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新横綱・大の里、初優勝報告はイタズラ電話で…恩人妻を号泣させた人情味あふれる “茶目っ気” とは

2025年5月23日、大相撲夏場所13日目で優勝を決め、横綱に昇進した大の里(写真・JMPA)
7月13日に初日を迎える大相撲七月場所(愛知・IGアリーナ)。大きな注目を集めているのが、新横綱・大の里だ。初土俵からわずか2年で頂点に立った “令和の怪物” の素顔とは――。
「最初に会ったのは、彼が高校2年のとき。非常に聡明な受け答えをするな、という印象を受けました」
そう語るのは、スポーツライターの小林信也氏だ。大の里(本名・中村泰輝)は石川県出身だが、中学から新潟県糸魚川市に相撲留学。当時、県立海洋高校相撲部に所属していた。
「そのころから体は大きかったんですが、ただそれだけではないものを強烈に感じました。このコなら横綱になれるというか、なってくれればいい。こんなコが相撲界を背負ってくれれば、ずいぶん変わるんじゃないかという期待を感じたのです。
相撲部の田海(とうみ)哲也総監督に『中村くんは聡明だし、楽しみですね』と話すと、『そんなことはないです』と笑うんです。大相撲で関取になれば月給は100万円以上になる、ならば年収でいくらになるかと田海さんが聞くと、中村くんはちょっと考えてから、真面目な顔で『300万円ですかね』と答えたんだそうです(笑)。それがジョークだったかどうかはわかりませんけど」(小林氏)
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大器と見込んだ中村を見続けてきた小林氏。その性格は「とにかく人を喜ばせるのが大好き」なのだと続ける。
「昨年の五月場所で初優勝した後、千秋楽の翌々日のことです。大の里が突然、糸魚川に帰ってきたというんです。母校の海洋高校の相撲部の後輩たちに、大会で上位に入ったら焼き肉をおごると約束をしていたそうです。海洋高はその直前の金沢大会で3位に入賞したので、その約束を守ったんですね。
一躍注目を集める存在になったのに、付け人もつけず一人で来たそうです。もちろん、糸魚川の駅は大騒ぎだったようですけどね。そういう天性の明るさ、大らかさ。横綱としてのあるべき資質を持っていると思います」
番付がすべてといわれる大相撲の世界。そのなかでスピード出世を遂げても、その人柄は変わっていないと、小林氏は語る。
「今年の三月場所の千秋楽。糸魚川の相撲部の宿舎である『かにや旅館』に電話がかかってきたそうです。優勝決定戦のすぐ後で、電話に出たのは田海総監督の奥さんの恵津子さん。旅館に泊まれますかとかいろいろ話をしたけど、大の里は声色を使っていて誰だかわからなかったそうです。
それで最後に『以上、大の里でした』って。恵津子さんは『人を担ぐもんじゃないよ!』って言って電話を切ったんですが、その後号泣していたそうです。
優勝した後の忙しいときに、わざわざ電話をかけてきたわけですから。そういう思いやりというか、人の恩を大事にする。そういうことができる人間なんです」
今年から舞台がIGアリーナに移った七月場所。いつか “令和の大横綱” と呼ばれるかもしれない大の里の “初陣” から目が離せない。