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【ドジャース番記者座談会】大谷翔平が投手をあきらめる瞬間…監督が打順入れ替えに難色を示す理由は?

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記事投稿日:2025.05.03 06:00 最終更新日:2025.05.03 07:31
出典元: 週刊FLASH 2025年5月13日・20日合併号
著者: 『FLASH』編集部
【ドジャース番記者座談会】大谷翔平が投手をあきらめる瞬間…監督が打順入れ替えに難色を示す理由は?

2024年は打者に専念し、本塁打王と打点王の二冠に輝いた大谷翔平。4月24日のカブス戦で、 “パパ” として初ヒットを記録

 

 昨季、4年ぶり8度めのワールドシリーズ制覇を果たしたドジャース。今季もサイ・ヤング賞2度の左腕ブレイク・スネル(32)を加えるなど大型補強を敢行し、連覇への期待が高まっている。

 

 なかでも注目は大谷翔平(30)、山本由伸(26)、そして今季加入した “令和の怪物” 佐々木朗希(23)の日本人トリオである。

 

 今回は、2度めのトミー・ジョン手術から “二刀流復帰” を目指す大谷の評判、状態はどうなのか。ドジャースを知り尽くす2人の敏腕記者に語り合ってもらった。

 

 

―― 3月のMLB東京シリーズは盛り上がりましたね。

 

ビル・プランケット(以下、BP) ドジャースはまた、日本で開幕戦をやりたいと考えているよ。ビジネスとしても大成功で、オーナーグループも日本のスポンサーも、MLB機構も次を望んでいる。

 

ジャック・ハリス(以下、JH) 翔平、山本、佐々木がいるうちに、関係者は何度でも日本へ行きたいと考えているはず。

 

BP 選手からの評判もよかった。彼らは、2024年の韓国ではあまり外出しなかったが、今回はドジャースの選手もカブスの選手も、寸暇を惜しんでいろんなところへ出かけていた。想像より英語が通じたし、タクシーも安くてきれいだったからね。

 

―― 日本で開幕戦をやると、体力的な負担も大きいと思うが……。時差ボケの問題もある。

 

JH 去年の韓国シリーズよりマシだったと、選手たちは話していた。時差ボケ対策のため、どのタイミングで寝て、どの時間は起きていなければいけないのか、去年の反省が生きたようだ。

 

■今回ダメだったら投手をあきらめるかも

 

―― 話を本題に移すと、大谷は本来、開幕を二刀流で迎える予定だったはず。ただ、昨オフに亜脱臼した左肩の手術をしたので、投手としての復帰が遅れている。

 

BP 急がせる理由はない。今季のドジャースは、先発投手が余っているぐらいだからね。新加入のスネルの離脱でマイナーから投手を昇格させたりもしたけど、(2023年9月にトミー・ジョン手術を受けた)トニー・ゴンソリン(30)がもうすぐ帰ってくる。先発投手を中5〜6日で投げさせるだけの余裕がある。

 

JH 今年に関しては、プレーオフできっちり投げてくれればという感じだから、翔平の復帰は7月とかじゃないかな。もちろん6月の可能性もあるけど、デーブ・ロバーツ監督が1月に「5月中には復帰できるだろう」と話したことは、もはや現実味がない。

 

BP 翔平の契約はあと9年も残っている。急がせて再発してしまったら、さらに時間を無駄にしてしまう。1〜2カ月余分に待つことなど、長期的に考えればなんでもない。

 

JH 翔平が、2020年に最初のトミー・ジョン手術から復帰したとき、2試合に先発しただけで再び投げられなくなった。そのことが頭にあるのだろう。ましてや、今回は2度めの手術。できるだけ慎重にという考えは理解できる。

 

BP アメリカに戻ってからはブルペンに入っているし、まもなくライブBP(実戦形式の打撃練習。投手の最終調整でおこなわれることが多い)も始まる。しかし、打者として出場しながらになる。その点で、ほかの投手とのリハビリとは異なるから、すべての懸念が消えたときに復帰ということになるのだろう。

 

―― 2度めの手術という指摘があった。昨年、2度めのトミー・ジョン手術から復帰したウォーカー・ビューラー(30・レッドソックス)は、調子を取り戻すのにシーズン終盤までかかった。一方で今年、2度めのトミー・ジョン手術から復帰したダスティン・メイ(27)は、(4月15日のロッキーズ戦で709日ぶりに勝利)いい感じで投げている。

 

