功で、オーナーグループも日本のスポンサーも、MLB機構も次を望んでいる。

 

ジャック・ハリス(以下、JH) 翔平、山本、佐々木がいるうちに、関係者は何度でも日本へ行きたいと考えているはず。

 

―― ローテーションに話ですが、佐々木についてはここまでとくに慎重に起用されている(5試合に登板。0勝1敗、防御率3.20)。

 

JH 今季3度めの登板となった4月6日のフィリーズ戦も68球だったのに、1点リードで迎えた5回に先頭から2人を出塁させると、すぐに代えた。5回まで投げたことがないからという理由だった。

 

BP ドジャースとしても、佐々木に6回、7回までコンスタントに投げてほしいとは思っていないだろう。じっくりと経験を積ませて、今季の終わりごろまでには自信を持って投げられるようになってほしいと思っているはずだ。

 

―― 登板2戦め、ドジャースタジアムで初登板した3月30日のタイガース戦も、ストライクが入らず制球に苦しんだ(1回3分の2で61球、3安打2失点4四球)。フィリーズ戦でも制球が定まらなかったら、マイナー落ちも考えられたはず。東京ドームでの初戦も3回を投げ切ったが、押し出しの四球を出すなど被安打1も5四球と、いつ代えられてもおかしくなかった。

 

JH 確かに、東京でもフラフラだった。押し出しで代えられてもおかしくなかったが、その場合、彼の自信が失われるとロバーツ監督は考えたのではないか。あの後に打たれれば、結局は代えなければいけなかった。リスクはあったが、三振でピンチを凌いだ。それだけに2度めの先発のときは、早く代えたようにも映ったが、あのときはあれ以上傷口を広げる前にと考えたのだろう。

 

BP いいときに比べて肘が下がっていたみたいだから、へんな癖がつく前にという配慮もあったと思う。フィリーズ戦も制球難で崩れていたら、マイナーに落としたかどうかだが、それこそ自信を傷つけることになるので、もう少しチャンスを与えたと思う。今後可能性があるとしたら、負傷者リストに入れてチームに帯同させ、メジャーの投手コーチの目が届くところで調整させるやり方が考えられる。

 

JH 私も、マイナーには落とさなかったと思う。ただ、フィリーズ戦でまた四球を連発していたら、なんらかの対応は必要だったと思う。だから、好投してくれていろんな人がホッとしたと思う。

 

BP 彼の球はストライクが入れば、まっすぐとフォークだけで十分だと思わせるものがある。確かに、東京ドームでは100マイル(約161km/h)を記録したけど、あの後は97マイル(約156km/h)前後にとどまっている。もちろん97マイルでも十分。制球さえよければ、フォークもあるから、まっすぐも簡単には打たれない。でも、あのフォークはやはりすごい。フィリーズの主軸ブライス・ハーパー(32)、カイル・シュワーバー(32)らのバットがかすりもしなかった。

 

JH キャンプのときに、ロブ・ヒル(マイナーリーグ投手ディレクター)が「佐々木のフォークはトップスピンをしている」と話していたけど、そのとおりですごい落差だった。通常、フォークやスプリットはバックスピンだけど、トップスピンなんて聞いたことがなかった。

 

■今季ドジャースは105勝〜110勝で優勝!?

 

―― 問題は1年間、投げ切れるかどうか。

 

JH それは誰にでも言えること。山本も昨年は途中で離脱した。とくに1年めなので、いろんなことがあると思う。疲労が見えたら、先発をためらうことなく飛ばすだろう。

 

BP それよりも今は、環境に慣れさせること。そこにチームは気を使っている。異なるマウンド、気候、移動。すべてが初めてだから、その点でも佐々木は神経を使っていると思う。慣れてきたときに彼本来の姿が見られると思うが、それまではチームも本人も我慢が必要だろう。

 

―― 一方で、山本は安定している(5試合に登板。3勝1敗、防御率0.93)。

 

BP 今年の山本は、ドジャースが彼を獲得したときにイメージした投手だと思う。昨年はメジャー1年めで、適応するべきところがたくさんあり、どこかで無理をして怪我をしてしまった。でも、今は精神的な余裕を感じる。それがピッチングにも表われている。相手の反応とかを冷静に見ているよね。

 

JH 去年は、まわりの意見を待っているようなところもあったけど、今年は自分のやるべきことをわかっている。ここまでの結果、投球内容を見ればサイ・ヤング賞に選ばれても驚かない。

 

―― とくに、スプリットがすごい。

JH 今年は比率が増えている印象だけど制球がいい。打者が振りそうなところから落としている。だから、打者はまっすぐにタイミングを合わせづらい。頭にスプリットがあるからね。あのスプリットは、まっすぐに見えるんだよ。

 

―― 最後に、今年ドジャースはシーズン何勝する?

 

BP 105勝と予想する。でも、だからといってワールドシリーズで勝てる保証はない。ドジャースは昨年9月、失速したように見えた。地区優勝はしたけど、プレーオフは勝ち抜けないと思った。ところが勝ってしまった。だから、10月に調子が上向くかどうかだけど、だとしたら昨年のような終盤から徐々に調子を上げていくパターンが理想。

 

JH 今のメンバーなら、もっと勝ってもおかしくない。110勝とか。地区優勝すればポストシーズンのホームアドバンテージを与えられるから、それはほしい。しかし、そうするとワイルドカードシリーズでプレーしないので試合間隔が空き、それがマイナスに働くこともある。選手は体を休めることができるが、失うものもある。

 

―― ワールドシリーズは?

 

BP 勝つ確率は50%。

 

JH う〜ん、確かに50%程度かな。はっきりいって、今の段階では予想が難しいけど(苦笑)。

 

※成績は4月24日時点(日本時間)

 

ビル・プランケット(63)
「オレンジ・カウンティ・レジスター」紙ドジャース番記者。1999年に「オレンジ・カウンティ・レジスター」紙の大リーグ担当となり、2006年から2012年までエンゼルス担当。2013年からドジャース担当。昨年『SHO-TIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』を上梓

 

ジャック・ハリス(27)
「ロサンゼルス・タイムズ」紙ドジャース番記者。2021年から「ロサンゼルス・タイムズ」紙でエンゼルスを担当し、大谷が初のMVPを獲ったシーズンを取材した。2022年からドジャースを担当

 

写真・桑原靖、田中昭男
取材協力&構成・EIS

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