
三軒茶屋にある馴染みのカフェで取材に応じる三木つばき(写真・福田ヨシツグ)
取材場所は、東急線の三軒茶屋駅にほど近い、ビルの屋上にあるカフェだった。
「初めてだと、こんなところにカフェがあるのかなって感じですよね。でも、私は逆にそこが穴場っぽくて好きなんです」
そう話すのは2024ー2025シーズン、スノーボード・アルペンW杯でパラレル回転と大回転の種目別2冠で総合優勝した三木つばき。来年2月開幕のミラノ・コルティナ五輪(以下、ミラノ五輪)でメダルを期待される一人だ。昨季はW杯17戦のうち13戦で表彰台。4勝を挙げて日本勢初の総合優勝を果たすなど飛躍した。
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初めての五輪だった3年前の北京大会は、予選を全体3位で通過しながら、決勝トーナメント1回戦で予選14位の選手に敗れ9位に終わった。予選上位者に選択権のある(赤か青の)コース選びで、ミスを犯してしまった悔しさは忘れていない。
「最初は赤と決めていたのに、なぜか青を選んでしまい……。私自身、経験が足りていなかったんです。あのあとは、どっちのコースを選ぶか、すごくナーバスになっていた時期もありましたが、今はどっちのコースを滑ろうが、それを上回る技術があればいいんだと思えるようにマインドを変えました」
4歳でスノーボードを始め、中学1年から海外のレースに参加、毎年9月から翌年3月のシーズン中はヨーロッパの山に籠る日々を過ごしてきた。海外にいるシーズン中は日本食を食べられないので、オフのいちばんの楽しみは日本食だという。ただ、好物のスイーツは月1回の楽しみと、オフでも自らを厳しく律するのが三木流だ。
「スノーボードは冬に外でやるので、脂肪はある程度あったほうがいいんですけどね。ただ、糖質はきちんと食事で摂ればいい。プリンが好きなので、コンビニで月に一度、プッチンプリンを買うのが楽しみです。生きていれば誰でも自分の思いどおりにならないことはあるだろうし、欲に流されないって大事じゃないですか。意志が強い? いや、弱いから日ごろから欲を抑える訓練をしているんです(笑)」
2度めの五輪で、北京の雪辱を果たすメダル奪取に期待だ。
みきつばき
2003年6月1日生まれ 長野県出身 2024ー2025シーズン、スノーボード・アルペンW杯で日本勢初の総合優勝。全日本スキー連盟「SNOWAWARD 2025」MVP。日体大4年。浜松いわた信用金庫所属
写真・福田ヨシツグ
取材&文・栗原正夫