BP メイは、昨年9月に復帰できそうだったけど、食道の損傷による緊急手術を受けたことで復帰が遅れた。ビューラーは、一昨年9月に復帰を目指したが、リハビリ登板後のリカバリーが思わしくなかった。単純に翔平のケースと比較できないし、彼の場合は打者として出場しながらのリハビリという点で前例がない。マイナーでリハビリ登板を重ねることもできない。

 

JH しかも翔平は、移植した腱を人工靭帯で補強するハイブリッド手術を受けたとされている。ハイブリッド手術は、トミー・ジョン手術よりも “復帰が早くなる” というメリットがあるといわれているけれど、症例そのものが少ない。翔平も今回ダメだったら、投手をあきらめる必要があるかもしれないということを仄(ほの)めかしている。だから、チームがスローダウンを提案したときに受け入れたのだろう。

 

■大谷とベッツの打順の入れ替えに監督は難色

 

―― 投手に復帰した後、どう大谷を起用するつもり?

 

BP 「同じ試合に投打で出場させたい」と、フリードマン編成本部長は話していた。それは、翔平本人が望んでいるのだろう。ロバーツ監督は「以前よりは休みを増やしたい」と話している。となると、投手として投げた翌日に休ませることが想定できるけど、そこは試合日程との兼ね合いかな。次の日が休みの日に登板させるとか、そういう配慮をするのではないか。

 

JH その可能性は高い。打者としての翔平を休ませるのはもったいない。エンゼルスのときは、休日の前後に休ませて2連休を作る、ということもやっていた。翔平自身も、自分でブレーキをかけることが必要というニュアンスのことを言っている。投手として復帰すれば、定期的に休むことを受け入れるのではないか。

 

―― 大谷の登板日を休日の前日にするといった配慮をするとしたら、先発ローテーションが崩れて不規則な登板を強いられる投手も出てくる。

 

BP そもそも、ドジャースの先発陣はほとんどが故障明けだから、登板間隔を空けながら、というのがデフォルト。ほかのチームのように中4日で投げられる投手がいないから、不規則も受け入れているんじゃないかな。山本、佐々木についても、ここまで慎重に起用されている。

 

JH 過去、コンスタントに中4日で投げていたスネルが肩を痛めた。復帰しても、今シーズンは彼を中4日で投げさせることはないだろう。(4月1日のブレーブス戦で昨年8月以来の復帰登板をした)タイラー・グラスノー(31)も、レイズ時代から慎重に起用されてきた。もはやドジャースにおいて、中4日という登板間隔は過去の話。人によっては、中5〜6日で固定されているけど、中7日とか、その投手によって異なる登板間隔になるのではないか。大ベテランのクレイトン・カーショウ(37)も、かつては中4日で投げていたけど、復帰後はいちばん間隔が空くかもしれない。

 

―― 一番を打つ大谷は、打つほうでまずまずのスタートを切った(打率.261、本塁打6本、打点8)。

 

BP 極端に打点が少ないけどね。昨年もそうだけど、下位打線が(軒並み打率1割台と)出塁しないから、翔平が得点圏に走者を置いて打席に立つケースがほとんどない。

 

JH 二番のムーキー・ベッツ(32)と打順を入れ替えては? という意見もあるけど、そうすると二番翔平、三番フレディ・フリーマン(35)と左が続くから、ロバーツ監督が嫌がっている。試合終盤、相手は左投手を2人に対して注ぎ込んでくる。右打者のベッツが間にいれば、それをためらってくれる。

 

BP 翔平の打撃に関していえば、引っ張る打球が多いのが少し気になる。

 

JH エンゼルス時代から、中堅から左翼方向に打球が飛んでいるときのほうが調子がいいという印象で、実際にそうだった。相手バッテリーの攻め方もあると思うけど、捉えたいポイントでボールを捉えられていない、という感じじゃないかな。

 

※成績は4月24日時点(日本時間)

 

ビル・プランケット(63)
「オレンジ・カウンティ・レジスター」紙ドジャース番記者。1999年に「オレンジ・カウンティ・レジスター」紙の大リーグ担当となり、2006年から2012年までエンゼルス担当。2013年からドジャース担当。昨年『SHO-TIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』を上梓

 

ジャック・ハリス(27)
「ロサンゼルス・タイムズ」紙ドジャース番記者。2021年から「ロサンゼルス・タイムズ」紙でエンゼルスを担当し、大谷が初のMVPを獲ったシーズンを取材した。2022年からドジャースを担当

 

写真・桑原靖、田中昭男
取材協力&構成・EIS

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