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元小結・阿武咲 新横綱・大の里も駆けつけた大相撲断髪式の裏側に密着…「ご祝儀は3万円」420人が涙でハサミ入れ!

元小結・阿武咲の妻・央佳さん、子供たちを断髪式でお披露目(写真・高橋マナミ)
「寂しさはないですよ。やり切りましたから」
6月1日、両国国技館で元小結・阿武咲(おうのしょう・28)の断髪式がおこなわれた。阿武咲は16歳のとき、阿武松部屋に入門し、2013年一月場所で初土俵。2017年五月場所で新入幕を果たすと、3場所連続で二桁勝利を挙げ、小結に昇進した。速攻の突き押しを武器に、幕内を42場所務めたが怪我に泣かされ、最後は「阿武咲の相撲が取れなくなった」と2024年12月、潔く引退を決めた。
「あのときこうすればよかった、とかもないんです。やれることは全部やりましたから」
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この日は断髪式とともに、妻・央佳(まどか)さんを公に披露する日でもあった。
「幼馴染みというか、生まれたときからずっと一緒なんです。主人の親と私の母親が同級生で仲がよくって。今日は大勢の方が主人のために来てくださって、本当にすごいことをしていたんだとあらためて思います。ただ怪我が多くて、最後の場所はとても見ていられなかったですね。『もういい』って、泣いて言ったこともありました」(央佳さん)
夫妻にはすでに3人の子供がおり、阿武咲は長男の心舷(しんげん)くんを抱いて最後の土俵入りをおこなった。断髪式では、中学時代からライバルとして鎬を削った元貴景勝(たかけいしょう)の湊川親方もハサミを入れた。「俺らはいつまでもライバルだ」と声をかけられると、阿武咲の目からは大粒の涙がこぼれた。
阿武咲こと打越奎也(うてつふみや)氏は、この4月から馬油を使った石鹸などの美容商品を扱う会社に就職。すでに、新社会人としての道を歩んでいる。
ちなみに、この日の断髪式は【阿武咲引退 断髪披露記念】としておこなわれたが、力士の引退では「引退相撲」という興行が開催されることが多く、その場合「断髪式」は興行内の催しのひとつとしておこなわれる。
「引退相撲では、十両や幕内力士の取組、引退力士の最後の取組などもおこなわれます。ただ、引退相撲をおこなうと多くの費用がかかるため、それを省くこともあります」(相撲記者、以下同)
国技館で断髪式、引退相撲をおこなうには規定もある。
「十両を1場所以上務めれば、国技館の土俵で断髪式をおこなえます。引退相撲をおこなうには、関取で30場所以上という実績が必要です」
引退相撲興行は、親方となり独立するための資金集めという側面も持つ。
「横綱や大関の人気力士ともなれば、1万人以上を集めることもあります。この入場料や、断髪のハサミを入れる際のご祝儀などが収益となります。ご祝儀は10万円以上が相場といわれています」
元横綱・白鵬が2023年1月におこなった引退相撲では、ハサミを入れる際のご祝儀が100万円からで、億単位のカネが動いたとされる。
「今回のご祝儀は『3万円』からでした。引退相撲のない『断髪披露』という形でおこなわれたことと、本人がすでに相撲界から離れていることからこの金額になったのでは」
断髪式には地元の青森県中泊町からも多くの後援者たちが来場。420人がハサミを入れたほか、約400人の一般客もその様子を見守った。大銀杏に別れを告げた阿武咲。「これからは違う土俵でまっすぐに一生懸命生きていきます」と前を向いた。
写真・高橋マナミ、松下穂香
※コーディネート・金本光弘