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大の里 実況40年・藤井康生アナが明かす“新横綱”の素顔「入門当初から丁寧な対応」「負けても減らない口数」

2025年5月23日、大相撲夏場所13日目で優勝を決めた大関・大の里(写真・JMPA)
先の大相撲夏場所で大関として2場所連続優勝を果たした大の里。2025年5月26日に東京・両国国技館で開かれた横綱審議委員会(横審)は、日本相撲協会から諮問された東大関大の里の横綱昇進について、全会一致で「推薦」の答申を出した。75人目の横綱誕生が事実上、決まった瞬間だった。初土俵から所要13場所での横綱昇進は、史上最速の大偉業である。
24歳の若武者の魅力を、NHKで38年、その後はABEMAで大相撲の実況をしている藤井康生氏が語る。
「初の綱とり場所なので、当然プレッシャーがないはずはないんですが、『(プレッシャーは)あったの?』と聞きたくなるほど落ち着いていたし、中身の濃い相撲を取りました。得意の右を差してからの強引な相撲だけじゃない。はたき込みもあったし、相手によっては立ち合いを考えながら“受け”からの相撲もあります。研究のあとが見えました。
私は常々彼に対し、『30年に一人の素質を持った力士』と言い続けてきました。『50年に一人』では大袈裟すぎますし、『100年に一人』では双葉山クラスになってしまいますから『30年』だと。でも現役では、あるいは平成以降では、飛び抜けた資質の持ち主です。入幕からわずか1年ほどで今の地位ですからね。断然、モノが違います」
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師匠は、元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方。その師匠が元横綱の隆の里で“土俵の鬼”と呼ばれた鳴戸親方である。ならば、さぞかし大の里も猛稽古に明け暮れてると思いきや、そうでもないという。
「稽古量はそれほど多いわけでもないんです。入門してからも、特別何かが変わったわけでもない。これは二所ノ関親方の考えかもしれませんが、やるときはやる、休むときは休むということなのでしょう。
ただ、これを今後も続けていくべきかどうかはわかりません。大事なことは、頑丈な体を作ることと、現在の体重190kgをこれ以上増やさないことではないでしょうか。これ以上大きくなると、膝、腰に悪影響を及ぼす。ケガをしないためには、ぜひ大きくなりすぎないでほしいですね」
力士といえば、特に取組後に無口になるのがこれまでの流れ。その意味では、時代に逆行しているのが大の里だという。
「いろいろな現場の方々がよく言うのは、入門当初から彼の対応は丁寧だったということなんです。それはいまの地位になっても変わらない。力士の中には、負けると途端にしゃべらなくなる力士はいます。でも彼は負けても変わらない対応をする。
メディア受けもいいですよ。決して気の利いたコメントを発するわけではないですが、気負いがないコメントなんです。それは、自信がついているからこそだ、と言う人は多いです。横綱になっても、角界の頂点らしいお手本になるような振る舞いをしてほしいですね」
大の里は「歴史を感じさせるところが好き」と、時間さえあれば神社やパワースポットを巡ることを趣味としている。藤井アナは、そんな彼の姿を垣間見たことがあったというのだ。
「2024年12月に三重県・津市で行われた巡業のときのことでした。オフが一日あったので、私は伊勢神宮に行ったんです。そこで大の里関に偶然出くわし、あいさつを受けました。信心深いのかな、と驚いた記憶があります。
相撲は勝負事ですので、力士はゲン担ぎをすることが多いんです。場所中、勝っているときは道を変えないとか、雪駄は決まった足から履くとか、髭を剃らない、とかね。大の里関も伊勢神宮のご利益を受け、今の成績になっているのかもしれませんね(笑)」
大の里の今後の活躍に対し、藤井アナの期待は大きく膨らむ。
「このままなら、来年には優勝回数が二桁に届いているんじゃないかと思いますね。それほど実力は抜けています。優勝回数20回もあっという間に達成しそうな期待感があります。何度も言いますが、怖いのはケガだけです」
5月28日には伝達式が行われ、口上にも注目が集まっている。