スポーツ
大の里「新横綱の優勝は難しい」ジンクス破れるか…大学時代から見届けてきた元 “大相撲アナ” が太鼓判を押す「三連覇」の可能性

横綱・大の里(写真・JMPA)
7月13日に初日を迎える大相撲七月場所(愛知・IGアリーナ)。大きな注目を集めているのが、新横綱・大の里だ。初土俵からわずか2年で頂点に立った “令和の怪物” の素顔とは――。
長年NHKの『大相撲中継』で実況を担当、今年5月末にNHKを退職したの吉田賢氏は、学生時代から大の里を見続けてきた。
「大の里が日本体育大学の相撲部にいたころから、よく一緒に食事に行ったりしていましたが、あのころから変わりませんよ。横綱昇進後にもインタビューに行きましたけど、逆にこっちが『横綱だから、変わらなくちゃいけないのかもしれないよ』って言ったぐらいですから。
とにかくポジティブで、気持ちの切り替えが非常に早いですよ。体が大きい、スピードがあるとかいろいろありますけど、彼の最大の強みはそういう精神的なところじゃないですかね」(以下「」内は吉田氏)
【関連記事:貴乃花と同期の元力士が語った「八百長相撲」の現場】
昨年の七月場所中、吉田氏は大の里にあるものをプレゼントした。
「まだ大関にも上がっていなかったし、そんな深い意味でもないんですけど、双葉山が書いた『横綱の品格』(ベースボール・マガジン社)という本を、誕生日プレゼントとして渡しました。
それを8月の巡業中に読んでいたと、知人から聞きました。嬉しいじゃないですか。一介のアナウンサーからのプレゼントを、ちゃんと読んでくれるって。そういうところも、学生のときから変わらないなって思うんですよ」
吉田氏は、日体大相撲部の齋藤一雄監督からこんな話を聞いたという。
「齋藤監督は指導者としても一流ですが、自身もアマチュア横綱で、ものすごく強いんですよ。そんな齋藤監督が実際に相撲を取って、この人には勝てないと思ったのが2人だけいると。その一人が貴乃花。当時まだ中学生だったけれど、将来は絶対勝てないだろうと確信したそうです。そしてもう一人が、大の里だと言うんですよ」
久しぶりに2横綱が土俵を沸かせる七月場所。吉田氏に展望を聞いた。
「優勝争いの中心はやはり大の里。先場所は綱取りでしたがあっさりでしたから、新横綱のプレッシャーもほとんどないように思います。
とはいえ、新横綱の優勝は難しいんです。過去に5人しかいない(1場所15日制定着以降)のですが、そのうちの2人が、稀勢の里と隆の里。つまり、大の里の師匠とその師匠です。3代続けての優勝は十分にあると思います。
ただ “荒れる名古屋場所” ですから何が起こるかわからない。まずは暑さ。コンディション維持が難しいという力士が多いんです。
また、五月場所の後は巡業がないぶん、さまざまな行事や用事に忙殺されてしまう。特に大の里は、横綱昇進で行事が多かったはずです。それでも序盤の5日間をすんなりいければ、三連覇の可能性は高いと思いますね」
吉田氏から太鼓判を押される大の里だが、優勝するためには “強敵” が立ちふさがる。
「ライバルは当然、横綱・豊昇龍。序盤の取りこぼしが多いですが、後半戦で上位との対戦になれば燃えるタイプ。対戦成績では6勝1敗(不戦を除く)と、豊昇龍が大の里に大きく勝ち越していますから、優勝争いが最後までもつれるとおもしろい。
そして大関・琴櫻も、力的には横綱2人と変わらないと私はみています。古傷があるのが不安ですが、状態さえ万全なら、横綱2人と大関の3人で優勝争いでしょう」
最後に名古屋場所での注目必須の “若手” をあげてもらった。
「今場所、個人的に楽しみなのが、新入幕の草野(東前頭十四枚目)。5歳から相撲を始め、中学、大学(日本大学)でも横綱で、とにかくすごい。
今年一月場所に4勝3敗で、ぎりぎり十両に昇進しましたが、怪我の影響があったそうです。しかし、十両に上がってからは連続優勝。体もどんどん大きくなって、まだまだ進化中です。この番付だと、かなりの成績をあげると、私はみています。
そしてもう一人注目が、こちらも新入幕の藤ノ川(西前頭十四枚目)。176cm、117キロと小柄ですが、出足は鋭いし、豪快な投げを打ったりと、とにかく気持ちが強い。ものすごく魅力ある力士ですよ」
今年から舞台がIGアリーナに移った七月場所。横綱・大関が貫禄を見せつけるか、はたまた “下剋上” があるのか──。