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セ・リーグに「3割打者ゼロ」の大異変…日米の野球界で続く“投高打低” の深刻化

打率トップの中日・岡林勇希でも3割を超えない異常事態
プロ野球の2024年シーズンが終了した際、セ・リーグの3割打者は、打率.316で首位打者を獲得した横浜DeNAのオースティンを含め、2人しかいなかった。
一方で投手陣はというと、1.38で最優秀防御率のタイトルを獲得した中日の髙橋宏斗を含め、防御率1点台の投手が5人も誕生した。相手チームの貧打が続けば投手の成績が上がるのは言うまでもないが、それにしても異常事態に変わりはなかった。
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かつて「投手にとって防御率1点台は夢の数字」と言われた時代があったが、もはや遠い昔の話になったようだ。
そうした現象から、「セ・リーグは “投高打低” の時代が続く」と噂されたが、2025年シーズンの前半戦を終えてみると、噂どころか、さらなる異常事態が訪れている。
前半戦を終えた7月21日現在、セ・リーグで打率が3割を超えた打者は0人なのである。トップの中日・岡林勇希が.294であるが、1試合で3割に復帰できる数字でないことからも “打低” は深刻だ。
NPB(日本野球機構)にデータが残る1959年以降で、球宴前に3割打者が1人もいないのは、セ・パ両リーグを通じて初めてのことだという。また、1950年に2リーグ制になってから、打率2割台の首位打者は1人もいない。
昨季中盤、同様に3割打者が皆無のとき、あるプロ野球OBに原因を聞いたことがあった。
「じつはソフトバンクの王貞治会長と打撃についてお話しさせていただけることがありまして、王会長は『最近は、力まかせにバットを振ろうとしている選手が多いね』と言われたんですね。私もそのとおりだと思っていました。
これは、高校時代からウエイトなどパワーアップのトレーニングを多くやっているからではないでしょうか。パワー自慢というか、そこが尊重されるような時代になっているように思うんですね。
投手の力量、特に球速が上がっているのに、打者は力まかせに打とうとするので、なかなか接点が合わない。そういうところから高アベレージをあげる打者が少なくなっているんじゃないかな、と思います」
また、選球眼にも問題があると指摘していた。
「テレビを見ていても、たしかに投手が速くていい球を投げていることはわかります。でも、けっこう打つべき球を見逃していることが多い。そこで追い込まれて投手有利となって、いい結果が出ない。打者たちがパワーをつけようとすることが多くて、技術を磨くということが少しおろそかになってしまっているのかもしれませんね」
選球眼が悪ければ、凡打だけでなく「四球の少なさにつながる」とあるスポーツライターは語る。
「これはセ・リーグのある打者から聞いた話ですが、主力打者であればあるほど『四球でもよし』とはならないというんです。四球でもヒットでも塁に出ることに変わりはないのですが、イメージ的にもヒットで塁に出たいと。
そうすると、3-0や3-1のカウントでボール気味のボールに手を出して凡打になってしまう。これも打率を下げる大きな要因だと言っていました。主力打者の心理として、四球よりも打ちたいが先にきてしまうということでした」
ちなみに海の向こうのMLBでも同じような現象が出始めている。日本時間7月24日現在、ア・リーグで3割打者は6人いるが、ナ・リーグでは大谷翔平の同僚であるウィル・スミスただ1人なのだ。
NPBはオールスター2試合をはさんで7月26日から再開されるが、残り50試合あまりの展開によっては、打率2割台でも首位打者という史上初の “珍事” が見られるかもしれない。