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大谷翔平、ドジャース初登板で「フォーシーム平均球速」「回転数」が最高値を記録!…“SHOHEIニュースタイル” を徹底解析

2025年6月17日、663日ぶりに “二刀流” 出場した大谷翔平(写真・アフロ)
“ドジャーブルー” のユニホームに身を包み、6月16日(日本時間17日)、大谷翔平がついに663日ぶりにマウンドに上がった。1回限定での登板で投じた球数は28球。結果は2安打1失点と、本人曰く「結果はいまいちでしたけど」とのことだったが、「球質」の評価はどうだったのか。元MLB代理人の小島一貴氏が、公式記録をもとに解説する。
「フォーシームは右打者の外角に外れる、いわゆる『ひっかけ』てしまう球が目立ちましたが、久々の登板で制御しきれないボールがあったことはやむを得ないだろうし、首脳陣も想定していたと思います。
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28球中9球がフォーシームでしたが、平均球速は99.1マイル(159.5キロ)。わずか1イニングとはいえ、これまでの平均球速でいちばん速かったのが2022年の97.3マイルですからね。
また、99.1マイルは今季のMLBでのランキングに当てはめると9位に相当します(100球以上投げた投手が対象で507人中。以下、今年については同様)」
マーリンズのS・アルカンタラ、ブレーブスのS・ストライダーと、今季トミー・ジョン手術から復帰した剛腕2人は、フォーシームが走らずともに大きく負け越していることを考えれば、大谷の球速は特筆すべき点だろう。
では、最近よく耳にする「回転数」はどうなのか。
「この日のフォーシームの平均回転数は2271で、過去いちばん多かったのが2023年の2255ですから上回ったことになります。ただ、もともと大谷選手の回転数はMLBでも際立って高いわけではありません。この日の数値を今季のランキングに当てはめると、293位相当なんです」(同前)
回転数が多いとスピンが利き、空振りが取れるといわれる。大谷が160キロ超えのフォーシームでもファールされてしまう原因は、この回転数の少なさにある。一方で、カブスの今永昇太のフォーシームは150キロに満たないながら空振りが取れる。なぜなら、回転数が2500を超えるからだ。大谷にとって回転数は、今後の課題のひとつとなってくるだろう。
では、手術前に大いに頼っていた「スイーパー」はどうだったのか。
「この日の平均球速が86.6マイルで、平均回転数は2416。過去、平均でもっとも速かったのが2022年の85.3マイルですから、今回はそれよりも速い。一方で、回転数の平均値は2022年が2492、2023年が2249ですから、2022年と比べると若干少なかったようです。
これらの数値を全体として見てみると、この日は通常よりも出力が高かったようです。段階を踏んでこの状態であるとはいえ、久々の公式戦でこれだけ出力が上がると、翌日以降の状態も気になるところ。ただ、力みやアドレナリンのぶんを差し引けば、フォーシームもスイーパーもほぼ従来どおりの球質を再現できているといえますね。
2度めの手術による大きな違いは、今のところ見られない。状態に問題がなければ、徐々に球数とイニング数を増やしていくことになるでしょうが、投手としても打者と同じような活躍が期待できます」(同前)
また、球質とともに注目が集まったのが投球フォームの変化だった。エンゼルスでの最後の登板となった、2023年8月23日のレッズ戦とどのように変わったのか。NHK BSのメジャーリーグ中継の解説でもお馴染みの武田一浩氏がフォームの違いを語る。
「まず大きな違いとして挙げられるのが、今季からランナーなしでもセットポジションではなく、ノーワインドアップでいくようです。これは投げ始めから投げ終えるまでのリズムを大事にしていると同時に、反動を使うようになったということでしょう」
また、大きく変わったのが「テークバック時の肘の角度」と続ける。
「これまでの大谷は、テークバックで肘を曲げたまま、コンパクトにトップの位置を作るショートアームという形で投げていました。こうすることでコントロールがつきやすくなり、MLBでも多くの投手が取り入れています。ダルビッシュ有もそうですね。
でも、先日の大谷は、肘が曲がらずにまっすぐになっていました。コントロールに自信がついたのと同時に、故障しないフォームがこれだ、ということで取り入れているのではないでしょうか」
そして、いちばんの違いが「力みのないフォーム」だという。
「速い球を投げるときでも力感がないので、打者も戸惑うはず。投げに行くときに力が抜けて、左右の腕のバランスもいい。力を入れているようには見えないフォームで最速161キロを計測したわけですから、すごい! としか言いようがありません」(同前)
また、現地記者は「2つ大きく変わった」と指摘する。
「ステップして左足を上げたとき、エンゼルス時代より膝が鋭角的に高く上がり、グラブはより顔の近くに位置しています。また、投げ終わった後、グラブをつけた左腕の巻き込みが以前より大きくなっています」
初登板で投じた球は28球だったが、これまで頼りにしたスプリットはわずか1球。代わって7球と多投したのがツーシームだった。
「これこそが大谷の新しい投球術だと思います。ツーシームは、右打者なら多くが内角に鋭く食い込んでくる球ですので、当たっても内野ゴロになることが多い。この球をうまく操ればゴロが増え、球数を少なく抑えられますから長いイニングを投げることができる。大谷もそこを考えて多投しているのでしょう」(同前)
投手復帰した大谷だが、今期もMVP争いに食い込めるのか──。